[PA11] タブレットPCを利用した小学校4年生ペア学習前後における音読の変化(1)
SD法による印象評定から
キーワード:音読、ICT、小学生
はじめに
本研究では東原・鳥海(2018)の研究を小学校4年生の10組のペアに適用し,ペア学習前後の児童の音読を比較した。本報告は,SD法印象評定により児童の音読のイメージを構成する因子を抽出し,タブレットPCを活用した小学生によるペア学習の前後における音読の変化を,音読のイメージの観点から明らかにすることを目的とした。
方 法
対象・時期・場所
音読学習は,平成30年4月~10月に,朝のドリル学習時に空き教室で実施した。対象児童は,小学校4年生 20名(男女10名ずつ)。男女1名ずつのペアごとに,東原・鳥海(2018)の教材を用いた音読のペア学習を行い,ICレコーダーで音声を録音した。音読の印象評定は,大学生および大学院生計30名に対し,平成30年11~12月に実施した。ランダムな順に再生された音読音声を聞き,評定用紙に記入してもらった。
本研究は聖徳大学倫理委員会の承認を得ている。
手続き
<プレ1>タブレットPC画面を見ながら1名ずつの音読。<プレ2>プレ1の約2ヵ月後に音読を再実施。<ペア学習>二人で交互にタブレット教材を操作し,話し合いながら文字の大きさを変更したり背景を着色したりするペア学習。<ポスト1>ペア学習後すぐ,完成品を見ながら音読。<ポスト2>プレ1の画面に戻し,再び音読。
分析方法
全児童の2場面(プレ2,ポスト1)の音声(各約30秒間)を用いてSD法尺度(7件法)による印象評定を行った。各児童の印象評定の結果,20項目の平均値の平均が最も平均的な値(4.0)であったB5児のポスト1を標準と判断し,代表例とした。代表例の評定結果を用いて,主因子法プロマックス回転により因子分析を行った。
結果及び考察
因子分析の結果3因子が抽出され,「活力」「快適さ」「強さ」と命名した。各因子に0.40以上の負荷量を示す項目の群(以下項目群とする)における評定値を,逆転処理したうえで平均し各項目群の合成得点とした。各参加児童について,項目群(3水準)×フェーズ(2水準)の2要因参加者内分散分析を行った結果,どの参加児童においても項目群の主効果は有意であり,フェーズの主効果は,20名中11名にプレ2<ポスト1で有意差や有意傾向が見られた。また,全児童20名の合成得点平均の比較に関し分散分析を行った結果をFigure 1に示す。各項目群の主効果があり,フェーズの主効果はプレ2<ポスト1でみられた。「活力」ではプレ2<ポスト1(F(1,19)=14.73,p<.01),「快適さ」ではプレ2<ポスト1で有意傾向(F(1,19)=4.30,p<.1),「強さ」ではプレ2<ポスト1で有意差がみられ(F(1,19)=7.07,p<.05),項目群とフェーズの交互作用も認められた。これらから,どの項目群でもプレ2よりポスト1において合成得点平均が上がっており,さらに,「活力平均」や「強さ平均」の伸びは同程度であり,「快適さ平均」の伸びよりも大きいことがわかった。
大久保・西田(2015)は,低学年は大きな声ではっきりと音読するよう指導し,中学年以降はプロミネンス(重要な部分を強調して発声する)や間(ポーズ)を工夫した音読を指導すると述べている。つまり,本研究で言う「強さ」は,「大きな声ではっきりと」音読するという,音読初心者が目指しやすいものであったと考えられる。ペアで聞き合いながら音読をすることにより,聞いている相手に詩の内容が伝わりやすいように声の調子や抑揚等(「快適さ」にあたる),児童が考え工夫した音読になり,その結果,声に個性が感じられた(「活力」にあたる)のではないかと考えられる。
引用文献
東原文子・鳥海楓華(2018)タブレットを用いた音読学習教材の活用可能性.教心60.
