日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

2018年9月16日(日) 16:00 〜 18:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF32] 小学生における算数文章題解決時の方略の検討

小澤郁美1, 川口拓人#2, 岡直樹3 (1.広島大学大学院・日本学術振興会特別研究員DC, 2.福山市立神辺小学校, 3.徳島文理大学)

キーワード:算数文章題, 方略, メタ認知

 算数科では,算数文章題に苦手を抱える小学生が多いことが課題とされている。岡本(1992)は,算数文章題を解くには,メタ認知方略の使用が重要であると指摘している。他方,学習方略研究では,体制化・精緻化といった認知方略や,リソース管理方略もあることが指摘されている(Pintrich & De Groot, 1990)。そこで,本研究では小学生を対象に算数文章題解決時に用いる方略を包括的に検討することを目指す。

方  法
参加者 A市の公立小学校に通う小学4―6年生計278名。平均年齢は10.6歳(SD=0.9)であった。
調査時期 20XX年12月中旬に実施した。 
算数文章題 キーワードをもとに解ける問題,逆志向和差算の問題であった。
算数文章題解決方略尺度 3問の算数文章題を解くときに,実際にどのような学習方略を用いたかについて,27項目の学習方略から成る尺度を作成した。尺度作成に当たっては,犬塚(2002),押尾(2017),佐藤・新井(1998),清水(1996),多鹿他(2004),山口(2012)などを参考に項目を収集した。評定は4件法(1:全く使わなかった,2:あまり使わなかった,3:少し使った,4:よく使った)であった。
手続き 初めに算数文章題3問へ解答させ,次に算数文章題解決方略尺度とフェイス項目(算数の得意度や学年,年齢,性別)へ回答させた。

結果と考察
 算数文章題解決方略尺度の各項目について,平行分析の結果から,5因子構造を仮定した最尤法・プロマックス回転による因子分析を行った。各因子に対する負荷量が.40以下の項目および複数の因子に高い因子負荷量を持つ項目を除外したものを最終的な因子パターンとした。各因子に含まれる項目および信頼性係数,因子間相関をTable 1に示した。Table 1より,第1因子をモニタリング・プランニング,第2因子を体制化・精緻化方略,第3因子を自己質問,第4因子を外的リソース方略,第5因子をコントロールと命名した。
 下位尺度ごとの平均評定値を従属変数,学年と算数文章題の得点の高低を独立変数とした2要因分散分析の結果,モニタリング・プランニングにおいては学年の主効果(4年生・6年生<5年生)と,交互作用(4年生の文章題得点高群<5年生の文章題得点高群)が有意であった。小学校4年生は媒介欠如(三宮,2016)の状態である一方,6年生については,算数文章題の平均合計得点が6点満点中5.5点だったことから方略を使用しなくても算数文章題を解決できたと考えられる。
 しかしながら,算数文章題の種類によって使用する方略が異なる可能性があるため,今後はこの点についてより詳細に検討する必要があるだろう。