[PH01] 日々の母娘関係と情動性の関連についての一研究
3組の母娘の2者関係の同時分析から
キーワード:青年期, 母娘関係, P技法
目 的
青年期の親子関係は青年のパーソナリティやアイデンティティといった心理的発達に関係していることが報告されており,青年期においても重要な役割を担っていると思われる。
本研究においては,小高・紺田(2018)の母娘関係の構造分析の結果で得られた因子(彼らの研究では日々の母娘関係には,母と娘それぞれに「母娘の親和的コミュ二ケーションに関する因子(以下,親和因子)」と「娘の自己主張に関する因子(以下,主張の因子)」が存在することを報告している)に着目し,これらの因子と母と娘の情動性との関連について,DFAのラグ0モデルを作成し,SEMによる3組の女子中学生とその母親の2者関係の同時分析を用いて明らかにする。
方 法
(1) 対象者と測定期間:女子中学生1年生(ID1001D,ID1002D,ID1004D)とその母親3名(ID1001M,ID1002M,ID1004M)を対象とした。測定日数は,母娘の両方が揃ったデータを分析対象とした。ID1001の母娘145日,ID1002で101日(途中約2週間中断しているため,前半101日を分析対象とした),ID1004で144日であった。なお,本調査の実施に関しては,関西のK大学大学院のS研究科の研究・倫理委員会の審査を受け,その承認を得ている。(2) 質問項目:①小高・紺田(2018)で得られた親和因子と主張因子に3組が共通して負荷を示した項目18項目を用いた。②清水・山本 (2008) を参考にして作成した情動性に関する項目5項目を用いた。(3) 分析手続き:①母と娘の情動性に関する項目についてそれぞれ因子分析を行い,3組に共通して0.3以上の負荷を示す項目を選択した。②母娘関係の項目と選択された情動性の項目を用いて下位尺度(小包)を構成し,DFAのラグ0における母娘関係と母と娘の情動性との関連について検討するためにSEMによる3組の母娘の2者関係の同時分析を行った。
結 果
情動性と母娘関係との関連についてSEMによるDFAのラグ0の3組の母娘の2者関係の同時分析を行った。その結果,Figure 1に示すように適合度の高い結果を得ることができた(χ2(150)=220.290, p<.000, RMSEA=.035, CFI=.966, AIC= 466.290, SRMR=.062)。どの組み合わせにおいても,それぞれに該当する因子からの因子パターンが0.1%水準で有意であった。このことから,これらの因子は,どの組み合せにおいても同じ概念で構成されており,共通した因子として存在すると考えられる。また因子間共分散をみると,3組に共通して,母と娘の主張因子の間において正の有意な関連が,母の親和因子と母の主張因子の間で有意な負の相関が認められた。このことから母が娘の自己主張が強いと認知しているとき,娘も同じように認知しており,母は娘との関係が親和的でないと認知していると考えられる。また母の情動性は母が認知する母娘の親和的なコミュニケーションと直接的あるいは間接的に負の関連が認められた。
考 察
本研究の結果から,母娘関係と情動性との関連は,共通する部分もあったが,それぞれの母娘の組み合わせで違いも認められた。娘の情動性と母の情動性が母娘関係を介して間接的に関連する場合や,娘の情動性と母の情動性が直接的に関連する場合や,娘の情動性と母の情動性が直接的にも間接的にも関連しない場合など,いくつかのパターンが存在することが明らかとなった。これらの結果は,娘と母の情動性の関連は,いくつかの道筋が存在することを示唆するものである。
引用文献
小高 恵・紺田広明 (2018). 日々の母娘関係のP技法による因子分析的研究―3組の中学生の母娘関係の因子構造の比較 太成学院大学紀要,20,53-61.
清水和秋・山本理恵 (2008). 感情的表現項目によるBig Five測定の半年間隔での安定性と変動 関西大学社会学部紀要,39(2),35-67.
