[PF44] 集団における葛藤と共感経験との関連
キーワード:社会的葛藤, 共感経験, 大学生
問題と目的
共感性を高く有する者の中には,自己中心的な観点からその体験を捉えている者がおり,共感と同情が混在しているという指摘があった(角田,1992)。その後,共感経験尺度改定版(角田,1994)が作成され,自己の感情体験を内省する力をもつ「両向型」と,自他を独立した存在とは見ることができない未分化な状態の「共有型」に類型化することが可能となり,共感と同情が区別できるとされる。
例えば,自他を独立した存在として見なすことが可能となる1つの要因として,個人が集団へ関与するときの対処法が考えられる。
そこで本研究は,個人の所属する集団において,葛藤場面を想定することで,集団への同一化過程における個人の発達差を共感性の類型から明らかにすることを目的とした。
方 法
調査対象 私立A大学の大学2~4年生146名(男子63名,女子83名)。
調査時期 2016年1月中旬
使用尺度
1)三好(2001)の「“集団”との葛藤様態類型化のための質問紙」を用いた。
2)角田(1994)の「共感経験尺度改定版」。評定は,「1.全くあてはまらない」~「7.とてもあてはまる」の7件法である。
結 果
“集団”との葛藤様態(三好,2001)に沿って,調査対象者を①解決型,②葛藤型,③無葛藤型の3タイプに類型化した。今回の分析では,葛藤経験がある2タイプに限定するため,③無葛藤型は除いた。
続いて,共感経験尺度改定版(角田,1994)の因子分析(主因子法,バリマックス)の結果,「共有経験尺度(Scale of Sharing Experience:SSE)」および「共有不全経験尺度(Scale of Insufficient Sharing Experience:SISE)」の2因子に分かれた。先行研究と同様に,全体の中央値(SSE:44,SISE:34)を基準に高得点群と低得点群に分け,2尺度の組み合わせ(両向型,共有型,不全型,両貧型)から,共感経験の類型化をおこなった。
その後,葛藤類型2タイプ×共感経験4タイプの関連を調べるため,χ二乗検定を行った(Table 1)。人数の偏りに有意な差が見られたため(χ²=8.32,df=3,p<.05)。残差分析を行ったところ,集団との葛藤様態における「解決型」において,共感経験の中でも「両向型」の人数が多い傾向があり,「不全型」の人数が有意に少なかった。また,「葛藤型」において,「不全型」の人数が有意に少なく,「両向型」の人数が多い傾向がみられた。
考 察
結果より,集団における葛藤様態により共感経験には差が見られた。
「両向型」は自他を独立した存在として捉えることができ,自己の感情体験を内省する力をもつという(角田,1994)。ゆえに,集団への関与において,葛藤を乗り越える者が多く存在すると考えられる。「不全型」は,他者との共有体験を得にくく,孤独感をもち,対人世界への信頼感が低いという(角田,1994)。ゆえに,解決には至らず,葛藤を抱えたままであると考えられる。
ただし,「共有型」および「両貧型」で有意な差が見られなかったのは今後の課題である。
共感性を高く有する者の中には,自己中心的な観点からその体験を捉えている者がおり,共感と同情が混在しているという指摘があった(角田,1992)。その後,共感経験尺度改定版(角田,1994)が作成され,自己の感情体験を内省する力をもつ「両向型」と,自他を独立した存在とは見ることができない未分化な状態の「共有型」に類型化することが可能となり,共感と同情が区別できるとされる。
例えば,自他を独立した存在として見なすことが可能となる1つの要因として,個人が集団へ関与するときの対処法が考えられる。
そこで本研究は,個人の所属する集団において,葛藤場面を想定することで,集団への同一化過程における個人の発達差を共感性の類型から明らかにすることを目的とした。
方 法
調査対象 私立A大学の大学2~4年生146名(男子63名,女子83名)。
調査時期 2016年1月中旬
使用尺度
1)三好(2001)の「“集団”との葛藤様態類型化のための質問紙」を用いた。
2)角田(1994)の「共感経験尺度改定版」。評定は,「1.全くあてはまらない」~「7.とてもあてはまる」の7件法である。
結 果
“集団”との葛藤様態(三好,2001)に沿って,調査対象者を①解決型,②葛藤型,③無葛藤型の3タイプに類型化した。今回の分析では,葛藤経験がある2タイプに限定するため,③無葛藤型は除いた。
続いて,共感経験尺度改定版(角田,1994)の因子分析(主因子法,バリマックス)の結果,「共有経験尺度(Scale of Sharing Experience:SSE)」および「共有不全経験尺度(Scale of Insufficient Sharing Experience:SISE)」の2因子に分かれた。先行研究と同様に,全体の中央値(SSE:44,SISE:34)を基準に高得点群と低得点群に分け,2尺度の組み合わせ(両向型,共有型,不全型,両貧型)から,共感経験の類型化をおこなった。
その後,葛藤類型2タイプ×共感経験4タイプの関連を調べるため,χ二乗検定を行った(Table 1)。人数の偏りに有意な差が見られたため(χ²=8.32,df=3,p<.05)。残差分析を行ったところ,集団との葛藤様態における「解決型」において,共感経験の中でも「両向型」の人数が多い傾向があり,「不全型」の人数が有意に少なかった。また,「葛藤型」において,「不全型」の人数が有意に少なく,「両向型」の人数が多い傾向がみられた。
考 察
結果より,集団における葛藤様態により共感経験には差が見られた。
「両向型」は自他を独立した存在として捉えることができ,自己の感情体験を内省する力をもつという(角田,1994)。ゆえに,集団への関与において,葛藤を乗り越える者が多く存在すると考えられる。「不全型」は,他者との共有体験を得にくく,孤独感をもち,対人世界への信頼感が低いという(角田,1994)。ゆえに,解決には至らず,葛藤を抱えたままであると考えられる。
ただし,「共有型」および「両貧型」で有意な差が見られなかったのは今後の課題である。