日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

Sat. Sep 14, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA45] いじめ類型と深刻化の関係

加藤弘通1, 太田正義2, 舒悦3 (1.北海道大学, 2.常葉大学, 3.北海道大学)

Keywords:いじめ、中学生、抑うつ

問  題
 これまでいじめについての研究の多くはいじめの発生を説明する研究であった。しかし,学校現場の視点で考えた場合,さらに重要なのは,発生のみならず,どのような場合に深刻化するのか。またどのようなタイプのいじめが,より緊急性が高いのかを判断することである。したがって本研究では,潜在ランク理論を用いて,いじめを類型化し,抑うつとの関連性を検討する。それによってどのようなタイプのいじめが,より深刻ないじめかをアセスメントすることが目的である。
方  法
調査協力者:公立中学校の中学生1〜3年生18,877人(男子9,707人,女子9,075人,未記入95人)
調査時期:2017年7月
質問紙の内容:「いじめ被害経験」について「全くない〜週に何度も」までの5件法で回答してもらった。Birleson自己記入式抑うつ評価尺度(DSRS-C)短縮版(並川・谷・脇田・熊谷・中根・野口・辻井, 2011)9項目を用い,「そんなことはない(0点)・ときどきそうだ(1点)・いつもそうだ(2点)」の3件法で回答を求めた。
結  果
1. クラス数の選定と解釈
週に1回以上被害したと回答した生徒いじめ被害者とし,ダミーコーディングを施して(0=非被害者,1=被害者),潜在クラス理論で分類した。BLRT法の結果により,6クラスを採択した。クラスに命名は各観測変数の該当ありの割合に着目して,以下のようにした。
2. いじめ被害のタイプと抑うつの関係
いじめのタイプによる深刻度の違いを検討するために,抑うつを従属変数とし,一元配置の分散分析を行った結果,有意な差が見られた(F(5,1763)=185.0,p<.001,η2=.05)。また多重比較の結果,全体,関係性,伝統的ないじめ>物質,直接的ないじめ>なしの間で有意な差が認められた。
 また平均値に注目すると,全体,関係性,伝統的ないじめは抑うつ尺度のカットオフ値である7点を超えており,こうしたいじめが特に被害生徒の抑うつ度を高め,危機的な状態へと押しやる可能性が考えられる。
考  察
 本研究では,いじめを類型化し,そのタイプによって被害を受けた生徒の抑うつ度を比較した。その結果,関係性,伝統的,全部を含むいじめが抑うつが物質的ないじめや直接的ないじめ以上に被害生徒の抑うつ度を高め,危険な状態に陥らせる可能性が示唆された。これらの深刻ないじめに共通するのは,無視や悪口といった関係性攻撃を含んでいるということである。したがって,教育現場において,関係性攻撃がみられるいじめについては,介入の緊急性が高い被害とみなし,様子を見るなどの介入を安易に控えるのではなく,積極的に介入する必要があるといえる。