[PF36] 音韻的作業記憶量の違いは読解訓練後の聴解成績に影響を与えるか
キーワード:音韻的作業記憶量, 聴解成績, 読解訓練
音読や黙読といった読解活動と読解成績(逐語記憶や内容理解)との関係を考察した比較研究はすでに多く存在する。一方,読解活動と聴解成績との関連を調査した研究は極めて少数ながら,聴解成績が向上するとの知見もある(安山, 2016)。読解活動が聴解成績を向上させるとするならば,文章理解のどの過程がより関連しているのであろうか。
本研究では,大学生を対象に,読み方(音読・黙読)と音韻的作業記憶量(以下, 音韻的WM量)の二つの要因について, 読解訓練後の聴解成績の結果に違いが見られるかを検討した。
実 験
方 法
参加者 大学生76名(男性 55名,女性21名)
実験計画 参加者間要因(読み方,作業記憶量)と参加者内要因(事前・事後テスト)を合わせて3要因混合計画であった。読み方要因は音読と黙読の2水準であり,音韻的WM量要因は音韻的WM量高群と低群の2水準であった。
調査材料
材料A総合的な聴解力測定テスト:TOEIC公式問題集Vol.3 のPart1からPart4の合計50問を,オリジナルの問題構成の割合を維持するように配慮しつつ,ランダムに選んで使用した。
材料B音読及び黙読訓練材料:TOEIC公式問題集Vol.3及びVol.4のPart4の放送問題スクリプトを使用した。なお,材料A:聴解力測定テストの一部として利用した箇所のPart4のスクリプトは,默読あるいは音読トレーニングの課題として重複使用しないように除いた。
材料C 音韻的WM量調査:柴崎ら(2015)により開発された英語リーディングスパンテストを用いて,総正答セット再生数により合計70点満点で採点調査した。音韻的WM量高群の平均得点は23.9点,低群の平均得点は10.5点であった。
手続き 事前の聴解力測定テストにより,参加者を聴解力に差が生じないように音読条件と黙読条件に分けた。さらに,英語リーディングスパンテストにより,それぞれの条件を音韻的WM量で高群と低群に分けた。参加者は, 複数用意されたスクリプトを10分間の時間内で繰り返し音読もしくは黙読するトレーニングを計10週間継続した。トレーニング終了後,事後テストとして聴解力測定テストを再度実施した。
結 果
3要因の分散分析を行ったところ,音読条件(F (1,72)=9.71, p.<.01),黙読条件(F (1,72)=5.43, p.<.01)ともに聴解力テストの成績が向上したが,読み方(音読・黙読)の条件による差は見られなかった。一方で,音韻的WM量の主効果が有意であり,高群のみの得点が向上した(F (1,72 )=17.89, p.<.01)。音韻的WM量群別の聴解力テストの平均得点をTable1に示す。
考 察
本研究では,まず一定期間読解訓練(音読と黙毒を含む)を行うことで聴解力テストの得点が向上することが示された。音読条件と黙読条件での違いは示されなかった一方で,音韻的WM量高群のみの成績が向上した。読解訓練により聴解力テストが向上したことは,訓練により文章理解力が促進されたこと可能性を示唆している。
さらに,一定期間の読解訓練が聴解力テストの成績を向上させる要因として,音韻的WM量の大小が,読解訓練時の文章理解の促進度に関わっていることの可能性も示唆された。
引用文献
安山秀盛 (2016). 黙読の効果の再検討: 聴解成績における黙読と音読の比較研究. 英米文化, 46, 77-94.
柴崎秀子・時本真吾・小野雄一・井上次夫 (2015). 高校生用集団式日英語リーディングスパンテストの開発および英語における習熟度と作動記憶の関係の検討 認知心理学研究, 12(2), 101-120.
本研究では,大学生を対象に,読み方(音読・黙読)と音韻的作業記憶量(以下, 音韻的WM量)の二つの要因について, 読解訓練後の聴解成績の結果に違いが見られるかを検討した。
実 験
方 法
参加者 大学生76名(男性 55名,女性21名)
実験計画 参加者間要因(読み方,作業記憶量)と参加者内要因(事前・事後テスト)を合わせて3要因混合計画であった。読み方要因は音読と黙読の2水準であり,音韻的WM量要因は音韻的WM量高群と低群の2水準であった。
調査材料
材料A総合的な聴解力測定テスト:TOEIC公式問題集Vol.3 のPart1からPart4の合計50問を,オリジナルの問題構成の割合を維持するように配慮しつつ,ランダムに選んで使用した。
材料B音読及び黙読訓練材料:TOEIC公式問題集Vol.3及びVol.4のPart4の放送問題スクリプトを使用した。なお,材料A:聴解力測定テストの一部として利用した箇所のPart4のスクリプトは,默読あるいは音読トレーニングの課題として重複使用しないように除いた。
材料C 音韻的WM量調査:柴崎ら(2015)により開発された英語リーディングスパンテストを用いて,総正答セット再生数により合計70点満点で採点調査した。音韻的WM量高群の平均得点は23.9点,低群の平均得点は10.5点であった。
手続き 事前の聴解力測定テストにより,参加者を聴解力に差が生じないように音読条件と黙読条件に分けた。さらに,英語リーディングスパンテストにより,それぞれの条件を音韻的WM量で高群と低群に分けた。参加者は, 複数用意されたスクリプトを10分間の時間内で繰り返し音読もしくは黙読するトレーニングを計10週間継続した。トレーニング終了後,事後テストとして聴解力測定テストを再度実施した。
結 果
3要因の分散分析を行ったところ,音読条件(F (1,72)=9.71, p.<.01),黙読条件(F (1,72)=5.43, p.<.01)ともに聴解力テストの成績が向上したが,読み方(音読・黙読)の条件による差は見られなかった。一方で,音韻的WM量の主効果が有意であり,高群のみの得点が向上した(F (1,72 )=17.89, p.<.01)。音韻的WM量群別の聴解力テストの平均得点をTable1に示す。
考 察
本研究では,まず一定期間読解訓練(音読と黙毒を含む)を行うことで聴解力テストの得点が向上することが示された。音読条件と黙読条件での違いは示されなかった一方で,音韻的WM量高群のみの成績が向上した。読解訓練により聴解力テストが向上したことは,訓練により文章理解力が促進されたこと可能性を示唆している。
さらに,一定期間の読解訓練が聴解力テストの成績を向上させる要因として,音韻的WM量の大小が,読解訓練時の文章理解の促進度に関わっていることの可能性も示唆された。
引用文献
安山秀盛 (2016). 黙読の効果の再検討: 聴解成績における黙読と音読の比較研究. 英米文化, 46, 77-94.
柴崎秀子・時本真吾・小野雄一・井上次夫 (2015). 高校生用集団式日英語リーディングスパンテストの開発および英語における習熟度と作動記憶の関係の検討 認知心理学研究, 12(2), 101-120.