[PG03] 中学生の社会的行動についての研究(114)
2年間で一貫して全体的自己価値が低かった中学生の行動上の特徴
キーワード:中学生, 全体的自己価値, 縦断的変化
目 的
山本らの一連の研究では,中学生の全体的自己価値の変化及び変化に影響を与えている要因について検討を行っている。中学1年2学期から中学3年2学期までの2年間で,全体的自己価値は低下しており,男子よりも女子の方が否定的に評価していたが,潜在成長曲線モデルで検証した結果では,その変化には「個人差」もみられている(山本,2013)。研究(112)では,全体的自己価値の変化の個人差に焦点をあて,「一貫して全体的自己価値が高かった中学生」に焦点をあて,行動上の特徴を検討した。その結果,親か友だちのいずれか,あるいは両方との共行動をより多く行っていること,特に男子は向社会的行動をより多く行っていることがうかがわれた。本研究では,中学1年2学期から中学3年2学期までの5時点の調査で「一貫して全体的自己価値が低かった中学生」に焦点をあて,問題行動や規則違反,向社会的行動,親や友だちとの共行動といった行動上の特徴を記述することを目的とする。
方 法
1.調査実施時期と調査協力者 調査は愛知県内と福島県内の中学生に,中学1年2学期から中学3年2学期まで(2002年9月~2004年9月),各学期1回,合計7回行った。全体的自己価値の調査を行った5時点(中学1年2学期,中学2年1,2学期,中学3年1,2学期)で,全体的自己価値の全項目に回答のあった中学生321名(男子134名,女子187名)について検討を行った。なお,調査は強制ではないこと,記入したくなければ記入しなくてもよいことを調査用紙に明記した。
2.調査内容 ①全体的自己価値(5項目):自分のことが好きであるなど自分をどのように評価しているかを6段階評定(非常にあてはまる~非常にあてはまらない)でたずねた。高得点ほど肯定的に評価しているよう合計点を算出し,項目数で除したものを尺度得点とした。②行動上の特徴:問題行動(22項目),向社会的行動(7項目),親(5項目)や友だち(6項目)との共行動を,この3カ月間にどのくらいしたかを4段階評定(一度もなかった~何度もあった)でたずねた。また問題行動の予兆となりうる規則違反(7項目)がこの3カ月間にどのくらいあったかを4段階評定(いつもある~めったにない)でたずねた。それぞれ合計点を算出し,項目数で除したものを尺度得点とした。
結果および考察
1.一貫して全体的自己価値が低かった中学生(男子) 中1の2学期時点で,2.6点以下(平均値-SD以下)であった全体的自己価値が低い男子中学生は,25名(18.7%)であった。しかし5時点で「一貫して全体的自己価値が低かった男子中学生(一貫して2.6点以下)」は,ひとりもいなかった。なお,5時点すべてで3.1点以下(平均値-1/2SD以下)であった男子中学生は,14名(10.4%)であった。
2.一貫して全体的自己価値が低かった中学生(女子) 中1の2学期時点で,2.1点以下(平均値-SD以下)であった全体的自己価値が低い女子中学生は,10名(5.3%)であった。そのうち5時点で「一貫して全体的自己価値が低かった女子中学生(一貫して2.1点以下)」は,6名(3.2%)であった。以下Aさん~Fさんとする。なお,5時点すべてで2.6点以下(平均値-1/2SD以下)であった女子中学生は,20名(10.7%)であった。
3.行動上の特徴 男子については,全体的自己価値が一貫して特に低かった中学生がみられなかったため,女子の結果のみ示す。①問題行動:Aさん,Bさん,Fさんの3名はほぼ一貫して問題行動を多く行っていた。CさんとEさんは,問題行動は一貫して行っていなかったが,問題行動の予兆となりうる規則違反を一貫して行っていた。Dさんのみ,問題行動も規則違反も一貫してほとんどみられなかった。②向社会的行動:Aさん,Fさんの2名は,ほぼ一貫して平均より向社会的行動が少なかった。特にAさんは,中学2年以降ほとんど行っていなかった。Dさんは,中学2年になってから向社会的行動が少なくなっていた。Bさん,Cさん,Eさんは,一貫していなかった。③親との共行動:Bさん,Cさん,Fさんの3名はほぼ一貫して共行動が平均よりも少なかった。特にBさん,Fさんは,非常に少なかった。Aさんは中学2年2学期以降,共行動が少なくなっていた。④友だちとの共行動:Aさん,Dさん,Eさんの3名がほぼ一貫して共行動をより多く行っていた。一方Fさんは,一貫して友だちとの共行動があまりみられなかった。
まとめ
男子は一貫して全体的自己価値が特に低かった中学生がみられなかった。一貫して全体的自己価値が低かった女子中学生は,問題行動あるいはその予兆となりうる規則違反をより多く行っていることがうかがわれた。
