[PH03] 高齢者の生活とまなび
健康な後期高齢期を迎えるには
キーワード:高齢期, まなび, 高齢者に現れる行動傾向
目 的
高齢期は個人差が大きいものの,加齢に伴い様々な機能が退行し,ロコモ,認知症,フレイル,抑うつなどに見舞わることが多くなる。そういった行動傾向を軽減し,健康で快活な生活を営むには高齢者はどのような生活をしたらよいのか,まなびがどのように関与しているのか,検討する。
方 法
高齢者の生活に関する質問項目を作成し,調査会社(クロス・マーケティング社)に依頼して,2017年10月にWeb調査を実施した。
調査対象者:65歳~(男性78名,女性29名,計107名)70歳~(男性79名,女性26名,計105名),75歳~(男性85名,女性20名,計105名)で調査は2017年10月に実施した。質問紙:フェイス項目の他,3種類に分かれていた。①普段の日常生活のようす34項目②精神的に健康で快活な度合いに関する質問7項目③加齢に伴い現れやすい疾病や行動の傾向に関する質問23項目。
①は,普段平均してどのくらいするかを(1.ほとんどしない)(2.3ヵ月に1,2日)(3.月に1,2日)(4.週に1,2日)(5.週に3,4日)(6.ほとんど毎日)の6段階で,②,③については,あてはまりの程度を(1.当てはまらない)(2.あまり当てはまらない)(3.どちらともいえない)(4.だいたい当てはまる)(5.当てはまる)の5段階で回答してもらった。
結 果
1.高齢者の生活とまなびの構造
①については,因子分析(主因子法,プロマックス回転)し,「地域」,「家事」,「仕事」,「運動・旅行」,「若い世代との交流」「子どもとの交流」の6因子にわかれた。③についても因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行ったところ,「ロコモ的行動傾向」(足や腰などの関節や筋肉に痛みや具合の悪さがある等),「認知症的行動傾向」(何よりもまず,物忘れが気になる等),「フレイル的行動傾向」(健康状態がよくない等),「抑うつ的行動傾向」(何かというと落ち込んでしまう等)の4因子に分かれた。(2018,北原・蓮見)
2.高齢者の生活とまなびの実態が「加齢に伴い現れやすい行動傾向」に及ぼす影響について
高齢者の生活が高齢者の現れやすい行動にどのように影響するかを検討するために,各尺度の
下位尺度得点を計算し,共分散分析を行った。さまざまなモデルを検討した結果,①普段の生活のようすの下位因子「運動・旅行」を取り出したモデルが最も当てはまりがよく,「運動・旅行」から「ロコモ行動傾向」への負のパス,「精神的健康快活」から「抑うつ行動傾向」「フレイル行動傾向」への負のパスがみられた。最終的に採用された参加者全体でのモデルはFigure1の通りであった。
年齢別に見たところ,65-69歳では,「運動・旅行」,「精神的健康快活」から有意なパスは見られなかったが,「若い世代との交流」から「認知症的行動傾向」への負のパスがみられた。
①の普段の生活に関連する質問項目で,ロコモ的行動傾向に有意に正のパスであったのは「家事一般をする」,フレイル的行動傾向に有意に正のパスがあったのは「洗濯をする」であった。さらに,②高齢期に見舞われやすい4つ行動傾向項目の得点を合計し「老化得点」としたところ,老化得点への正のパスがあったのは調査協力者が75歳以上の群で「耳が遠くなったような気がする」「病院・医院に行く」,負のパスがあったのは「旅行に行く」「子どもの居場所に顔を出す」であった。
考 察
日々の運動習慣があること,健康で快活な精神状態を保つこと,若い世代と交流すること,主体的な学びを行うことが,高齢期の人々にとって,また,さらに高齢になった時にも,健康で充実した生活を送ることに繋がることが示唆された。今回の結果より,75歳を境に,ロコモ的行動傾向,抑うつ的行動傾向,フレイル的行動傾向,認知症的行動傾向が漸進的に,連鎖的に起こりがちとなるので,前期高齢期からの生活を見直し,健康で快活な精神状態,および身体状態を保っていけるように,自己管理することが求められよう。
