日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-76)

2018年9月17日(月) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PG53] 中学校教師における心理的ストレス反応に対する教師ストレッサー及びソーシャル・サポートの影響

ソーシャル・サポートの内容に着目した検討

田辺雄一1, 佐田久真貴#2 (1.宝塚市教育委員会事務局, 2.兵庫教育大学)

キーワード:中学校教師, 心理的ストレス反応, ソーシャル・サポート

目  的
 日本の教師の精神疾患による休職が深刻である(文部科学省,2017)ことから,教師のストレスの問題に対する心理社会的介入が求められている。
 教師の心理的ストレス反応と関連する要因として,ソーシャル・サポートがある(藤原ら,2011)。奥野ら(2013)は看護師のバーンアウトに関する検討の中でソーシャル・サポートを取り上げ,上司や同僚,家族や友人というソーシャル・サポートの受けやすさの対象ごとの検討のみならず,“気軽な話”“困った時の頼り”“相談傾聴期待”というソーシャル・サポートの受けやすさの内容ごとの検討も行っている。ソーシャル・サポートの対象のみならず,内容にも着目した検討を行うことで,介入の洗練化を図るための貴重なエビデンスが得られると考えられる。
 そこで本研究では,日本の中学校教師における心理的ストレス反応に対するソーシャル・サポートの影響について,ソーシャル・サポートの内容に着目して検討を行うことを目的とする。また,教師のメンタルヘルスには,ストレッサーが影響を与えると考えられるため,教師特有のストレッサーのストレス反応に対する影響を統制したうえで検討を行うこととする。

方  法
1.対象者
 公立中学校の中学校教員を対象に調査を実施し,回答ミスや記入漏れのあったものなどを除いた201名(男性100名,女性101名,平均年齢42.9歳(SD=11.1))の回答を分析対象とした。
2.調査材料
 ①フェイスシート:年齢などについて回答を求めた。②教師用ストレッサー尺度(田中ら,2003):各因子において因子負荷量の高い上位3項目を用いて構成した。②職業性ストレス簡易調査票(下光ら,2000):ソーシャル・サポートを測定する下位尺度を用いた。奥野ら(2013)にならい,ソーシャル・サポートの受けやすさの内容ごとの集計を行った。“気軽な話(気軽に話ができるか)”,“困った時の頼り(困った時に頼りになるか)”“相談傾聴期待(個人的な問題を相談したらきいてくれるか)”の3下位尺度であった。③心理的ストレス反応測定尺度(鈴木ら,1997)
3.倫理的配慮
 データは統計的に処理され,研究目的にのみ使用し,学校並びに回答者のプライバシーは守られること,回答は無記名,任意であり,いつでも中止可能であることを確認した。調査については合意が得られた個人のみが回答した。

結  果
 相関分析実施後,心理的ストレス反応を目的変数とした階層的重回帰分析を行った(Table 1)。

考  察
 階層的重回帰分析の結果,教師ストレッサーの影響を統制しても,ソーシャル・サポートの“気軽に話ができるか”という内容が心理的ストレス反応に対して負の関連を示した。
 田上ら(2004)は,教師のストレスに影響を及ぼす要因として職業の特殊性,個人特性,環境の特異性といったものをあげている。今後は,様々な要因を同時に取り上げ,同一モデル内に含めた分析を行うなど,メンタルヘルスへの影響を包括的な観点から検討することで,心理社会的介入の洗練化への示唆を得ることが期待される。