付 記
本研究は,科研費基盤研究(C)17K04389の助成を受けたものである。
青年期の親子関係は青年のパーソナリティやアイデンティティといった心理的発達に関係していることが報告されており,青年期においても重要な役割を担っていると思われる。
本研究においては,小高・紺田(2018)の母娘関係の構造分析の結果で得られた因子(彼らの研究では日々の母娘関係には,母と娘それぞれに「母娘の親和的コミュ二ケーションに関する因子(以下,親和因子)」と「娘の自己主張に関する因子(以下,主張の因子)」が存在することを報告している)に着目し,これらの因子と母と娘の情動性との関連について,DFAのラグ0モデルを作成し,SEMによる3組の女子中学生とその母親の2者関係の同時分析を用いて明らかにする。
方 法
(1) 対象者と測定期間:女子中学生1年生(ID1001D,ID1002D,ID1004D)とその母親3名(ID1001M,ID1002M,ID1004M)を対象とした。測定日数は,母娘の両方が揃ったデータを分析対象とした。ID1001の母娘145日,ID1002で101日(途中約2週間中断しているため,前半101日を分析対象とした),ID1004で144日であった。なお,本調査の実施に関しては,関西のK大学大学院のS研究科の研究・倫理委員会の審査を受け,その承認を得ている。(2) 質問項目:①小高・紺田(2018)で得られた親和因子と主張因子に3組が共通して負荷を示した項目18項目を用いた。②清水・山本 (2008) を参考にして作成した情動性に関する項目5項目を用いた。(3) 分析手続き:①母と娘の情動性に関する項目についてそれぞれ因子分析を行い,3組に共通して0.3以上の負荷を示す項目を選択した。②母娘関係の項目と選択された情動性の項目を用いて下位尺度(小包)を構成し,DFAのラグ0における母娘関係と母と娘の情動性との関連について検討するためにSEMによる3組の母娘の2者関係の同時分析を行った。
結 果
情動性と母娘関係との関連についてSEMによるDFAのラグ0の3組の母娘の2者関係の同時分析を行った。その結果,Figure 1に示すように適合度の高い結果を得ることができた(χ2(150)=220.290, p<.000, RMSEA=.035, CFI=.966, AIC= 466.290, SRMR=.062)。どの組み合わせにおいても,それぞれに該当する因子からの因子パターンが0.1%水準で有意であった。このことから,これらの因子は,どの組み合せにおいても同じ概念で構成されており,共通した因子として存在すると考えられる。また因子間共分散をみると,3組に共通して,母と娘の主張因子の間において正の有意な関連が,母の親和因子と母の主張因子の間で有意な負の相関が認められた。このことから母が娘の自己主張が強いと認知しているとき,娘も同じように認知しており,母は娘との関係が親和的でないと認知していると考えられる。また母の情動性は母が認知する母娘の親和的なコミュニケーションと直接的あるいは間接的に負の関連が認められた。
考 察
本研究の結果から,母娘関係と情動性との関連は,共通する部分もあったが,それぞれの母娘の組み合わせで違いも認められた。娘の情動性と母の情動性が母娘関係を介して間接的に関連する場合や,娘の情動性と母の情動性が直接的に関連する場合や,娘の情動性と母の情動性が直接的にも間接的にも関連しない場合など,いくつかのパターンが存在することが明らかとなった。これらの結果は,娘と母の情動性の関連は,いくつかの道筋が存在することを示唆するものである。
引用文献
小高 恵・紺田広明 (2018). 日々の母娘関係のP技法による因子分析的研究―3組の中学生の母娘関係の因子構造の比較 太成学院大学紀要,20,53-61.
清水和秋・山本理恵 (2008). 感情的表現項目によるBig Five測定の半年間隔での安定性と変動 関西大学社会学部紀要,39(2),35-67.
付 記
本研究は,科研費基盤研究(C)17K04389の助成を受けたものである。