日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

2018年9月16日(日) 16:00 〜 18:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF34] 小学校高学年を対象とした意見文産出方略の使用尺度の作成

田中光1, 上山瑠津子2, 山根嵩史3, 中條和光4 (1.広島大学大学院, 2.福山市立大学, 3.川崎医療福祉大学, 4.広島大学大学院)

キーワード:意見文, 文章産出, アクティブラーニング

 小学校学習指導要領(2017年3月公示)では表現力の育成が掲げられ,高学年の学習内容として意見文が扱われている。そこで,指導法開発の準備として作成した高学年対象の意見文産出方略使用尺度と同尺度の妥当性検証を兼ねて行った意見文産出の自己効力感と方略使用の関連を報告する。

方  法
 調査参加者 公立小学校高学年535名(5年280名,6年255名)を対象とした。
 材料 質問紙を用いて調査を行った。予備調査を基に項目を選定した。予備調査では大学生19名を対象に,意見文を書く際の工夫や配慮を自由記述させ,収集された方略から項目を作成した。項目の表現は高学年児童に分かるように修正した。
 手続き 調査では,「教室でのウサギの飼育」の是非についての議論の背景と,その賛成意見・反対意見を各2つ箇条書きで記載した資料を配布し,意見文を作成させた。その後,意見文を書く際にどのような点に注意したかを質問紙の各項目について「1:まったく当てはまらない」―「3:どちらでもない」―「5:かなり当てはまる」の5件法で回答させた。また,意見文作成への自己効力感についても5件法で回答させた。

結果と考察
 回答に不備のない426名(5年228名,6年198名)を対象に,質問項目の回答に対し最尤法,プロマックス回転の探索的因子分析を行った(Table 1,因子負荷量 .30以上)。因子数は平行分析で見出された5因子を採用した(RMSEA = .07,CFI = .91,TLI = .89,SRMR = .09)。自己効力感について参加者から,高群(64名:平均+1SD),低群(57名:平均-1SD)を抽出し,各因子の平均評定値を比較した(Figure 1)。その結果,全因子で高群と低群に有意差が見られた(p < .01)。低群の評定値が3以上となったのは,「自分の意見の表明」と「校正・校閲」のみであった。このことから,低群は意見を書くことに集中し,文章の読み易さや説得性を確認するまでに至らないことが示唆される。

付  記
本研究は公益財団法人 博報児童教育振興会による第13回児童教育実践についての研究助成を受けたものである。