日本教育心理学会第60回総会

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ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

2018年9月16日(日) 16:00 〜 18:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF54] 視覚障害等に関連する認知機能に関連した行動支援を多様な活動場面で生かすために

認知面での多様な観点での発達障害等を持つ児童生徒の自主的な活動に広げていくために

刀禰豊 (岡山東支援学校)

キーワード:特別支援教育, 卒業後の活動支援, 視覚障害教育

はじめに
 視覚障害を持つ児童生徒にとっても,作業学習などの実践は必要であり,自立に向けた多様な指導が指導の目標の一つとして行われている。児童生徒の自主的な活動への意欲は,社会での就労や自発的な参加のために重要な観点である。個々の児童生徒の自立に向けた支援のあり方を外面的な就労といった自立に特化しても,それだけでは,多様性のある場面で活用できる適切な指導になっていない。生徒の自主的で主体的な学びを多様な特別支援学校(特別支援学級)で展開すべく,生徒への支援の観点も変化しつつある。卒業後も自立的,自主的な活動への意欲を持つことが,社会へ持続的,自発的な関わりを持ち続けるきっかけとなった要因について視覚障害特別支援学校の卒業生を中心としたグループのあり方を検証し,意欲的な態度を育成する支援のあり方を探る。

方  法
 卒業後に自主的な活動サークルで視覚障害児・者を含め広く発達障害等を含めた支援活動を続けているグループにアンケートや聞き取りを行い,効果的な活動,支援等について個々の思いも含めまとめることで,学校での支援の中で取り組むべき観点について整理する。対象は盲学校を卒業した男性,年齢は20歳から28歳の5名。データ等の発表等については,調査した方からの承諾はとっている。

結  果
 社会の中で自立するとき,基本となるのは広く生活の中で使える日常の生活に自発的,自立的に取り組もうとすることが基本である。
 生徒の意見の中に,卒業後自分で余暇の時間をどのようにすごすかについて対処できずこまったということをあげる例が多かった。
 また,話をしてお互いを知り合うことが活動につながることもあったようである。

結  論
 就労を保障ことだけで,卒業後の意欲的な姿勢が作り出されるのではなく,「思い」を持って,仲間とともに生きることの大切さを自覚することで,自主的なグループが発展し,自分たちだけでなく広く社会に関わっていこうとした点も大きい。
活動の場面で,個の能力も含めて,個別のケースでの必要な支援・介入について,児童生徒の結果としてのアウトプットの状況をそれ以前の児童生徒が置かれた条件のどこにあるのか詳細に検討する方法論を一般化していく必要がある。発達障害等も併せ持つ児童生徒に対して,個々の活動に取り組む際の発見,気づき,意欲などの側面が,内的発動から獲得されるものでなく,経験的に獲得されるように,多様な活動の中で,個の「思い」を実現できたと実感できる状況を作り出していけたことも大きな点であった。
 個の学びと発見を重視する,個の学習過程の検討のなかで,「見えにくさ」の支援から始まったお互いへの意識が,広く多様な障害へ目を向ける結果ともなった。

おわりに
 意欲的に活動できる意識を育てるためには,継続的に,個々の生徒の思いを引き出し,活動へ結び付けていかなければならない。活動の種類だけを用意し,場を提供するだけでは不十分である。個々の実態を明確に把握することは基本となる事項であり,発達障害児童・生徒含めて,多様な障害を抱えた人の思いを実現するために,本事例で深めてきた実践をさらに広め,押し付けでない「思い」寄り添った姿勢を,学校での教育の段階で深めていくことが必要であろう。