[PH63] 教師の認知した子どもの自尊感情の差異の検討
共起ネットワークによる自由記述の分析
Keywords:自尊感情, 教師評定, 自由記述
問題と目的
子どもの自尊感情や自己肯定感は現代の学校教育場面において注目されやすいトピックの1つである。自尊感情の高さは学業成績や対人関係,問題行動の低減などと関連することが複数の研究において報告されており,学校場面においては適応を促す上で重要な変数として扱われている。特に,日本の子どもは欧米諸国と比較した際に自尊感情が低いことが指摘されることがあり,小学校や中学校においては子どもの自尊感情を育てるための取り組みがしばしば注目されている。
子どもの自尊感情を高めるための方法としては,教師や保護者による働きかけや良好な友人関係の形成の支援,自分自身による長所の自己観察や分析等,さまざまな取り組みが提案されている。一方で,そのことによって実際に肯定的な自己概念が形成されているかどうかを周囲の大人である教師や保護者がどの程度把握できているかどうかについては,あまり検討がされていない。日常生活において教師が子どもの自尊感情をどの程度把握しているのか,そして把握できなかった場合はその原因はどこにあるのかを検討することは,教師が子どもを観察するときに留意すべき点を明らかにする上で重要であると考えられる。
そこで本研究では,小学生を対象とした質問紙調査を実施し,子ども自身が自尊感情を評価すると同時に,その結果のフィードバックを担任の教師に行ない,子どもの自尊感情と教師の認識の差異とその原因について検討する。
方 法
調査対象者 公立小学校に2校に在籍する3年生から6年生までのうち,保護者より研究の趣旨に同意が得られた児童1094名(3年生281名,4年生269名,5年生291名,6年生253名)およびその担任教師を調査対象者とした。調査は学級ごとに各担任教諭によって実施された。
調査内容 (1)自尊感情:青島(2008)で作成された「自尊感情尺度」を使用した。9項目4件法。(2)教師評定: 児童が回答した自尊感情の得点を確認し,実際に担任として関わっている日頃の印象と比べて,各児童について想定よりも高いか低いかの評価を求めた。その後,「思っていたよりも低い」「思っていたよりも高い」と評定された児童のうち,特に気になる児童について,①ずれを感じた理由,②児童の印象・特徴,③学校での様子の3点について自由記述を求めた。
結果と考察
自由記述によって,担任教師によって特に低い自尊感情の見逃しを考えられる理由を集約した結果,68件の自由記述が得られた。これらの自由記述について,比較的客観的に全体的な傾向を把握するために本研究ではKH Coder(樋口, 2014)を用いたテキストマイニングを行なった。
具体的には,まずテキストから自動的に語を取り出し,頻出語を確認した。その後それらの語の共起関係を探ることを通して,分析・要約を試みた(Figure1)。
その結果,子どもの自尊感情に対する教員からの評価視点のズレについて,ある程度の類型化が可能であることが示唆された。友人と仲良く協力して活動に取り組むことができたり,仕事にまじめに取り組んでいるにも関わらず,自尊感情が低い子どもの場合はそのことが見逃されるケースが存在すると考えられる。遊びの様子や対人関係から自尊感情の高さを推測する場合は,そのほかの要因にも留意することが望まれる。
子どもの自尊感情や自己肯定感は現代の学校教育場面において注目されやすいトピックの1つである。自尊感情の高さは学業成績や対人関係,問題行動の低減などと関連することが複数の研究において報告されており,学校場面においては適応を促す上で重要な変数として扱われている。特に,日本の子どもは欧米諸国と比較した際に自尊感情が低いことが指摘されることがあり,小学校や中学校においては子どもの自尊感情を育てるための取り組みがしばしば注目されている。
子どもの自尊感情を高めるための方法としては,教師や保護者による働きかけや良好な友人関係の形成の支援,自分自身による長所の自己観察や分析等,さまざまな取り組みが提案されている。一方で,そのことによって実際に肯定的な自己概念が形成されているかどうかを周囲の大人である教師や保護者がどの程度把握できているかどうかについては,あまり検討がされていない。日常生活において教師が子どもの自尊感情をどの程度把握しているのか,そして把握できなかった場合はその原因はどこにあるのかを検討することは,教師が子どもを観察するときに留意すべき点を明らかにする上で重要であると考えられる。
そこで本研究では,小学生を対象とした質問紙調査を実施し,子ども自身が自尊感情を評価すると同時に,その結果のフィードバックを担任の教師に行ない,子どもの自尊感情と教師の認識の差異とその原因について検討する。
方 法
調査対象者 公立小学校に2校に在籍する3年生から6年生までのうち,保護者より研究の趣旨に同意が得られた児童1094名(3年生281名,4年生269名,5年生291名,6年生253名)およびその担任教師を調査対象者とした。調査は学級ごとに各担任教諭によって実施された。
調査内容 (1)自尊感情:青島(2008)で作成された「自尊感情尺度」を使用した。9項目4件法。(2)教師評定: 児童が回答した自尊感情の得点を確認し,実際に担任として関わっている日頃の印象と比べて,各児童について想定よりも高いか低いかの評価を求めた。その後,「思っていたよりも低い」「思っていたよりも高い」と評定された児童のうち,特に気になる児童について,①ずれを感じた理由,②児童の印象・特徴,③学校での様子の3点について自由記述を求めた。
結果と考察
自由記述によって,担任教師によって特に低い自尊感情の見逃しを考えられる理由を集約した結果,68件の自由記述が得られた。これらの自由記述について,比較的客観的に全体的な傾向を把握するために本研究ではKH Coder(樋口, 2014)を用いたテキストマイニングを行なった。
具体的には,まずテキストから自動的に語を取り出し,頻出語を確認した。その後それらの語の共起関係を探ることを通して,分析・要約を試みた(Figure1)。
その結果,子どもの自尊感情に対する教員からの評価視点のズレについて,ある程度の類型化が可能であることが示唆された。友人と仲良く協力して活動に取り組むことができたり,仕事にまじめに取り組んでいるにも関わらず,自尊感情が低い子どもの場合はそのことが見逃されるケースが存在すると考えられる。遊びの様子や対人関係から自尊感情の高さを推測する場合は,そのほかの要因にも留意することが望まれる。