日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

2019年9月14日(土) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB21] 非連続型テキストを用いた説明活動に与える影響について

ワーキングメモリ容量の差異による検討

中村光伴 (熊本学園大学)

キーワード:説明活動、非連続型テキスト、ワーキングメモリ

 私たちは説明活動を行う際,非連続型テキストを用いることが多々ある。これまでの非連続型テキストを含む文書の読解に関する研究では,その読解方法は個人差が大きいことや,非連続型テキスト単体の読解時に,先行知識を有することにより,内容には直接影響しない補足的な情報が追加され,冗長な説明を行ってしまうことが指摘されている(2008,2009教育心理学会総会発表など)。
 そこで,本研究では説明活動を行う際に,非連続型テキストの読解へワーキングメモリ(WM)の差異が与える影響について検討することを目的とする。
方  法
協力者:大学生61名。
実験材料:読解課題にて呈示した非連続型テキストは“飲酒量と睡眠時間が交通事故発生件数に与える影響”に関するグラフ(棒グラフ)であった。
リスニングスパンテスト(LST):根本(2009)が作成したLST課題を使用した。課題文の長さは20~30文字程度であり,課題文は2~5文ごとに1セットにまとめられ,各文章には関連性はない。
手続き:①事前調査:呈示グラフについての事前知識ならびに理解度調査を行った。さらに,普段,図表を読む頻度や図表読解に対する意識についても調査した。②説明課題:カバーストーリーに従い,呈示されたグラフを読解し,その内容についての筆記による説明文を産出した(20分)。③WMの測定:協力者個別にLSTを測定した(30分)。
結果と考察
結果の処理:LSTの得点化は齋藤・三宅(2000)にしたがい,総正再生数を得点として算出した。LST得点平均点よりも高い者をLST高群(29名),低い者をLST低群(32名)とした。また,グラフで扱われている内容についての理解度調査の結果により内容理解高群(30名),内容理解低群(31名)とした。
産出された説明文の処理:協力者がグラフ読解課題にて産出した各説明文について,産出文字数,内容説明得点を算出した。内容説明得点は評価観点(4観点)について実験者を含む2名による合議で得点化した(12点満点)。評価観点は①XとYとの関係,②ZとYとの関係,③そのグラフにおいて特徴的な点(XとZを要因とする交互作用など),④グラフの内容から導き出される結論である。
グラフ説明に及ぼす影響
 各群間(WM高低,グラフ内容理解高低)で,グラフ説明課題での産出文字数と内容説明得点について分析を行ったところ,内容説明得点において,WM高群の平均点が低群よりも有意に高く,グラフ内容理解はいずれでも有意な差はみられなかった。さらに,説明課題の評価観点別にその得点について検討したところ,WM低群において,②ZとYとの関係と④グラフの内容から導き出される結論 についての得点が低く,説明課題内で表現できていない者が多くみられた。WM低群では,グラフ内容理解が出来ている/いないに関わらず,グラフを使って説明する際には,そのグラフ内の基本的な関係やグラフから導かれる最終的な結論をうまく表現できない可能性が指摘できる。