[PA04] 父親の育児関与と乳児とのアイコンタクト率との関連
離乳食場面を通して
Keywords:父親、離乳食、アイコンタクト
問題と目的
父親の育児参加が叫ばれて久しいが,未だに育児の主な担い手は母親であり,0歳6か月~ 1歳5か月齢の子どもを持つ父母を対象としたベネッセ(2017)の調査によれば,平日の母親の育児関与は10時間以上が7割を超えるのに対し,父親は平日2時間未満が7割近い。しかし,休日における父親の関与は個人差が大きく,15%程度が2時間未満である一方で,10%程度が15時間以上関与し,2~4時間未満,4~6時間未満,6~10時間未満がそれぞれ20%程度を占める。休日のみではあるが,父親の子どもへの関与の差は,父親の育児行動への慣れ・ゆとりの差をもたらすのではないだろうか。ことに,母親が最も困難を抱えている離乳食・幼児食の与え方(ベネッセ, 2017)に関しては,父親のこれまでの育児関与度合いで差が生じることが予測される。
そこで,本研究では,離乳食場面における父親の行動に着目して,父親の育児関与の度合いとの関連性を検討する。離乳食場面と一口に言っても,そこでは様々な親の行動が見られる。本研究では,父子のアイコンタクト率に着目する。なぜなら,初期のアイコンタクトは,その後の相手の意図を理解しようとする基盤となること(小嶋,1971),アイコンタクトは共同注意の発達に必須であり,共同注意を介して乳児の言語能力と相関すること(Dawson, et al., 2004),アイコンタクトの障害の程度が共同注意の減少や言語発達の障害と相関すること(Leekam & Ramsden, 2006)が報告されているためである。
方 法
(1)協力者:関東圏在住で離乳食開始期~生後10 ヵ月の乳児を持ち,父子の顔が明瞭に映っている13組。対象児;8.46ヵ月(6~10 ヵ月),男児7 名,女児6 名,第1子10名,第2子3名。父親の年代;20代2名,30 代9 名,40 代2名。(2)調査期間:2015 年4 月25 日~2018 年9 月1 日。(3)調査手続き:調査者1 名が家庭訪問。父親が子どもに離乳食を与えている場面を調査者がビデオ撮影(映像データは後日分析)。撮影については,父親と対象児の2 人の場面とする,食事終了は親に任せ,時間の制限を設けない等の条件を提示した。(4)分析:第一著者と第二著者が行動コーディングシステム(BECO2/DKH)を用い,父子がアイコンタクトしている時間を測定した。13組中3組を独立にコーディングし,カッパー係数を算出したところ,平均はk=.82(.71~.88)であり,高い一致率が認められたため,残りの10家庭はそれぞれコーディングを行った。映像時間は平均14 分35秒(5 分40 秒~30分56秒)であった。(5)父親の育児関与:平日および休日に対象児に関わる時間,これまで対象児に行ったことのある育児行動12項目(離乳食作り,離乳食を与える,ミルク作り,授乳,着替え,おむつ替え,遊び,あやし,入浴,寝かしつけ,看病,病院受診)から複数選択。
結 果
父子のアイコンタクト率(アイコンタクト時間/食事時間)を算出したところ,平均アイコンタクト率は.0394(SD=.0362)(.0004~.1214)であった。また,父親の育児関与について,平日の関与時間の平均は1時間13分(SD=1.03)(18分~4時間),休日の平均は7時間32分(SD=4.58)(1~17時間)であった。育児行動の有無については,図1の通りで,12項目中の平均経験数は9.15項目(SD=1.463)(6~12項目)あった。
アイコンタクト率と平日の関与時間・休日の関与時間・育児行動数の相関を求めたところ,それぞれ,r=-.221, n.s.,r=.344, n.s.,r=.419, n.s.であった。いずれも有意ではなかったが,相関係数の大きさから,アイコンタクト率と休日の関与時間や育児行動数とはある程度の相関があると解釈できる。
考 察
先述の通り,平日の育児関与時間は就業状況に左右されるが,休日は父親の育児参加意思に左右される。父親が休日可能な限り育児に関与し,多種の育児行動に参与することで,育児に慣れ,子どもとアイコンタクトを取りながらのゆとりある食事が可能になると推測される。今後,ケース数を増やし,分析を継続する予定である。
付 記