大久保伸夫・西田拓郎(2015):音読・朗読.東洋館出版社 日本国語教育学会.
本研究では東原・鳥海(2018)の研究を小学校4年生の10組のペアに適用し,ペア学習前後の児童の音読を比較した。本報告は,SD法印象評定により児童の音読のイメージを構成する因子を抽出し,タブレットPCを活用した小学生によるペア学習の前後における音読の変化を,音読のイメージの観点から明らかにすることを目的とした。
方 法
対象・時期・場所
音読学習は,平成30年4月~10月に,朝のドリル学習時に空き教室で実施した。対象児童は,小学校4年生 20名(男女10名ずつ)。男女1名ずつのペアごとに,東原・鳥海(2018)の教材を用いた音読のペア学習を行い,ICレコーダーで音声を録音した。音読の印象評定は,大学生および大学院生計30名に対し,平成30年11~12月に実施した。ランダムな順に再生された音読音声を聞き,評定用紙に記入してもらった。
本研究は聖徳大学倫理委員会の承認を得ている。
手続き
<プレ1>タブレットPC画面を見ながら1名ずつの音読。<プレ2>プレ1の約2ヵ月後に音読を再実施。<ペア学習>二人で交互にタブレット教材を操作し,話し合いながら文字の大きさを変更したり背景を着色したりするペア学習。<ポスト1>ペア学習後すぐ,完成品を見ながら音読。<ポスト2>プレ1の画面に戻し,再び音読。
分析方法
全児童の2場面(プレ2,ポスト1)の音声(各約30秒間)を用いてSD法尺度(7件法)による印象評定を行った。各児童の印象評定の結果,20項目の平均値の平均が最も平均的な値(4.0)であったB5児のポスト1を標準と判断し,代表例とした。代表例の評定結果を用いて,主因子法プロマックス回転により因子分析を行った。
結果及び考察
因子分析の結果3因子が抽出され,「活力」「快適さ」「強さ」と命名した。各因子に0.40以上の負荷量を示す項目の群(以下項目群とする)における評定値を,逆転処理したうえで平均し各項目群の合成得点とした。各参加児童について,項目群(3水準)×フェーズ(2水準)の2要因参加者内分散分析を行った結果,どの参加児童においても項目群の主効果は有意であり,フェーズの主効果は,20名中11名にプレ2<ポスト1で有意差や有意傾向が見られた。また,全児童20名の合成得点平均の比較に関し分散分析を行った結果をFigure 1に示す。各項目群の主効果があり,フェーズの主効果はプレ2<ポスト1でみられた。「活力」ではプレ2<ポスト1(F(1,19)=14.73,p<.01),「快適さ」ではプレ2<ポスト1で有意傾向(F(1,19)=4.30,p<.1),「強さ」ではプレ2<ポスト1で有意差がみられ(F(1,19)=7.07,p<.05),項目群とフェーズの交互作用も認められた。これらから,どの項目群でもプレ2よりポスト1において合成得点平均が上がっており,さらに,「活力平均」や「強さ平均」の伸びは同程度であり,「快適さ平均」の伸びよりも大きいことがわかった。
大久保・西田(2015)は,低学年は大きな声ではっきりと音読するよう指導し,中学年以降はプロミネンス(重要な部分を強調して発声する)や間(ポーズ)を工夫した音読を指導すると述べている。つまり,本研究で言う「強さ」は,「大きな声ではっきりと」音読するという,音読初心者が目指しやすいものであったと考えられる。ペアで聞き合いながら音読をすることにより,聞いている相手に詩の内容が伝わりやすいように声の調子や抑揚等(「快適さ」にあたる),児童が考え工夫した音読になり,その結果,声に個性が感じられた(「活力」にあたる)のではないかと考えられる。
引用文献
東原文子・鳥海楓華(2018)タブレットを用いた音読学習教材の活用可能性.教心60.
大久保伸夫・西田拓郎(2015):音読・朗読.東洋館出版社 日本国語教育学会.