日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-76)

2018年9月17日(月) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PG15] 高等教育における協同学習の実践的検討(VIII)

学びを深める質問のスキル

益谷真 (敬和学園大学)

キーワード:協同学習, 質問スキル

目  的
 大学生は質問されたら,自分なりに考えて応える事は,ある程度できるが,自ら質問するのは苦手である。話し合いを通じて課題に取り組む協同学習では,知らない情報を収集する質問モードから,集団思考のための質問モードへ,即ち様々な情報を精査し,課題解決のためにクリティカルに考えるために質問することが求められ,学習スキルとして効果的な質問のノウハウが協同学習の質を高める。また,社会人基礎力としても,効果的な質問のスキルが,チームで仕事を進めるための対話や,創発的なミーティングなどにおいて,欠かせないコミュニケーション・スキルになる。
そこで本報告では,大学生たちが話し合いを通じて学んでいくために,互いにどのように質問すればよいか(ノウハウ)に関する知識と,それらを用いて実際にどのような質問が作れるかを検討する。

方  法
 対象者:地方の国立大学の1年次生240名を対象に,コミュニケーション・スキルをテーマにした協同学習を15回実施し,その第10回目に授業中の課題として,以下の設問について個別に自由記述させた。
 設題:①どうすれば効果的な質問になるか?あなたが知っているコツをできるだけ多く報告しなさい。②今回の授業内容について効果的な質問をできるだけ多く作りなさい。

主な結果と考察
 回答はフリーソフトのKHコーダーでテキスト分析した。単語単位の分析になるので,入力段階で表現を可能な限り統一させた。前処理で複合語を整理して,意味レベルでキーワードが特定できるようにした。
 Table 1に頻出上位の語句を意味が分かるように機能語を補って示す。質問の最中フェーズにコツが偏り,話し合いを深める展開フェーズが不足していることが分かる。事前の個人思考で質問を考える事も,効果的な質問を産み出す助けになる。
 知っているコツを活かして実際に作った質問を外的基準にして多重対応分析したところ,作られた質問の個数に関して,その影響は認められなかったが,コツを多く知っていると,質問の文章が丁寧で詳細に述べられた。答えを求めるのではなく,相互に思考を展開させるには,展開フェーズのコツが有効であったことから,質問中心の対話(清宮,2011)を協同学習に多く採り入れる事が,効果的なトレーニングになると思われる。