日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-76)

2018年9月17日(月) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PG30] アドバイスの口頭産出と筆記産出の比較

真下知子1, 三宮真智子2 (1.京都文教短期大学, 2.大阪大学大学院)

キーワード:コミュニケーション, 発話産出, アドバイス

問題と目的
 大学生を対象としたコミュニケーション教育を設計するため,筆者らはこれまで,大学生活で日常的な場面の一つである友人間のアドバイス場面に着目し,場面の収集,場面の評定,言葉かけの収集,受け手の認知や感情に関する検討等,実態把握に取り組んできた(真下ら 2014a, 2014)。これら一連の研究では,主に会話形式のシナリオを用いた質問紙実験により,想定場面での発話収集を筆記形式で行ってきた。しかし,実際の会話は口頭で行うため,口頭で話す場合と質問紙上に筆記する場合とでは,発話内容が異なることも考えられる。真下・三宮(2016)による予備的検討では,口頭群と筆記群のアイデアユニット数および発話の種類には,差がないことが示された。本研究では,対象人数を増やして実験を行い,同様の結果が得られるか確認を行なった。さらに,今回は,視点取得能力の高低によって発話の種類に差があるかを合わせて検討した。

方  法
 京阪地区の女子大学生33名(中央値19歳,幅19~21歳)を対象に場面想定法による質問紙実験を実施した。真下ほか(2014a)で,大学生が友人からアドバイスされた場面,およびアドバイスした場面として収集されたもののうち,練習用に2場面,本課題として「アルバイト」の場面を設定した。アドバイスの受け手は,普段(授業中や休み時間),よく一緒に行動する同性の友人とした。
 会話形式のシナリオを提示し,登場人物の友人に対するアドバイスの発話を産出するよう求めた。本課題では,対象者を「筆記群:18名」と「口頭群:15名」にランダムに割り当てた。筆記群には「あなたがAさんにアドバイスするならば,どのように言いますか?あなたが言いそうなセリフを下の吹き出しの中に書き込んでください。」,口頭群には「あなたがAさんにアドバイスするならば,どのように言いますか?言ってみてください。」(Windows付属のサウンドレコーダーおよびマイクを用いて録音)と教示した。
さらに,個人特性として,多次元共感性尺度(MES)(鈴木・木野,2008)の下位尺度のうち視点取得に関する5項目について,1.全くあてはまらない~5.非常によくあてはまる,の5件法で回答を求めた。そして,これら5項目の得点を平均して視点取得得点とした。
 得られた発話は入力後,邑本(1992)を参考にアイデアユニット(IU)に分割し,その数を比較した。また,真下ら(2014b)のアドバイス発話の4カテゴリー「指示」「提案」「ヒント」「非難」を用いて分類し,発話の種類が異なるかを検討した。

結果と考察
 録音状況が悪く聞き取ることができなかった発話を除いた結果,筆記群で32件,口頭群で31件の発話が分析対象となった。アイデアユニット数の平均値と標準偏差をTable 1に示す。t検定の結果,両群間のアイデアユニット数に差は認められなかった(t(30)=.81, n.s.)。
 筆記群,口頭群の両群で得られた発話の種類をTable 2に示す。真下・三宮(2016)では,指示と提案の2種類の発話しか得られなかったのに対して,間接的な表現であるヒントや非難など様々な種類の発話が得られた。また,両群において発話の種類に差があるかをχ2検定によって検討した結果,差は認められなかった(χ2=5.23, df=4, n.s.)。
 実験参加者の視点取得視点の平均値3.67で高群と低群に分け,両群において発話の種類に差があるかをχ2検定により検討した。その結果,4つのカテゴリーすべてにおいて差は認められなかった。以上の結果より,口頭と筆記の両群において産出される発話には,量的にも質的にも差は認められなかった。また,視点取得得点の高低によっても発話の種類に差は見られなかった。ただし,本研究での口頭による発話産出は,現実場面での双方向の会話とは異なる状況であるため,今後は面接法等を用いてさらに検討する必要がある。