山本らの一連の研究では,中学生の全体的自己価値の変化及び変化に影響を与えている要因について検討を行っている。中学1年2学期から中学3年2学期までの2年間で,全体的自己価値は低下しており,男子よりも女子の方が否定的に評価していたが,潜在成長曲線モデルで検証した結果では,その変化には「個人差」もみられている(山本,2013)。研究(112)では,全体的自己価値の変化の個人差に焦点をあて,「一貫して全体的自己価値が高かった中学生」に焦点をあて,行動上の特徴を検討した。その結果,親か友だちのいずれか,あるいは両方との共行動をより多く行っていること,特に男子は向社会的行動をより多く行っていることがうかがわれた。本研究では,中学1年2学期から中学3年2学期までの5時点の調査で「一貫して全体的自己価値が低かった中学生」に焦点をあて,問題行動や規則違反,向社会的行動,親や友だちとの共行動といった行動上の特徴を記述することを目的とする。
方 法
1.調査実施時期と調査協力者 調査は愛知県内と福島県内の中学生に,中学1年2学期から中学3年2学期まで(2002年9月~2004年9月),各学期1回,合計7回行った。全体的自己価値の調査を行った5時点(中学1年2学期,中学2年1,2学期,中学3年1,2学期)で,全体的自己価値の全項目に回答のあった中学生321名(男子134名,女子187名)について検討を行った。なお,調査は強制ではないこと,記入したくなければ記入しなくてもよいことを調査用紙に明記した。
2.調査内容 ①全体的自己価値(5項目):自分のことが好きであるなど自分をどのように評価しているかを6段階評定(非常にあてはまる~非常にあてはまらない)でたずねた。高得点ほど肯定的に評価しているよう合計点を算出し,項目数で除したものを尺度得点とした。②行動上の特徴:問題行動(22項目),向社会的行動(7項目),親(5項目)や友だち(6項目)との共行動を,この3カ月間にどのくらいしたかを4段階評定(一度もなかった~何度もあった)でたずねた。また問題行動の予兆となりうる規則違反(7項目)がこの3カ月間にどのくらいあったかを4段階評定(いつもある~めったにない)でたずねた。それぞれ合計点を算出し,項目数で除したものを尺度得点とした。
結果および考察
1.一貫して全体的自己価値が低かった中学生(男子) 中1の2学期時点で,2.6点以下(平均値-SD以下)であった全体的自己価値が低い男子中学生は,25名(18.7%)であった。しかし5時点で「一貫して全体的自己価値が低かった男子中学生(一貫して2.6点以下)」は,ひとりもいなかった。なお,5時点すべてで3.1点以下(平均値-1/2SD以下)であった男子中学生は,14名(10.4%)であった。
2.一貫して全体的自己価値が低かった中学生(女子) 中1の2学期時点で,2.1点以下(平均値-SD以下)であった全体的自己価値が低い女子中学生は,10名(5.3%)であった。そのうち5時点で「一貫して全体的自己価値が低かった女子中学生(一貫して2.1点以下)」は,6名(3.2%)であった。以下Aさん~Fさんとする。なお,5時点すべてで2.6点以下(平均値-1/2SD以下)であった女子中学生は,20名(10.7%)であった。
3.行動上の特徴 男子については,全体的自己価値が一貫して特に低かった中学生がみられなかったため,女子の結果のみ示す。①問題行動:Aさん,Bさん,Fさんの3名はほぼ一貫して問題行動を多く行っていた。CさんとEさんは,問題行動は一貫して行っていなかったが,問題行動の予兆となりうる規則違反を一貫して行っていた。Dさんのみ,問題行動も規則違反も一貫してほとんどみられなかった。②向社会的行動:Aさん,Fさんの2名は,ほぼ一貫して平均より向社会的行動が少なかった。特にAさんは,中学2年以降ほとんど行っていなかった。Dさんは,中学2年になってから向社会的行動が少なくなっていた。Bさん,Cさん,Eさんは,一貫していなかった。③親との共行動:Bさん,Cさん,Fさんの3名はほぼ一貫して共行動が平均よりも少なかった。特にBさん,Fさんは,非常に少なかった。Aさんは中学2年2学期以降,共行動が少なくなっていた。④友だちとの共行動:Aさん,Dさん,Eさんの3名がほぼ一貫して共行動をより多く行っていた。一方Fさんは,一貫して友だちとの共行動があまりみられなかった。
まとめ
男子は一貫して全体的自己価値が特に低かった中学生がみられなかった。一貫して全体的自己価値が低かった女子中学生は,問題行動あるいはその予兆となりうる規則違反をより多く行っていることがうかがわれた。