[PH20] 学習者の知識・技術の修得状況に関する自己認知とモチベーションの関係
プログラミング入門教育における検討
キーワード:モチベーション, プログラミング入門教育, 自己認知
目 的
大学におけるプログラミング入門教育の手法として,学習者のモチベーションを高める教育システムSIEM( Systematical Information Education Method )を構築して実践している。本システムは,セメスター内での前期・中期・後期の3回,学習者のモチベーションをモニタリングし,得られたデータを用いて学習者のモチベーションに最適化した授業展開へフィードバックする手法である。本研究では,学習者の知識・技術の修得状況に関する自己認知(現状認知度)と,実際のモチベーションの変化の関係性を調査分析し検討した。
方 法
モチベーションのモニタリングで使用するSIEMアセスメント尺度の評価項目をTable 1に示す。前期は授業開始初期のため,モチベーション評価項目のみ,中期・後期では全評価項目をモニタリングする。各評価項目は5件法で評価する。
モチベーションの変化は,期待度と重要度の積で算出している1)。
今回の調査分析対象は,共通教育「情報」の授業科目「コンピュータプログラミングⅠ」の受講学生とした。有効回答人数は,前期193名,中期137名,後期91名であった。
結果と考察
前期・中期・後期の結果をTable 2に示す。
前期,現状認知度とモチベーションには,弱いながら有意な正の相関(r=0.35,p<0.01)が認められた。中期,現状認知度とモチベーションには有意な正の相関(r=0.55,p<0.01)が認められ,期待度との相関(r=0.66)が高いことが分かった。また,授業構成因子(r=0.68),自発性因子(r=0.65),双方向性因子(r=0.53),参加性因子(r=0.62)ともに有意な正の相関が認められた。特に好奇心喚起度と参加積極度の相関係数はr>0.61であった。後期,現状認知度とモチベーションには有意な正の相関関係(r=0.68,p<0.01)が認められた。後期では現状認知度と重要度との相関(重要度r=0.68)が高くなっている。後期現状認知度と授業構成因子(r=0.70),自発性因子(r=0.74),双方向性因子(r=0.53),参加性因子(r=0.55)ともに有意な相関が認められた。特に将来への有用度と自己コントロール度の相関係数はr>0.68であった。
現状認知度には学習モチベーションとの正の相関があり,中期ではもっと知識や技術を高めたいという期待感や積極的な授業参加態度と,後期では学習の重要性や将来に役立つという意識との繋がりが示唆された。アクティブ・ラーニング等により,学習者に自己の知識や技術の修得を実感させる工夫が肝要であることが看取された。
参考文献
1)Keller,J.M. (2009).Motivational Design for Learning and Performance:The ARCS Model Approach,Springer US.
大学におけるプログラミング入門教育の手法として,学習者のモチベーションを高める教育システムSIEM( Systematical Information Education Method )を構築して実践している。本システムは,セメスター内での前期・中期・後期の3回,学習者のモチベーションをモニタリングし,得られたデータを用いて学習者のモチベーションに最適化した授業展開へフィードバックする手法である。本研究では,学習者の知識・技術の修得状況に関する自己認知(現状認知度)と,実際のモチベーションの変化の関係性を調査分析し検討した。
方 法
モチベーションのモニタリングで使用するSIEMアセスメント尺度の評価項目をTable 1に示す。前期は授業開始初期のため,モチベーション評価項目のみ,中期・後期では全評価項目をモニタリングする。各評価項目は5件法で評価する。
モチベーションの変化は,期待度と重要度の積で算出している1)。
今回の調査分析対象は,共通教育「情報」の授業科目「コンピュータプログラミングⅠ」の受講学生とした。有効回答人数は,前期193名,中期137名,後期91名であった。
結果と考察
前期・中期・後期の結果をTable 2に示す。
前期,現状認知度とモチベーションには,弱いながら有意な正の相関(r=0.35,p<0.01)が認められた。中期,現状認知度とモチベーションには有意な正の相関(r=0.55,p<0.01)が認められ,期待度との相関(r=0.66)が高いことが分かった。また,授業構成因子(r=0.68),自発性因子(r=0.65),双方向性因子(r=0.53),参加性因子(r=0.62)ともに有意な正の相関が認められた。特に好奇心喚起度と参加積極度の相関係数はr>0.61であった。後期,現状認知度とモチベーションには有意な正の相関関係(r=0.68,p<0.01)が認められた。後期では現状認知度と重要度との相関(重要度r=0.68)が高くなっている。後期現状認知度と授業構成因子(r=0.70),自発性因子(r=0.74),双方向性因子(r=0.53),参加性因子(r=0.55)ともに有意な相関が認められた。特に将来への有用度と自己コントロール度の相関係数はr>0.68であった。
現状認知度には学習モチベーションとの正の相関があり,中期ではもっと知識や技術を高めたいという期待感や積極的な授業参加態度と,後期では学習の重要性や将来に役立つという意識との繋がりが示唆された。アクティブ・ラーニング等により,学習者に自己の知識や技術の修得を実感させる工夫が肝要であることが看取された。
参考文献
1)Keller,J.M. (2009).Motivational Design for Learning and Performance:The ARCS Model Approach,Springer US.