日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-76)

2018年9月17日(月) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PG52] 学生相談機関のウェブサイト上における情報発信

東京および台北の学生相談機関における5年間の変化の比較

伊藤直樹 (明治大学)

キーワード:学生相談機関, ウェブサイト, 国際比較研究

目  的
 大学の学生相談機関のウェブサイトは,在籍学生だけでなく教職員,学生の家族にとっても,学生相談機関に関する情報を得るための重要な媒体となっている。日本の学生相談機関のウェブサイト上における情報発信は充実する傾向にあるが,海外と比較すると,決して充実した状況にはない。日本の相談員の多くが非常勤である現状を踏まえれば,ウェブサイト充実のために多くの労力を割くことは難しい。したがって,発信すべき情報を精選しつつ,より充実した情報発信を目指す工夫が必要である。この際,海外の学生相談機関と情報発信のあり方を比較することは有益であろう。
本研究は東京および台北の学生相談機関のウェブサイト上における情報発信を5年のスパンをとって比較し,日本の学生相談機関の情報発信の充実のための示唆を得るために行われた。

方  法
調査の概要
2018年1月から3月に,大学基準協会加盟正会員大学であり,本部が東京23区内にある48大学,台北市内にキャンパスがある25大学を対象とし,各大学の公式ウェブサイトの学生相談機関のページを閲覧した上で,伊藤(2017)をもとに選択した58の情報カテゴリの掲載の有無を調査した。さらに,伊藤(2017)における2013年調査のデータを合わせることにより,経年比較を試みた。

結  果
学生相談機関の独自ウェブサイトの有無の比較
 2013年・2018年調査に共通する48情報カテゴリを用いて,両調査に共通する東京45大学,台北12大学の分析を行った。学生相談機関独自のページを有する機関数は,東京は38大学(84.4%)から45大学(100%)に増加し,台北は両調査とも12大学(100%)であり変化は見られなかった。
情報カテゴリの掲載状況の比較
 各学生相談機関別に総情報カテゴリ数を求め,都市別に基本統計,変化量を算出した(Table 1)。
 次に,掲載する大学数に10%以上増減があった情報カテゴリを抽出した(Table 2)。さらに,2018年調査において,3分の2以上の大学が掲載していた情報カテゴリを抽出した(Table 3)。

考  察
 東京はすべての機関が独自ページを有し,また,5年間に総情報カテゴリ数が増加し,増加した情報カテゴリ数が台北より多かった。学生相談機関のウェブサイトはさらに充実しつつあると考えられる。しかし,東京は総情報カテゴリ数が台北と比較すると依然として少なく,今後も充実に向けて努力する必要があることが示唆された。
 3分の2以上の機関が掲載していた情報カテゴリの比較からは,東京は所在地や利用方法など利用に必要な最低限の情報は十分に掲載されていることがわかるが,台北はサービス内容や相談員に関する情報などもかなりの割合で掲載されていることがわかる。このことから,利用に必要な最低限の情報に加えて,改善の一歩として,学生相談機関のサービスがわかる情報を掲載することがあげられよう。また,東京は相談員の名前(53.3%),相談員の専門性(60.0%),相談員のメールアドレス(6.7%)が台北に比べるとかなり低く,こうした情報の掲載から着手することも有益ではないか。

引用文献
伊藤直樹 (2017).ウェブサイト上における日・米・英・台の学生相談機関の情報発信 心理学研究,88,79-85.

付  記
本研究はJSPS科研費JP17K04464の助成を受けて行われた。