[PA06] 死の意識,死の恐怖とソーシャルサポート・基本的信頼感の関係
キーワード:死の意識、ソーシャルサポート、基本的信頼感
目 的
死の意識や重要な他者との死別経験は,日常生活にさまざまな影響を及ぼす。反対に個人の特性によって死の意識や死別経験での悲嘆などへの影響も異なる。ここでは,発達的な死の意識や死別経験が家族などのソーシャルサポートや基本的な信頼感とどのように関係しているかを調査する。
また,付随的にペット飼育の経験と上記の2領域がどのように関連しているについて検討する。
方 法
調査時期・対象・調査内容
本調査は,2018年7月に実施し,対象は女子大学生1年生から4年生の138名で平均年齢は20.1歳であった。未記入箇所があったもの(5通)と「死」がテーマとなっているため,回答に際して答えたくない場合(4通)は,フェイスシートにマークさせ分析対象から除いた。
調査内容は,死の意識や経験に関することがらとともにいくつかの領域の項目に渡っていた。今回分析の対象とした質問項目としては,「死に対する態度尺度改訂版(DAP-R)」(隈部,2003;5件法)のうちの「恐怖尺度」,12項目からなる「日本版ソーシャル・サポート尺度,JSS」(岩佐ら;2007,7件法),11項目からなる「基本的信頼感尺度,BTS」(谷,1996;7件法)および18項目からなる「ペット飼育に関する尺度,PAS」(諸井,1984)であった。
結果と考察
(1)死の意識・恐怖と基本的信頼感,ソーシャルサポートの関係
死の恐怖尺度による得点と死を意識した発達段階別経験を得点化し,高低群(H,L群)に分け2要因の分散分析を行った。その結果,「基本的信頼感の合計」と下位の「基本的信頼感,SBT」,「対人的信頼感,IT」のすべての尺度で死の意識の効果があらわれ,合計では交互作用もみられた。死の意識の主効果は,一貫して死の意識が低い方が高かった。JSSには,下位尺度として「家族のサポート(FS)」,「大切な人のサポート(SOS)」と「友人のサポート,FeS」がある。3尺度について同様の分析を行ったところ,「合計スコア」と下位のSOSで差が確認された。FSとFeSでは差異が認められなかった。有意な差が認められたのは,いずれも死の意識の水準であり,死の意識が低い方が得点が高かった(Table 1参照)。
このように両尺度で,「死の恐怖」の要因は効果をもたず,発達的な死への意識がいくつかの尺度で影響力を有した。日常の死の意識が,他者への信頼感構築やソーシャルサポートへ否定的に影響している可能性が示唆された。
(2)死別経験と死の恐怖,基本的信頼感,社会的サポート
身内との死別は大きな悲しみや悲嘆を招き,これまでその回復過程に関心が持たれてきた。ここでは,現時点と近接した発達段階での死別経験、とりわけ高校生以降にその経験があるもの(有群)と全くないもの(無群)では種々の面で差が生じると考え,両者を比較した。「死の恐怖」尺度得点と7項目の内の4項目で有意差が認められ有群が高かった。他の尺度では,FSで有意差が示され無群の方が高かった。
(3)ペット飼育の有無と諸尺度との関係
現在ペットを飼っているものは,「飼育因子」を除いて「総合得点」,「受容因子」,「交流因子」で飼育経験のないものに比して高くなっていた。また,FS尺度で,現在のペット飼育の効果が現れ,現在の飼育者がもっとも高く,過去の経験者が続き,全く経験のないものが低かった。ペット飼育の状況は家族全体というのが70%を超えており,ペット飼育が家族間での協同作業や役割分担など良好な関係の構築を媒介している可能性がある。金子・山口(2012)の高校生で動物を飼っているものは,家族間の絆が健康的なレベルにあるという結果と符合した。
死の意識や重要な他者との死別経験は,日常生活にさまざまな影響を及ぼす。反対に個人の特性によって死の意識や死別経験での悲嘆などへの影響も異なる。ここでは,発達的な死の意識や死別経験が家族などのソーシャルサポートや基本的な信頼感とどのように関係しているかを調査する。
また,付随的にペット飼育の経験と上記の2領域がどのように関連しているについて検討する。
方 法
調査時期・対象・調査内容
本調査は,2018年7月に実施し,対象は女子大学生1年生から4年生の138名で平均年齢は20.1歳であった。未記入箇所があったもの(5通)と「死」がテーマとなっているため,回答に際して答えたくない場合(4通)は,フェイスシートにマークさせ分析対象から除いた。
調査内容は,死の意識や経験に関することがらとともにいくつかの領域の項目に渡っていた。今回分析の対象とした質問項目としては,「死に対する態度尺度改訂版(DAP-R)」(隈部,2003;5件法)のうちの「恐怖尺度」,12項目からなる「日本版ソーシャル・サポート尺度,JSS」(岩佐ら;2007,7件法),11項目からなる「基本的信頼感尺度,BTS」(谷,1996;7件法)および18項目からなる「ペット飼育に関する尺度,PAS」(諸井,1984)であった。
結果と考察
(1)死の意識・恐怖と基本的信頼感,ソーシャルサポートの関係
死の恐怖尺度による得点と死を意識した発達段階別経験を得点化し,高低群(H,L群)に分け2要因の分散分析を行った。その結果,「基本的信頼感の合計」と下位の「基本的信頼感,SBT」,「対人的信頼感,IT」のすべての尺度で死の意識の効果があらわれ,合計では交互作用もみられた。死の意識の主効果は,一貫して死の意識が低い方が高かった。JSSには,下位尺度として「家族のサポート(FS)」,「大切な人のサポート(SOS)」と「友人のサポート,FeS」がある。3尺度について同様の分析を行ったところ,「合計スコア」と下位のSOSで差が確認された。FSとFeSでは差異が認められなかった。有意な差が認められたのは,いずれも死の意識の水準であり,死の意識が低い方が得点が高かった(Table 1参照)。
このように両尺度で,「死の恐怖」の要因は効果をもたず,発達的な死への意識がいくつかの尺度で影響力を有した。日常の死の意識が,他者への信頼感構築やソーシャルサポートへ否定的に影響している可能性が示唆された。
(2)死別経験と死の恐怖,基本的信頼感,社会的サポート
身内との死別は大きな悲しみや悲嘆を招き,これまでその回復過程に関心が持たれてきた。ここでは,現時点と近接した発達段階での死別経験、とりわけ高校生以降にその経験があるもの(有群)と全くないもの(無群)では種々の面で差が生じると考え,両者を比較した。「死の恐怖」尺度得点と7項目の内の4項目で有意差が認められ有群が高かった。他の尺度では,FSで有意差が示され無群の方が高かった。
(3)ペット飼育の有無と諸尺度との関係
現在ペットを飼っているものは,「飼育因子」を除いて「総合得点」,「受容因子」,「交流因子」で飼育経験のないものに比して高くなっていた。また,FS尺度で,現在のペット飼育の効果が現れ,現在の飼育者がもっとも高く,過去の経験者が続き,全く経験のないものが低かった。ペット飼育の状況は家族全体というのが70%を超えており,ペット飼育が家族間での協同作業や役割分担など良好な関係の構築を媒介している可能性がある。金子・山口(2012)の高校生で動物を飼っているものは,家族間の絆が健康的なレベルにあるという結果と符合した。