日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

2019年9月14日(土) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB24] テストの反応形式がテスト効果に及ぼす影響

手書きとタイピングの比較

高橋功1, 岩木信喜2 (1.山陽学園大学, 2.岩手大学)

キーワード:テスト効果、手書き、タイピング

目  的
 リスト記銘課題では,タブレットやタイピング (KB: Keyboard typing) を用いて記銘した場合,手書き (HW: Hand Writing) の場合よりも再生成績が低いことを示した報告がある (Mangen et al., 2015)。
 しかし,対連合課題を用いたテスト効果の実験では,KBとHWに差はなかった (Sundqvist et al., 2017)。更に,外在化自体を求めないcovert条件とも差がないことから,そうした外在化の恩恵は極めて小さいとされた。しかしSundqvist et al.では,初期テスト時にcueがモニタに呈示され,最終テストはKBのみで行われた。HWの視覚運動処理の恩恵,初期テストと最終テストの同型性による転移の可能性が損なわれた可能性もある。
 そこで本実験では,次の点に留意し,テスト効果におけるHW条件とKB条件の比較を行った: (1) 初期テストだけではなく最終テストにもHW群とKB群を設定した。(2) HW条件では回答を手書きさせるだけではなく問題も紙媒体で示した。(3) 刺激対を1条件につき12対とした (Sundqvist et al.は6対)。
方  法
参加者 日本人大学生36名(男13,女23,平均年齢20.4 (SD=15.48)。謝礼 (QUOカード) を贈呈。
実験日等 2018年7~11月。1~4名の小集団実験。
実験計画 初期テストの形式 (3条件: HW, KB, RO; 参加者内) ×1週間後の最終テストの形式 (2群: HW’, KB’; 参加者間)の混合計画。初期テストのRO条件とは,正確にはテストではなく,読むだけ (Read Only) の統制条件。参加者間変数の最終テストの形式は各群18名。
課題 水野 (2011) から選出。カナ3文字のcueとカナ4~6文字のtargetからなる36対の対連合課題 (e.g.,“ボトル”-“イレモノ”)。連想価.02~.04。初期テストの各条件に12対ずつ無作為割り当て。
手続き 一週間後の最終テストの実施を最初に伝えた (i.e., 予告テスト)。初期テストフェイズは,条件をブロック化し,初期学習,妨害課題 (2min.) ,初期テスト2回をそれぞれ実施。条件順は参加者間カウンターバランス。
 初期学習では,12対の課題をモニタ上に順次呈示 (呈示時間7s,間隔1s)。初期テストは,回答制限時間10s で2セット実施。このとき,1セット目はtargetの頭文字を2文字,2セット目は1文字をヒントとして呈示。KB条件では,cueをモニタ上に呈示し,targetを参加者がPC入力。HW条件では,12枚綴りの冊子でcueを示し (制限時間は合成音声の自動再生により指示),targetを参加者が同紙に記入。RO条件では,モニタ上に10sずつcueとtargetを2セット再提示。どの条件でも,課題の提示順序は,初期学習も含め,テストごとに無作為化。
 1週間後の最終テストフェイズでは,36対を無作為な順序でテスト (回答制限時間12s)。ヒントなし。初期テストと同様,KB’群はモニタとPC入力によって,HW’群は冊子と記入によって実施。最後に1分間のタイピングテストを2回実施。
結果と考察
 初期テスト平均正答率は,HW条件1回目が.92 (SE=.23),2回目が.92 (.21),KB条件1回目が.89 (.26),2回目が.93 (.23) であり,同質であった。
 最終テストの平均正答率 (Figure 1) は,KB’群で,RO条件よりHW条件 (t(18)=4.96, p=.000, dD=1.17),RO条件 よりKB条件 (t(18)=5.46, p=.000, dD=1.29) の再生率が高く,テスト効果が確認された。HW’群では,RO条件よりHW条件 (t(18)=377, p=.002, dD=1.89) が高かったが,RO条件とKB条件では傾向に留まった (t(18)=2.07, p=.054)。
 HW条件とRO条件を比較すると,初期HW条件&最終HW’群の正答率が,初期KB条件&最終HW’群よりも高かった (t(18)=2.30, p=.034, dD=0.54)。
 以上の結果は,HWによる初期テストの最終テスト場面への転移の柔軟性,あるいはKBによる初期テストの制約を示唆する。今後は,外在化を求めないcovert条件や口頭条件との比較も必要であろう。
引用文献
Mangen, A., Anda, L.G., Oxborough, G.H., & Brønnick, K. 2015 Handwriting versus keyboard writing Effect on word recall. Journal of Writing Research, 7, 227-247.
水野りか (編) (2011). 連想語頻度表― 連想語頻度表―3モーラの漢字・ひらがなカタナ表記語― ナカニシヤ出版
Sundqvist M.L., Mäntylä, T., & Jönsson, F.U. 2017 Assessing Boundary Conditions of the Testing Effect On the Relative Efficacy of Covert vs. Overt Retrieval. Frontiers in Psychology, 1-15.