[PH34] 学習内容の理解を促す小グループによる文章作成活動の効果
キーワード:協同学習, 文章作成, 協同作業認識尺度
問題と目的
小グループ内でメンバーが相互に出し合ったキーワードを使い文章を作成する「キーワードまとめ」は協同学習の技法の一つで,生徒の理解力を育成するために有効な文章作成活動と考えられる。しかしながら,その効果は検証されていない。本研究では,この学習方法を1年間実施し,作成された文章の分析により,生徒個々の学習内容の理解力の変化を検討する。また,文章作成内容の分析に加え,この技法が効果的な生徒と協同作業に対する認識や姿勢のタイプとの関連について,協同作業認識尺度(長濱・安永・関田・甲原,2009)の互恵懸念因子および個人志向因子を用いて検討する。
方 法
参加者 C中学校の1~3年生39名がこの授業に参加した。
実施時期 2015年4月から2016年3月まで,理科の授業における各学習課題や実験や観察の終了後,各学年10回程度実施した。
手続き (1)授業者は「キーワードまとめ」を行う意図,テーマ,方法,ルールを生徒に口頭で説明した。(2)生徒はテーマに沿って作文を行うために必要なキーワードをワークシートに1つ記入した。(3)生徒はワークシートを小グループ内で回覧し,グループメンバーに1つずつキーワードを加えてもらい,合計3~4つのキーワードを得た。(4)生徒は全てのキーワードを使用し,テーマに沿って6~10分間の制限時間内で文章作成を行った。(5)文章作成終了後,生徒はグループ内で回し読みを行い,相互評価を行った。(6)生徒は必要に応じて自分の作文に修正を加えたのち,授業者が最終評価を行った。
結果と考察
分析方法 Table 1に示すような文章評価表により文章の質を実施した。文章評価表の作成は,山川・藤木(2014)により提案された文章理解から文
章産出に至る過程のモデル,岸・綿井(1997)や崎濱(2013)による文章の評価の観点を参考にした。階層のレベル1は形式的な表現が適切か,レベル2は意味理解のある文章作成であるか,レベル3は既有の知識を統合した文章であるかを表している。類型の単語はキーワードを含めテーマに関連する語が使用されているか,文は1文についての文法構造が適切か,文章は文の数や文脈が適切か,修辞的とは文章の読みやすさに工夫があるかという観点で,各階層・類型で2~6個の評価項目を設定した。各評価項目に該当する個数を文章作成得点とし,1年間の前半と後半の各5回の得点を平均した。そして,前半に比べて後半の得点が高い場合は「上昇」,低い場合は「下降」,同じ場合は「変化なし」と分類した。
また,生徒のタイプを分類するために,協同作業認識尺度(長濱ら,2009)の互恵懸念因子と個人志向因子を用いた。各因子得点を低群(L),中間群(M),高群(H)に分け,例えば互恵懸念因子が低群,個人志向因子が高群の場合の生徒はタイプを(LH)と表す。このように分類した生徒のタイプ別の文章作成得点変化とその人数をTable 2に整理した。
文章作成の得点変化 Table 2を見ると,「上昇」した生徒の人数は「変化なし」や「下降」した人数よりも多い傾向にある。1年間の前半と後半の文章作成得点を比較すると階層のレベル1と2,類型の文と文章と修辞的で後半の得点が有意に高く,生徒の学習内容の理解を高めるためにこの技法は効果的であると考えられる。次に,生徒のタイプ別にみると,互恵懸念因子得点が低群で個人志向因子得点が低群または中間群(LL,LM)の「上昇」する人数の割合が多い傾向にある。協同作業により参加者全員が平等に利益を得ることが難しいという認識を示す互恵懸念と一人で作業をすることを好む個人志向がそれぞれ高くない生徒は,他者から学ぼうという柔軟な思考が強く,この技法による学習効果が高くなっている可能性がある。
小グループ内でメンバーが相互に出し合ったキーワードを使い文章を作成する「キーワードまとめ」は協同学習の技法の一つで,生徒の理解力を育成するために有効な文章作成活動と考えられる。しかしながら,その効果は検証されていない。本研究では,この学習方法を1年間実施し,作成された文章の分析により,生徒個々の学習内容の理解力の変化を検討する。また,文章作成内容の分析に加え,この技法が効果的な生徒と協同作業に対する認識や姿勢のタイプとの関連について,協同作業認識尺度(長濱・安永・関田・甲原,2009)の互恵懸念因子および個人志向因子を用いて検討する。
方 法
参加者 C中学校の1~3年生39名がこの授業に参加した。
実施時期 2015年4月から2016年3月まで,理科の授業における各学習課題や実験や観察の終了後,各学年10回程度実施した。
手続き (1)授業者は「キーワードまとめ」を行う意図,テーマ,方法,ルールを生徒に口頭で説明した。(2)生徒はテーマに沿って作文を行うために必要なキーワードをワークシートに1つ記入した。(3)生徒はワークシートを小グループ内で回覧し,グループメンバーに1つずつキーワードを加えてもらい,合計3~4つのキーワードを得た。(4)生徒は全てのキーワードを使用し,テーマに沿って6~10分間の制限時間内で文章作成を行った。(5)文章作成終了後,生徒はグループ内で回し読みを行い,相互評価を行った。(6)生徒は必要に応じて自分の作文に修正を加えたのち,授業者が最終評価を行った。
結果と考察
分析方法 Table 1に示すような文章評価表により文章の質を実施した。文章評価表の作成は,山川・藤木(2014)により提案された文章理解から文
章産出に至る過程のモデル,岸・綿井(1997)や崎濱(2013)による文章の評価の観点を参考にした。階層のレベル1は形式的な表現が適切か,レベル2は意味理解のある文章作成であるか,レベル3は既有の知識を統合した文章であるかを表している。類型の単語はキーワードを含めテーマに関連する語が使用されているか,文は1文についての文法構造が適切か,文章は文の数や文脈が適切か,修辞的とは文章の読みやすさに工夫があるかという観点で,各階層・類型で2~6個の評価項目を設定した。各評価項目に該当する個数を文章作成得点とし,1年間の前半と後半の各5回の得点を平均した。そして,前半に比べて後半の得点が高い場合は「上昇」,低い場合は「下降」,同じ場合は「変化なし」と分類した。
また,生徒のタイプを分類するために,協同作業認識尺度(長濱ら,2009)の互恵懸念因子と個人志向因子を用いた。各因子得点を低群(L),中間群(M),高群(H)に分け,例えば互恵懸念因子が低群,個人志向因子が高群の場合の生徒はタイプを(LH)と表す。このように分類した生徒のタイプ別の文章作成得点変化とその人数をTable 2に整理した。
文章作成の得点変化 Table 2を見ると,「上昇」した生徒の人数は「変化なし」や「下降」した人数よりも多い傾向にある。1年間の前半と後半の文章作成得点を比較すると階層のレベル1と2,類型の文と文章と修辞的で後半の得点が有意に高く,生徒の学習内容の理解を高めるためにこの技法は効果的であると考えられる。次に,生徒のタイプ別にみると,互恵懸念因子得点が低群で個人志向因子得点が低群または中間群(LL,LM)の「上昇」する人数の割合が多い傾向にある。協同作業により参加者全員が平等に利益を得ることが難しいという認識を示す互恵懸念と一人で作業をすることを好む個人志向がそれぞれ高くない生徒は,他者から学ぼうという柔軟な思考が強く,この技法による学習効果が高くなっている可能性がある。