高齢期は個人差が大きいものの,加齢に伴い様々な機能が退行し,ロコモ,認知症,フレイル,抑うつなどに見舞わることが多くなる。そういった行動傾向を軽減し,健康で快活な生活を営むには高齢者はどのような生活をしたらよいのか,まなびがどのように関与しているのか,検討する。
方 法
高齢者の生活に関する質問項目を作成し,調査会社(クロス・マーケティング社)に依頼して,2017年10月にWeb調査を実施した。
調査対象者:65歳~(男性78名,女性29名,計107名)70歳~(男性79名,女性26名,計105名),75歳~(男性85名,女性20名,計105名)で調査は2017年10月に実施した。質問紙:フェイス項目の他,3種類に分かれていた。①普段の日常生活のようす34項目②精神的に健康で快活な度合いに関する質問7項目③加齢に伴い現れやすい疾病や行動の傾向に関する質問23項目。
①は,普段平均してどのくらいするかを(1.ほとんどしない)(2.3ヵ月に1,2日)(3.月に1,2日)(4.週に1,2日)(5.週に3,4日)(6.ほとんど毎日)の6段階で,②,③については,あてはまりの程度を(1.当てはまらない)(2.あまり当てはまらない)(3.どちらともいえない)(4.だいたい当てはまる)(5.当てはまる)の5段階で回答してもらった。
結 果
1.高齢者の生活とまなびの構造
①については,因子分析(主因子法,プロマックス回転)し,「地域」,「家事」,「仕事」,「運動・旅行」,「若い世代との交流」「子どもとの交流」の6因子にわかれた。③についても因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行ったところ,「ロコモ的行動傾向」(足や腰などの関節や筋肉に痛みや具合の悪さがある等),「認知症的行動傾向」(何よりもまず,物忘れが気になる等),「フレイル的行動傾向」(健康状態がよくない等),「抑うつ的行動傾向」(何かというと落ち込んでしまう等)の4因子に分かれた。(2018,北原・蓮見)
2.高齢者の生活とまなびの実態が「加齢に伴い現れやすい行動傾向」に及ぼす影響について
高齢者の生活が高齢者の現れやすい行動にどのように影響するかを検討するために,各尺度の
下位尺度得点を計算し,共分散分析を行った。さまざまなモデルを検討した結果,①普段の生活のようすの下位因子「運動・旅行」を取り出したモデルが最も当てはまりがよく,「運動・旅行」から「ロコモ行動傾向」への負のパス,「精神的健康快活」から「抑うつ行動傾向」「フレイル行動傾向」への負のパスがみられた。最終的に採用された参加者全体でのモデルはFigure1の通りであった。
年齢別に見たところ,65-69歳では,「運動・旅行」,「精神的健康快活」から有意なパスは見られなかったが,「若い世代との交流」から「認知症的行動傾向」への負のパスがみられた。
①の普段の生活に関連する質問項目で,ロコモ的行動傾向に有意に正のパスであったのは「家事一般をする」,フレイル的行動傾向に有意に正のパスがあったのは「洗濯をする」であった。さらに,②高齢期に見舞われやすい4つ行動傾向項目の得点を合計し「老化得点」としたところ,老化得点への正のパスがあったのは調査協力者が75歳以上の群で「耳が遠くなったような気がする」「病院・医院に行く」,負のパスがあったのは「旅行に行く」「子どもの居場所に顔を出す」であった。
考 察
日々の運動習慣があること,健康で快活な精神状態を保つこと,若い世代と交流すること,主体的な学びを行うことが,高齢期の人々にとって,また,さらに高齢になった時にも,健康で充実した生活を送ることに繋がることが示唆された。今回の結果より,75歳を境に,ロコモ的行動傾向,抑うつ的行動傾向,フレイル的行動傾向,認知症的行動傾向が漸進的に,連鎖的に起こりがちとなるので,前期高齢期からの生活を見直し,健康で快活な精神状態,および身体状態を保っていけるように,自己管理することが求められよう。