[PA41] 自尊感情を高める教師の指導について(2)
恩恵享受的自己感と学校適応の観点から
キーワード:領域特定的な自尊感情、恩恵享受的自己感、学校適応感
目 的
学校への適応を促し,クラスとの一体感を通して自尊感情や自己肯定感を高めることに関係する概念として恩恵享受的自己感が挙げられる(中間, 2013)。これは自己や周りの環境や関係性に対する肯定的な感情から付随的に経験されるであろう自己への肯定的な感情であり,自尊感情と類似の概念であることが示されている。恩恵享受的自己感は学級適応を促すことが期待できるが,両者の関係は明らかになっていない。他方で自尊感情と学校適応感には中程度の相関があることが示されている(松田・島崎,2007)。そこで本研究では自尊感情と恩恵享受的自己感,学校適応感の関係を明らかにし,自尊感情を高める教師の指導方法について考察する。
方 法
調査時期と調査対象と調査内容 発表(1)(自尊感情を高める教師の指導について(1))の調査内容の他に加えた次の2種類の尺度について,4件法で回答を求めた。恩恵享受的自己感尺度(中間,2013)全7項目,学校適応感を測定する尺度として,生活充実感尺度(高橋・青木,2013)全6項目。
結 果
因子分析と尺度間相関 各尺度について,1因子固定,最尤法で因子分析を行った。因子確定後のα係数は,自尊感情α=.847, 恩恵享受的自己感α=.804,学校適応感α=.839であり十分な信頼性が示された。尺度間の相関係数をTable 1に示す。
恩恵享受的自己感,学校適応感と自尊感情の領域との関連 まず,恩恵享受的自己感を従属変数,自尊感情の5つの領域を説明変数とした重回帰分析を行った。その結果,学業,社交性,家族領域と恩恵享受的自己感との関連が示された(Table 2)。つまり,恩恵享受的自己感は,学業の他に,自分の周囲への他者に関わる領域との関連が強いことが示された。
次に学校適応感を従属変数,自尊感情の5領域を説明変数とした重回帰分析を行った。その結果,学業,社交性,家族領域が学校適応と関連していた(Table 3)。この結果は,恩恵享受的自己感の結果とほぼ同じと言える。つまり,学業の他に,周囲との関係がよいこと,他者との健全で良好な関係が学級適応を高めていることがわかる。
考 察
自尊感情と恩恵享受的自己感,学校適応感には有意な相関があったことから,これらは双方向的に強く関係しているといえる。特に恩恵享受的自己感と学校適応感との間の強い相関,Table 2, 3の結果の類似性から,周囲の人や環境への満足度が高い児童は,学校適応感も高いといえるだろう。他方,発表(1)で示した自尊感情と領域の関係の結果は,学級適応の結果と必ずしも一致していない。
以上より,自尊感情を高める教師の働きかけについて3つの方法が考えられる。まず学業の指導が基本であること,次に,運動など良さを認める指導,そして,周囲の人間関係づくりを工夫し,学級適応を高めて自尊感情を高める方法である。
主な引用文献
中間玲子(2013).自尊感情と心理的健康の関連再考 教育心理学研究, 61, 374-386.
林みどり(2004). 子どもの自尊感情 子ども用5領域自尊心尺度邦訳版の検討 石川看護雑誌, 1, 25-29.
学校への適応を促し,クラスとの一体感を通して自尊感情や自己肯定感を高めることに関係する概念として恩恵享受的自己感が挙げられる(中間, 2013)。これは自己や周りの環境や関係性に対する肯定的な感情から付随的に経験されるであろう自己への肯定的な感情であり,自尊感情と類似の概念であることが示されている。恩恵享受的自己感は学級適応を促すことが期待できるが,両者の関係は明らかになっていない。他方で自尊感情と学校適応感には中程度の相関があることが示されている(松田・島崎,2007)。そこで本研究では自尊感情と恩恵享受的自己感,学校適応感の関係を明らかにし,自尊感情を高める教師の指導方法について考察する。
方 法
調査時期と調査対象と調査内容 発表(1)(自尊感情を高める教師の指導について(1))の調査内容の他に加えた次の2種類の尺度について,4件法で回答を求めた。恩恵享受的自己感尺度(中間,2013)全7項目,学校適応感を測定する尺度として,生活充実感尺度(高橋・青木,2013)全6項目。
結 果
因子分析と尺度間相関 各尺度について,1因子固定,最尤法で因子分析を行った。因子確定後のα係数は,自尊感情α=.847, 恩恵享受的自己感α=.804,学校適応感α=.839であり十分な信頼性が示された。尺度間の相関係数をTable 1に示す。
恩恵享受的自己感,学校適応感と自尊感情の領域との関連 まず,恩恵享受的自己感を従属変数,自尊感情の5つの領域を説明変数とした重回帰分析を行った。その結果,学業,社交性,家族領域と恩恵享受的自己感との関連が示された(Table 2)。つまり,恩恵享受的自己感は,学業の他に,自分の周囲への他者に関わる領域との関連が強いことが示された。
次に学校適応感を従属変数,自尊感情の5領域を説明変数とした重回帰分析を行った。その結果,学業,社交性,家族領域が学校適応と関連していた(Table 3)。この結果は,恩恵享受的自己感の結果とほぼ同じと言える。つまり,学業の他に,周囲との関係がよいこと,他者との健全で良好な関係が学級適応を高めていることがわかる。
考 察
自尊感情と恩恵享受的自己感,学校適応感には有意な相関があったことから,これらは双方向的に強く関係しているといえる。特に恩恵享受的自己感と学校適応感との間の強い相関,Table 2, 3の結果の類似性から,周囲の人や環境への満足度が高い児童は,学校適応感も高いといえるだろう。他方,発表(1)で示した自尊感情と領域の関係の結果は,学級適応の結果と必ずしも一致していない。
以上より,自尊感情を高める教師の働きかけについて3つの方法が考えられる。まず学業の指導が基本であること,次に,運動など良さを認める指導,そして,周囲の人間関係づくりを工夫し,学級適応を高めて自尊感情を高める方法である。
主な引用文献
中間玲子(2013).自尊感情と心理的健康の関連再考 教育心理学研究, 61, 374-386.
林みどり(2004). 子どもの自尊感情 子ども用5領域自尊心尺度邦訳版の検討 石川看護雑誌, 1, 25-29.