本研究の実施にあたっては,科学研究費(基盤研究(C)(一般)課題番号 17K04366 研究代表者:福田佳織)を受けた。
父親の育児参加が叫ばれて久しいが,未だに育児の主な担い手は母親であり,0歳6か月~ 1歳5か月齢の子どもを持つ父母を対象としたベネッセ(2017)の調査によれば,平日の母親の育児関与は10時間以上が7割を超えるのに対し,父親は平日2時間未満が7割近い。しかし,休日における父親の関与は個人差が大きく,15%程度が2時間未満である一方で,10%程度が15時間以上関与し,2~4時間未満,4~6時間未満,6~10時間未満がそれぞれ20%程度を占める。休日のみではあるが,父親の子どもへの関与の差は,父親の育児行動への慣れ・ゆとりの差をもたらすのではないだろうか。ことに,母親が最も困難を抱えている離乳食・幼児食の与え方(ベネッセ, 2017)に関しては,父親のこれまでの育児関与度合いで差が生じることが予測される。
そこで,本研究では,離乳食場面における父親の行動に着目して,父親の育児関与の度合いとの関連性を検討する。離乳食場面と一口に言っても,そこでは様々な親の行動が見られる。本研究では,父子のアイコンタクト率に着目する。なぜなら,初期のアイコンタクトは,その後の相手の意図を理解しようとする基盤となること(小嶋,1971),アイコンタクトは共同注意の発達に必須であり,共同注意を介して乳児の言語能力と相関すること(Dawson, et al., 2004),アイコンタクトの障害の程度が共同注意の減少や言語発達の障害と相関すること(Leekam & Ramsden, 2006)が報告されているためである。
方 法
(1)協力者:関東圏在住で離乳食開始期~生後10 ヵ月の乳児を持ち,父子の顔が明瞭に映っている13組。対象児;8.46ヵ月(6~10 ヵ月),男児7 名,女児6 名,第1子10名,第2子3名。父親の年代;20代2名,30 代9 名,40 代2名。(2)調査期間:2015 年4 月25 日~2018 年9 月1 日。(3)調査手続き:調査者1 名が家庭訪問。父親が子どもに離乳食を与えている場面を調査者がビデオ撮影(映像データは後日分析)。撮影については,父親と対象児の2 人の場面とする,食事終了は親に任せ,時間の制限を設けない等の条件を提示した。(4)分析:第一著者と第二著者が行動コーディングシステム(BECO2/DKH)を用い,父子がアイコンタクトしている時間を測定した。13組中3組を独立にコーディングし,カッパー係数を算出したところ,平均はk=.82(.71~.88)であり,高い一致率が認められたため,残りの10家庭はそれぞれコーディングを行った。映像時間は平均14 分35秒(5 分40 秒~30分56秒)であった。(5)父親の育児関与:平日および休日に対象児に関わる時間,これまで対象児に行ったことのある育児行動12項目(離乳食作り,離乳食を与える,ミルク作り,授乳,着替え,おむつ替え,遊び,あやし,入浴,寝かしつけ,看病,病院受診)から複数選択。
結 果
父子のアイコンタクト率(アイコンタクト時間/食事時間)を算出したところ,平均アイコンタクト率は.0394(SD=.0362)(.0004~.1214)であった。また,父親の育児関与について,平日の関与時間の平均は1時間13分(SD=1.03)(18分~4時間),休日の平均は7時間32分(SD=4.58)(1~17時間)であった。育児行動の有無については,図1の通りで,12項目中の平均経験数は9.15項目(SD=1.463)(6~12項目)あった。
アイコンタクト率と平日の関与時間・休日の関与時間・育児行動数の相関を求めたところ,それぞれ,r=-.221, n.s.,r=.344, n.s.,r=.419, n.s.であった。いずれも有意ではなかったが,相関係数の大きさから,アイコンタクト率と休日の関与時間や育児行動数とはある程度の相関があると解釈できる。
考 察
先述の通り,平日の育児関与時間は就業状況に左右されるが,休日は父親の育児参加意思に左右される。父親が休日可能な限り育児に関与し,多種の育児行動に参与することで,育児に慣れ,子どもとアイコンタクトを取りながらのゆとりある食事が可能になると推測される。今後,ケース数を増やし,分析を継続する予定である。
付 記
本研究の実施にあたっては,科学研究費(基盤研究(C)(一般)課題番号 17K04366 研究代表者:福田佳織)を受けた。