[PH40] 就職活動における複数の目標追求と成果の関連
キーワード:自己制御, 目標, 情報探索方略
目 的
自己制御を就職活動に適用した研究群では,上位目標に「就職目標」,下位の行動目標に「就職活動目標(以下,就活目標)」の2種を見出し(Saks, 2005),追求すべき目標の設定とそれに基づく活動戦略採用が就職活動の質を高めるとする(Van Hooft, Wanberg, & van Hoye, 2013)。しかし他方で,あまりに多くの目標を同時追求することで効率的な活動は阻害されうる。すなわち一種の目標の立てすぎで活動が非効率となる場合である。
このような場合,上位目標と下位目標を関連づけるという目標の構造化が有効となる。上位の目標に照らして優先順位をつけた下位目標は,達成と満足,活動全体を統制している感覚をもたらすことで,上位の目標達成に向けた進行をより順調にするためである(Bandura, 1991)。
本調査では4時点の縦断調査を行い,個人の目標構造と活動戦略,成果との関連を検討することを目的とする。
仮説:志望が明瞭でなく,同時に多数の就活目標を重視する場合,場当たり型戦略を採用し,成果が得られない。
方 法
調査協力者 関東圏内の私立大学2校に通う就職活動中の大学3年生110名(調査期間中に4年生へ進学)のうち,全4回の調査に参加し,回答に不備のなかった78名を分析対象とした(男性53名,女性25名;平均年齢21.3歳,SD=0.8)。
調査時期と手続き 心理学講義受講者に調査協力の依頼をし,同意を得られた学生にWeb上での回答を依頼した。計4回の調査(T1:2016年3月下旬~5月,T2:6月下旬~7月,T3:8月下旬~9月,T4:10月下旬~12月)に,参加者が自身のPCもしくはスマートフォンを利用して回答した。
調査内容 (1)就職目標:下村(1999)の職業レディネス「明瞭性」5項目,5件法。(2)就活目標:小菅(2015)の8つの目標の平均を算出,平均以上を「1(重視)」,以下を「0(非重視)」とし,得点の総和から「目標追求数」を作成(範囲:0-8)。(3)情報探索戦略:Stevens & Turban(2001)の計16項目を邦訳し使用,5件法。(4)内定獲得数。
結 果
各調査時点での内定状況はTable1に示した。本稿では内定獲得者と未内定者が約半数ずつのT2に着目して検討を行う。
Table2に各変数間のM,SD,相関係数を示す。当該目標追求数と就職目標には負の相関(r=-.31, p<.01),場当たり型戦略に正の相関(r=.31, p<.01),内定獲得率と負の相関であった(r=-.30, p<.01)。
考 察
就活目標の追求数が多いほど,より志望が不明瞭で,場当たり型戦略を使用し,内定獲得率が低いとの結果が示されたことから,仮説を支持した。
この結果は就職目標の不明瞭さがどの就活目標を設定すべきかについて有益な情報を与えず,それが就活目標の設定しなさ(追求数の少なさ)ではなく,かえって多くの就活目標を設定させる事態を招くことを意味する。用いられた就活目標尺度は,内定獲得者が重視した行動目標を基に作成された経緯からいずれも重要と考えられ,就職活動セミナー等でもこれら全ての目標を推奨する可能性があると思われる。しかし今回,それらを同時に追求することの弊害が示されたため,追求する就活目標を吟味させる必要性が示された。
ただし,就職目標の明瞭さは追求する就活目標を絞る機能があると分かったものの,その内容の適切さについては判断しえない。今後は追求される就活目標内容が適切かも検討する必要がある。
自己制御を就職活動に適用した研究群では,上位目標に「就職目標」,下位の行動目標に「就職活動目標(以下,就活目標)」の2種を見出し(Saks, 2005),追求すべき目標の設定とそれに基づく活動戦略採用が就職活動の質を高めるとする(Van Hooft, Wanberg, & van Hoye, 2013)。しかし他方で,あまりに多くの目標を同時追求することで効率的な活動は阻害されうる。すなわち一種の目標の立てすぎで活動が非効率となる場合である。
このような場合,上位目標と下位目標を関連づけるという目標の構造化が有効となる。上位の目標に照らして優先順位をつけた下位目標は,達成と満足,活動全体を統制している感覚をもたらすことで,上位の目標達成に向けた進行をより順調にするためである(Bandura, 1991)。
本調査では4時点の縦断調査を行い,個人の目標構造と活動戦略,成果との関連を検討することを目的とする。
仮説:志望が明瞭でなく,同時に多数の就活目標を重視する場合,場当たり型戦略を採用し,成果が得られない。
方 法
調査協力者 関東圏内の私立大学2校に通う就職活動中の大学3年生110名(調査期間中に4年生へ進学)のうち,全4回の調査に参加し,回答に不備のなかった78名を分析対象とした(男性53名,女性25名;平均年齢21.3歳,SD=0.8)。
調査時期と手続き 心理学講義受講者に調査協力の依頼をし,同意を得られた学生にWeb上での回答を依頼した。計4回の調査(T1:2016年3月下旬~5月,T2:6月下旬~7月,T3:8月下旬~9月,T4:10月下旬~12月)に,参加者が自身のPCもしくはスマートフォンを利用して回答した。
調査内容 (1)就職目標:下村(1999)の職業レディネス「明瞭性」5項目,5件法。(2)就活目標:小菅(2015)の8つの目標の平均を算出,平均以上を「1(重視)」,以下を「0(非重視)」とし,得点の総和から「目標追求数」を作成(範囲:0-8)。(3)情報探索戦略:Stevens & Turban(2001)の計16項目を邦訳し使用,5件法。(4)内定獲得数。
結 果
各調査時点での内定状況はTable1に示した。本稿では内定獲得者と未内定者が約半数ずつのT2に着目して検討を行う。
Table2に各変数間のM,SD,相関係数を示す。当該目標追求数と就職目標には負の相関(r=-.31, p<.01),場当たり型戦略に正の相関(r=.31, p<.01),内定獲得率と負の相関であった(r=-.30, p<.01)。
考 察
就活目標の追求数が多いほど,より志望が不明瞭で,場当たり型戦略を使用し,内定獲得率が低いとの結果が示されたことから,仮説を支持した。
この結果は就職目標の不明瞭さがどの就活目標を設定すべきかについて有益な情報を与えず,それが就活目標の設定しなさ(追求数の少なさ)ではなく,かえって多くの就活目標を設定させる事態を招くことを意味する。用いられた就活目標尺度は,内定獲得者が重視した行動目標を基に作成された経緯からいずれも重要と考えられ,就職活動セミナー等でもこれら全ての目標を推奨する可能性があると思われる。しかし今回,それらを同時に追求することの弊害が示されたため,追求する就活目標を吟味させる必要性が示された。
ただし,就職目標の明瞭さは追求する就活目標を絞る機能があると分かったものの,その内容の適切さについては判断しえない。今後は追求される就活目標内容が適切かも検討する必要がある。