[PF52] 構成的文章完成法(K-SCT)の信頼性と妥当性
キーワード:構成的文章完成法(K-SCT), 信頼性, 妥当性
問題と目的
国内において文章完成法(SCT)は投映法心理検査の中で使用頻度の高い心理検査であるにもかかわらず,その信頼性と妥当性に関する研究は少ない。その理由として考えられることは,SCTは多種多様な形式があるが原版がないこと,結果を数量化できるSCTが片口・早川(1989)のほかにはほとんど開発されていないことがあげられる(黒田,2012)。心理検査を実施するにあたって,使用する検査の信頼性と妥当性が十分に検討されていることは必要不可欠であるが,SCTにおいて,その評定の信頼性や妥当性に関する研究は極めて少ないのが現状である。そこで本研究では,結果の数量化が可能な構成的文章完成法(以下K-SCT)の評定者間信頼性および基準関連妥当性を検討する。
方 法
調査協力者 大学生93名(男性32名,女性61名,平均年齢20.6歳)を対象に構成的文章完成法(K-SCT)(片口・早川,1989)と下記の質問紙を1週間の間隔を空けて実施した。
(1)対人信頼感尺度(堀井・槌井・1995)
(2)Big Five尺度短縮版(並川他,2012)
(3)内的作業モデル尺度(戸田,1988)
(4)Locus of Control尺度(蒲原・樋口・清水,1982)
(5)バランス型社会的望ましさ反応尺度日本語版(BIDR-J)
評定 第1著者がすべてのK-SCTの回答を評定し,臨床心理学を専攻する大学院生5名がそれぞれ異なる10名の回答を評定した。
結 果
指数に関する評定者間の相関係数の平均値は消極指数が.50とやや小さいが,他の指数は.67から.90と比較的大きな値であった。
K-SCTの各指数とBig Five尺度短縮版の各因子との相関係数をTable 1へ示す。
考 察
K-SCTと他尺度との関連
K-SCTの肯定指数および積極指数は,対人信頼感や外向性,経験への開放性,安定型の内的作業モデル,内的統制傾向,社会的望ましさ反応との関連が示された。
否定指数と消極指数は,Big Fiveの情緒不安定性や回避型およびアンビバレント型の内的作業モデルとの関連が示された。両価指数と肯定指数においては,K-SCTの解説には示されていない特徴を読み取ることができた。両価指数が高くなるほどBig Fiveの協調性が高く,誠実性が低くなるという結果から,両価指数は対人関係における柔軟性や協調性と捉えることが示唆された。肯定指数は社会的望ましさ反応尺度との相関があったことから,周囲に好ましい印象を与えようとする防衛的な態度やネガティブな物事への抑圧から肯定指数が高くなると捉えることができる。
外向指数と内向指数については,男性の外向指数とBig Five外向性と協調性において有意な相関がみられた他は,関連が見られる尺度はなかったため,今後さらに妥当性の検討がなされる必要がある。
付 記
第1著者が2017年度に法政大学人間社会研究科へ提出した修士論文の一部である。
国内において文章完成法(SCT)は投映法心理検査の中で使用頻度の高い心理検査であるにもかかわらず,その信頼性と妥当性に関する研究は少ない。その理由として考えられることは,SCTは多種多様な形式があるが原版がないこと,結果を数量化できるSCTが片口・早川(1989)のほかにはほとんど開発されていないことがあげられる(黒田,2012)。心理検査を実施するにあたって,使用する検査の信頼性と妥当性が十分に検討されていることは必要不可欠であるが,SCTにおいて,その評定の信頼性や妥当性に関する研究は極めて少ないのが現状である。そこで本研究では,結果の数量化が可能な構成的文章完成法(以下K-SCT)の評定者間信頼性および基準関連妥当性を検討する。
方 法
調査協力者 大学生93名(男性32名,女性61名,平均年齢20.6歳)を対象に構成的文章完成法(K-SCT)(片口・早川,1989)と下記の質問紙を1週間の間隔を空けて実施した。
(1)対人信頼感尺度(堀井・槌井・1995)
(2)Big Five尺度短縮版(並川他,2012)
(3)内的作業モデル尺度(戸田,1988)
(4)Locus of Control尺度(蒲原・樋口・清水,1982)
(5)バランス型社会的望ましさ反応尺度日本語版(BIDR-J)
評定 第1著者がすべてのK-SCTの回答を評定し,臨床心理学を専攻する大学院生5名がそれぞれ異なる10名の回答を評定した。
結 果
指数に関する評定者間の相関係数の平均値は消極指数が.50とやや小さいが,他の指数は.67から.90と比較的大きな値であった。
K-SCTの各指数とBig Five尺度短縮版の各因子との相関係数をTable 1へ示す。
考 察
K-SCTと他尺度との関連
K-SCTの肯定指数および積極指数は,対人信頼感や外向性,経験への開放性,安定型の内的作業モデル,内的統制傾向,社会的望ましさ反応との関連が示された。
否定指数と消極指数は,Big Fiveの情緒不安定性や回避型およびアンビバレント型の内的作業モデルとの関連が示された。両価指数と肯定指数においては,K-SCTの解説には示されていない特徴を読み取ることができた。両価指数が高くなるほどBig Fiveの協調性が高く,誠実性が低くなるという結果から,両価指数は対人関係における柔軟性や協調性と捉えることが示唆された。肯定指数は社会的望ましさ反応尺度との相関があったことから,周囲に好ましい印象を与えようとする防衛的な態度やネガティブな物事への抑圧から肯定指数が高くなると捉えることができる。
外向指数と内向指数については,男性の外向指数とBig Five外向性と協調性において有意な相関がみられた他は,関連が見られる尺度はなかったため,今後さらに妥当性の検討がなされる必要がある。
付 記
第1著者が2017年度に法政大学人間社会研究科へ提出した修士論文の一部である。