[PH39] 教員養成学部生における教職の過酷さ認知が志望意識に及ぼす影響
教育参加体験の印象と志望度の関連に対する調整機能
Keywords:大学生, 教職志望, 職業選択
問題と目的
教師の労働の過酷さは永年問題視されてきたが,近年の情勢や政策を背景に,注目を浴びている。教員養成学部の学生にも,そうした過酷さを理由に教職を志望しない学生が見られる。
他方教職は,実習等で自身の適合性を吟味できる職業で,教育実習の志望意識への影響は数多く研究されてきた。しかし,教職を過酷な仕事とみるかどうかで,実習等の教育参加体験が志望意識に及ぼす影響も異なるという,調整変数の機能は未検討であり,本研究はそれを明らかにする。
方 法
1. 調査の概要
調査は質問紙法で行った。国立大学教員養成学部の4年生209名(うち女性は104名)から即日回収の形で回答を得た。調査期間は2018年1月25日から2月14日であった。
2. 調査の内容
教職の過酷さ認知の測定は,自作の4項目に,「4.何度も感じた」~「1.感じたことはない」の4件法で評定させた。
教育参加体験は,教育実習参加の質問項目を参考に自作した13項目に「5.あてはまる」~「1.あてはまらない」の5件法で回答させた。
教職(保育士含む)の志望度は4年次4月を想起させ,「4.ぜひ目指そうと思った」~「1.目指そうと思っていなかった」の4件法で評定させた。
結 果
1. 得点化と群分け
教職の過酷さ認知を主成分分析したところ2項目が除外され,「予想される仕事の多さや忙しさは我慢しがたい」「伴う責任の重さは耐えがたい」からなるα=.732の成分を得た。
教育参加体験の設問は,想定された下位尺度ごとに主成分分析を行い,「コミュニケーション達成」(3項目; α=.706),「指導での達成」(3項目;α=.673),「モデルとの出会い」(4項目;α=.787),「親和性認知」(3項目; α=.747)の4下位尺度とその成分得点を得た。
それぞれの成分得点を利用して,人数ができるだけ等しくなるように3群に分けた。この群を利用して「過酷さ認知」×「参加体験」で2要因の分散分析を行った結果を次項に示す。
2. 分散分析
まず「コミュニケーション達成」については,主効果が有意(F(2,206)=5.9 p<.01)で,過酷さの認知の主効果も有意(F(2,206)=12.2 p<.001)であったが,交互作用も有意(F(4,206)=3.0 p<.05)であった。過酷さ認知High群は,達成経験が志望度の強さに結びつかない。過酷さ認知Low群では,達成経験Low群で志望度が低い傾向が見られた。
続いて「指導での達成」では,主効果は過酷さ認知のみ有意(F(2,206)=11.2 p<.001)だが,交互作用も有意(F(4,206)=3.1 p<.05)であった。過酷さ認知High群では達成による志望度の変化は見られない。過酷さ認知Low群では達成の程度が異なっても志望度に違いは見られない。
次に「モデルとの出会い」では,過酷さ認知の主効果が有意と判定された(F(2,205)=10.5 p<.001)のみであった。図をみると,過酷さを強く認知している人はモデルと出会えなかった人ほど志望度が低い傾向が読み取れる。
最後に「親和性認知」については主効果が有意(F(2,205)=11.8 p<.001)で,過酷さ認知の主効果も有意(F(2,205)=6.8 p<.01)であった。過酷さ認知Low群では親和性認知に志望度が左右されない傾向が読み取れる。
考 察
達成経験が教職志望度と示す関連に対して,過酷さの認知が調整変数の機能を果たすことが一部で確認された。また同変数が一貫して主効果を示したことも,その重大さを示すものと言える。
付 記
本研究は科学研究費補助金(課題番号 26380880)の支援を受けています。
教師の労働の過酷さは永年問題視されてきたが,近年の情勢や政策を背景に,注目を浴びている。教員養成学部の学生にも,そうした過酷さを理由に教職を志望しない学生が見られる。
他方教職は,実習等で自身の適合性を吟味できる職業で,教育実習の志望意識への影響は数多く研究されてきた。しかし,教職を過酷な仕事とみるかどうかで,実習等の教育参加体験が志望意識に及ぼす影響も異なるという,調整変数の機能は未検討であり,本研究はそれを明らかにする。
方 法
1. 調査の概要
調査は質問紙法で行った。国立大学教員養成学部の4年生209名(うち女性は104名)から即日回収の形で回答を得た。調査期間は2018年1月25日から2月14日であった。
2. 調査の内容
教職の過酷さ認知の測定は,自作の4項目に,「4.何度も感じた」~「1.感じたことはない」の4件法で評定させた。
教育参加体験は,教育実習参加の質問項目を参考に自作した13項目に「5.あてはまる」~「1.あてはまらない」の5件法で回答させた。
教職(保育士含む)の志望度は4年次4月を想起させ,「4.ぜひ目指そうと思った」~「1.目指そうと思っていなかった」の4件法で評定させた。
結 果
1. 得点化と群分け
教職の過酷さ認知を主成分分析したところ2項目が除外され,「予想される仕事の多さや忙しさは我慢しがたい」「伴う責任の重さは耐えがたい」からなるα=.732の成分を得た。
教育参加体験の設問は,想定された下位尺度ごとに主成分分析を行い,「コミュニケーション達成」(3項目; α=.706),「指導での達成」(3項目;α=.673),「モデルとの出会い」(4項目;α=.787),「親和性認知」(3項目; α=.747)の4下位尺度とその成分得点を得た。
それぞれの成分得点を利用して,人数ができるだけ等しくなるように3群に分けた。この群を利用して「過酷さ認知」×「参加体験」で2要因の分散分析を行った結果を次項に示す。
2. 分散分析
まず「コミュニケーション達成」については,主効果が有意(F(2,206)=5.9 p<.01)で,過酷さの認知の主効果も有意(F(2,206)=12.2 p<.001)であったが,交互作用も有意(F(4,206)=3.0 p<.05)であった。過酷さ認知High群は,達成経験が志望度の強さに結びつかない。過酷さ認知Low群では,達成経験Low群で志望度が低い傾向が見られた。
続いて「指導での達成」では,主効果は過酷さ認知のみ有意(F(2,206)=11.2 p<.001)だが,交互作用も有意(F(4,206)=3.1 p<.05)であった。過酷さ認知High群では達成による志望度の変化は見られない。過酷さ認知Low群では達成の程度が異なっても志望度に違いは見られない。
次に「モデルとの出会い」では,過酷さ認知の主効果が有意と判定された(F(2,205)=10.5 p<.001)のみであった。図をみると,過酷さを強く認知している人はモデルと出会えなかった人ほど志望度が低い傾向が読み取れる。
最後に「親和性認知」については主効果が有意(F(2,205)=11.8 p<.001)で,過酷さ認知の主効果も有意(F(2,205)=6.8 p<.01)であった。過酷さ認知Low群では親和性認知に志望度が左右されない傾向が読み取れる。
考 察
達成経験が教職志望度と示す関連に対して,過酷さの認知が調整変数の機能を果たすことが一部で確認された。また同変数が一貫して主効果を示したことも,その重大さを示すものと言える。
付 記
本研究は科学研究費補助金(課題番号 26380880)の支援を受けています。