[PF21] 「カットイメージ読解法」の研究(8)
都民向け公開講座受講者による体験報告のKJ法整理
Keywords:イメージ, 読解, KJ法
研究の背景
「カットイメージ読解法」は,小説の内容を順に画(視覚イメージ)として思い浮かべて本文を区切り,それを理解単位として読解を進めていく,筆者が創案した学習・教授法である。山﨑(2015『読書科学』)では,その効果として詳細なイメージ化が人物への感情移入を強め,プロット理解を促進するというメカニズムが示唆された。
方 法
筆者は,この方法を広く伝えるため,数年前から一般都民を対象に,都立学校公開講座(東京都教育委員会主催)として,「カットイメージ読解法入門」を開催している。毎週土曜2時間半の4回講座を,年1~2度開講する。
初回でカットイメージ読解法の基本的やり方を練習したのち,第2,3回はその場で読み切れる短編小説についてカットイメージ作業をしてカット分けの異同や内容についての意見を交流する。第4回は短編小説を事前に配布してカットイメージ作業を自宅課題とし,話し合いに時間を割く。
受講定員は15名だが,実際に受講し,修了まで継続するのは4~9名である。毎回,講座のふり返りを自宅で書き,次回提出する。第4回では,最終アンケートに回答する。これらの自由記述を研究対象とした。
2016~18年に開講した5講座の受講生延べ30人から有効回答が得られた。男女比はほぼ同率,年齢は20代~70代だが,27人は50代以上である。回答の中から,カットイメージ読解法に関する体験・実感などの記述を抽出した。一文に複数の内容を含む場合はセンテンスを分けた。その結果,80個の報告が得られた。
これらを元データとし,KJ法によるまとめを行った。作業にはPCソフト「ウルトラプレゼン」(ITEC社)を用いた。川喜田二郎『KJ法~混沌をして語らしめる』の手順に従い,個々のデータの“志”(示唆する意味)を意識して,データを少しずつグルーピングし見出しをつける作業をボトムアップで丁寧に積み重ねた。4段階目で6つの島にまとまったので,図解配置した。上位2段目までの見出しでまとめた図解をFigure 1に示す。
結果と考察
Figure 1によれば「気づきを通してイメージが鮮明になり,楽しく,深く読める」のが,①カットイメージの体験である。それを前提にした②話し合いは,「読みが深まり,視野が広がり,交流自体が楽しい」ので,「時間があっという間に過ぎる」。その結果,「読むプロセス自体が楽しく,理解・味わいが深まり,もっと広く,深く読みたくなる」という③読書の質的な変化や,「脳が目覚め,心が豊かになり,ものの見方が変わり,能力の発揮にもつながる」という④さまざまな実感・波及効果が報告されている。また,くり返し受講すれば,「コツがつかめた」と「習熟する実感」がある。
この分析により,講座の中での受講者たちの体験の様相が明らかになり,カットイメージ読解法がもたらす可能性のある効果が鳥瞰できた。これらは開発のねらいや山﨑(2015)の結果とも合致している。これらの効果をより確かなものにするために,さらなる開発・実践を続けたい。
「カットイメージ読解法」は,小説の内容を順に画(視覚イメージ)として思い浮かべて本文を区切り,それを理解単位として読解を進めていく,筆者が創案した学習・教授法である。山﨑(2015『読書科学』)では,その効果として詳細なイメージ化が人物への感情移入を強め,プロット理解を促進するというメカニズムが示唆された。
方 法
筆者は,この方法を広く伝えるため,数年前から一般都民を対象に,都立学校公開講座(東京都教育委員会主催)として,「カットイメージ読解法入門」を開催している。毎週土曜2時間半の4回講座を,年1~2度開講する。
初回でカットイメージ読解法の基本的やり方を練習したのち,第2,3回はその場で読み切れる短編小説についてカットイメージ作業をしてカット分けの異同や内容についての意見を交流する。第4回は短編小説を事前に配布してカットイメージ作業を自宅課題とし,話し合いに時間を割く。
受講定員は15名だが,実際に受講し,修了まで継続するのは4~9名である。毎回,講座のふり返りを自宅で書き,次回提出する。第4回では,最終アンケートに回答する。これらの自由記述を研究対象とした。
2016~18年に開講した5講座の受講生延べ30人から有効回答が得られた。男女比はほぼ同率,年齢は20代~70代だが,27人は50代以上である。回答の中から,カットイメージ読解法に関する体験・実感などの記述を抽出した。一文に複数の内容を含む場合はセンテンスを分けた。その結果,80個の報告が得られた。
これらを元データとし,KJ法によるまとめを行った。作業にはPCソフト「ウルトラプレゼン」(ITEC社)を用いた。川喜田二郎『KJ法~混沌をして語らしめる』の手順に従い,個々のデータの“志”(示唆する意味)を意識して,データを少しずつグルーピングし見出しをつける作業をボトムアップで丁寧に積み重ねた。4段階目で6つの島にまとまったので,図解配置した。上位2段目までの見出しでまとめた図解をFigure 1に示す。
結果と考察
Figure 1によれば「気づきを通してイメージが鮮明になり,楽しく,深く読める」のが,①カットイメージの体験である。それを前提にした②話し合いは,「読みが深まり,視野が広がり,交流自体が楽しい」ので,「時間があっという間に過ぎる」。その結果,「読むプロセス自体が楽しく,理解・味わいが深まり,もっと広く,深く読みたくなる」という③読書の質的な変化や,「脳が目覚め,心が豊かになり,ものの見方が変わり,能力の発揮にもつながる」という④さまざまな実感・波及効果が報告されている。また,くり返し受講すれば,「コツがつかめた」と「習熟する実感」がある。
この分析により,講座の中での受講者たちの体験の様相が明らかになり,カットイメージ読解法がもたらす可能性のある効果が鳥瞰できた。これらは開発のねらいや山﨑(2015)の結果とも合致している。これらの効果をより確かなものにするために,さらなる開発・実践を続けたい。