日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-63)

2019年9月14日(土) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PA62] 高大接続改革の下での国語新傾向問題が測定する資質・能力について

倉元直樹1, 宮本友弘2 (1.東北大学, 2.東北大学)

キーワード:国語、新傾向問題、大学入試

問題と目的
 平成26年12月に発表された中教審答申(高大接続答申)を皮切りに,未曽有の規模の高大接続改革が実施段階に入った。大学入試制度の変更については主として大学入試センター試験の廃止と大学入学共通テストの導入に注目が集まっているが,実際には個別試験の改革も射程に入っている。
 平成28年8月公表の「高大接続改革の進捗状況について(文部科学省,2016)」で公表された5件の大学入学者選抜改革推進委託事業は個別試験改革の一環である。各大学の入学者選抜において「思考力・判断力・表現力」や「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に関する評価手法の開発を主題として,情報分野,主体性等分野等と並んで人文社会分野(国語科)(以下,「国語科」と略記する)で平成28~30年度の3年間の委託事業が計画された。国語科では北海道大学を代表大学としたコンソーシアムの企画が採択された。
 本研究は,委託期間を終えて得られた国語科の成果の中の一部について報告するものである。
 国語科では個別試験新傾向問題作題用の試験問題分類フォーマットと新傾向試験問題を開発する「グループA(北海道大学中心)」と試験問題の機能の評価手法を開発する「グループB(東北大学)」に分かれて2年間研究を行った。最終年度には「グループA」が作題した試験問題を用いて高校生を対象に実施したモニター調査に対し「グループB」が開発した評価手法を適用して評価を行った。
 本発表は,そのうち試験問題が測定する能力・資質に関する分析結果の報告を行う。
方  法
試験問題分類フォーマット
 新指導要領において「国語科の中で育成すべき資質・能力(案)」を基に作成された18項目からなる横軸と設問形式の種類20項目からなる縦軸で構成された2次元マトリックス構造のセル(横軸は複数項目に該当可)内に試験問題が小問単位で分類される。過去に出題された国立大学の個別試験問題はその中の一部の領域に偏在する。したがって,新傾向問題はフォーマットの中で過去問がほとんど存在しない領域の問題である。
 開発された新傾向問題のうち,平成30年度のモニター調査に使用された問題は,評論,小説各分野の大問1題ずつ計2問である。
資質・能力評価アンケート
 グループBでは国語に加えて比較用の数学のセンター試験,個別試験の過去問,新共通テスト用に公表されたイメージ例(高大接続システム改革会議,2015),モデル問題例(大学入試センター,2017)を用いた2度のモニター調査を行った。調査直後に実施した受験者用アンケートの中に試験問題(大問単位)が測定する具体的な資質・能力について,当該資質・能力が「必要」か否かを2値形式で問う22項目(数学は1項目追加)が含まれる。なお,項目はグループA作成の試験問題分類フォーマットと同一資料を基にして作成された。
 試験問題分類フォーマットが作題者側の認識を表現したものであるのに対し,資質・能力評価アンケートは受験者側の認識を表現したものである。
モニター調査
 3年間を通じてセンター試験(評論,小説),個別試験(小説,評論),イメージ例,モデル問題例を組合せた6種類の冊子,加えて平成28~29年度は2種類の数学冊子を用いて計4,599名の高校2,3年生を対象に模擬試験形式のモニター調査が行われた。なお,全てのモニター調査にアンケートと対応付け用共通項目としての5肢選択形式の語彙問題20問(平ほか,1995)が含まれている。
結果と考察
 各大問の「資質・能力有」の比率に基づくクロス集計表に対して対応分析を実施した。結果はFigure1 に示す。新傾向問題は従来型個別問題の近くに付置されており,受験者から見て過去問と類似した資質・能力を測定していると判断された。