日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

2019年9月14日(土) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA57] 気になる児童・生徒に対する教師の評価と生徒指導効力感(2)

小学校・中学校教師への調査から

石橋太加志 (東京大学教育学部附属中等教育学校)

キーワード:生徒指導効力感、問題性評価、対処行動評価

問題と目的
 中央教育審議会(2015)「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」で「チーム学校」という用語でまとめられている。すなわち,学校が,複雑化・多様化した課題を解決し,子どもに必要な資質・能力を育んでいくためには,学校のマネジメントを強化し,組織として教育活動に取り組む体制を創り上げるとともに,必要な指導体制を整備することが必要である。その上で,生徒指導や特別支援教育等を充実していくために,学校や教師が心理や福祉等の専門スタッフ等と連携・分担する体制を整備し,学校機能を強化していくことが重要であるとされている。この背景の一つには, 2011年度で学校生活・学業不適応を理由とする高校中退者数が53,869人(文部科学省調査結果(2013))にのぼることや,2014年中学生の長期欠席者126,850人の内,不登校理由は98,786人いること(文部科学省学校基本調査(2015))など,教師が,学校で問題行動を起こす生徒に対応することで,困難さを抱え,ストレスで休職に追い込まれるなどの問題が生じている。一方で中学生は,山口・水野・石隈(2004)の研究の中で,求める相談・援助対象として保護者や友達を多くあげており,教師やスクールカウンセラーなどは相談・援助対象として選択されることが少ないと指摘しており,教師の生徒指導力が問われていると考えられる。しかしながら,児童・生徒の問題行動における教師の内面の問題,資質が議論されてくることはほとんどみられない。
本研究の目的は,気になる児童・生徒への見立て(評価)と生徒指導効力感との関連を検討することである。
方  法
(1)調査対象者 公立小学校・中学校教師75名
(2)質問紙の構成①問題の見立て:竹村(2008)の問題性評価尺度を使用した。この尺度は,影響性評価,対処可能性評価の2因子,9項目からなる。「児童・生徒との関わりにおいて問題が生じたときのあなたの感情や考えをよく表すように,数字に○をつけて下さい。」の教示文により,「全く違う」(0点)~「その通りだ」(3点)の4件法で回答を求めた。調査対象を考慮し,「気になる児童(生徒)」については,竹村(2008)の説明に生徒を加え,「授業中や休み時間など,学級での活動の際に,集団への参加や学習への取り組み,他の児童(生徒)との関わりなどに困難を示す児童(生徒)」との説明を付した。②問題への対処:竹村(2008)の対処行動評価尺度を使用した。この尺度は,問題解決志向,情動軽減志向,支援希求志向の3因子,16項目からなる。問題性評価尺度と同様の教示文に,「全く違う」(0点)~「その通りだ」(3点)の4件法で回答を求めた。③生徒指導効力感:淵上・西村(2004)の教師の個人的自己効力感尺度のうち,第1因子である「生徒指導への効力感」10項目を使用した。「日頃の先生方の様子について質問します。」との教示文により,「たいへんあてはまる」(4点)~「まったくあてはまらない」(1点)まで4件法で回答を求めた。④援助資源の活用:田村・石隈(2001)が作成した被援助志向性尺度を使用した。この尺度は,援助の欲求と態度,援助関係に対する抵抗感の低さの2因子である。「たいへんあてはまる」(4点)~「まったくあてはまらない」(1点)まで4件法で回答を求めた。⑤教師への属性:性別,学校種,教員勤務歴を聞いた。(3)手続きと実施時期 実施時期は201x年12月であった。(4)倫理上の配慮:本研究は東京大学倫理審査委員会より承認を得た(承認番号16-240)。
結  果
 各因子の2変量の相関係数をTable 1に示す。
 影響性評価と援助関係に対する抵抗感の低さは他因子と有意な相関はみられなかった。対処可能性評価は問題解決志向,生徒指導効力感に正の有意な相関がみられた。援助の欲求と態度は問題解決志向,支援希求志向に有意な正の相関,情動軽減志向には有意な負の相関がみられた。