[PB25] 主体性と学業面での自己変革の意識との関連
大学生の学年間に見られた差違による検討
Keywords:主体性、自己変革、授業満足度
目 的
鈴木,教心発表2016,2017では,学習スタイルを識別する際に学習観の尺度が最も有効であることがわかった。しかし,学習観を構成する「主体性」の内容的妥当性が不充分であった。「主体性」は直感的(あるいは直観的)には理解されているが,定義は明確に定まったものがない。特に,類似性の高いと思われる積極性等との相違や関連性も充分に説明づけられていない。鈴木(教心発表2018)では,著者による「主体性」の作業仮説としての定義である「自己の変革」を特性として表す項目を用いて,諸変数との関連性を検討した。「自己の変革」のうち,自己の改善に関わる「更新的」関与が,浅海(1999)の子どもの生活における主体性尺度の「積極的」「方向づけ」に関係が強いことがわかった。本研究では,対象校を変え,学年間における,主体性と学業生活の自己評価との関連性を検討することで,主体性を構成する内容について整理することを目的とする。
方 法
手続き 学習時に「自己の変革」への関与として「能力を向上させたい」などの25項目を(鈴木,教心発表2018),全くそう思う~全くそうは思わないの7件法による回答を得た。また,日常活動における子どもの「主体性尺度」(浅海 1999)を用い, 20項目に対して,あてはまる~あてはまらないの4件法で回答を得た。学習動機と学習方略に関しては,市川(2001)による尺度を用いた。学期全体での授業満足度として,主観的確率として満足率の回答(授業満足率),受講した科目数と満足できた授業の科目数を回答してもらい,その割合も調べた(満足授業率)。また,学業生活における親和性についての15項目に対して,全くそう思う~全くそうは思わないの7件法で回答を得た。調査に関しては,全体傾向をフィードバックすることで,学業生活を振り返る等の目的も持つことを説明し,合わせて強制ではない旨も述べて,協力を要請した。調査時期 2018年前期終了時。調査対象者:短大1年30名,大学1年44名および3年51名の計125名(男性39名,女性86名)。平均年令は19.2才(SD=1.31)であった。
結 果
「自己変革」への関与を表した25項目に対して,探索的因子分析を実施した。固有値減衰率を基準とした最尤法によって4因子を抽出した後,斜交プロマックス解をもとめた。項目の共通点から,因子1は,自分を向上させようとする「向上的」関与,因子2は,比較することによって自己を見出そうとする「評価的(対照的」」関与,因子3は,整理などの作業をしてみて新たな気づきを得ようとする「作業的(操作的)」関与,因子4は,弱点を克服しようとする「更新的」関与と意味づけた。前回(鈴木,教心発表2018)の因子との一致度は必ずしも高くなかった。
浅海(1999)の主体性20項目に対して,尺度数の5つを抽出数として固定し,主因子法を実施し,回転バリマックス解をもとめた(累積寄与率43.6%)。前回(鈴木,教心発表2018),「知的好奇心」だけでなく「方向づけ」の項目が分散してしまい,「自己表現」「積極的な行動」「自己決定力」の尺度を構成する項目が,概ね保たれていた。尺度得点は浅海(1999)の構成にしたがって算出した
市川(2001)の学習動機36項目については「充実」「実用」「訓練」,「関係」「自尊」「報酬」志向の尺度が,因子分析によって確認された。また,学業生活における親和性は,鈴木(教心発表 2016, 2017)同様,学校が好きとなる「学校親和」,学力を伸ばしたい「学習親和」,学びを深めたい「学問親和」の3因子を抽出することができた。
主体性を基準変数とし,自己変革の4尺度,市川(2001)の学習動機の6尺度を説明変数として,ステップワイズ方式により重回帰分析を行ったところ,自己変革の「評価的(対照的)」「作業的(操作的)」と学習動機の「関係志向」の3変数のモデルが有意となった(F(3,104)=16.0,p<0.01)。自由度調整済み決定係数はR2=.29であり,最も高い標準化係数は.36,-.32,.33で,1%水準で有意あった。
短1年と大1年,大3年ごとに主体性(全体)と自己変革の4尺度との相関係数を算出すると,5%水準で有意な相関に相違を見出すことができた。
考 察
主体性全体には「評価的」「作業的」のような外面性の高い自己変革が比較的影響している可能性があり,相関関係の結果からは,大3年にその傾向が強く,短1年では他に「向上」,大1年では「更新」の内面的な変革の関連が示唆された。
鈴木,教心発表2016,2017では,学習スタイルを識別する際に学習観の尺度が最も有効であることがわかった。しかし,学習観を構成する「主体性」の内容的妥当性が不充分であった。「主体性」は直感的(あるいは直観的)には理解されているが,定義は明確に定まったものがない。特に,類似性の高いと思われる積極性等との相違や関連性も充分に説明づけられていない。鈴木(教心発表2018)では,著者による「主体性」の作業仮説としての定義である「自己の変革」を特性として表す項目を用いて,諸変数との関連性を検討した。「自己の変革」のうち,自己の改善に関わる「更新的」関与が,浅海(1999)の子どもの生活における主体性尺度の「積極的」「方向づけ」に関係が強いことがわかった。本研究では,対象校を変え,学年間における,主体性と学業生活の自己評価との関連性を検討することで,主体性を構成する内容について整理することを目的とする。
方 法
手続き 学習時に「自己の変革」への関与として「能力を向上させたい」などの25項目を(鈴木,教心発表2018),全くそう思う~全くそうは思わないの7件法による回答を得た。また,日常活動における子どもの「主体性尺度」(浅海 1999)を用い, 20項目に対して,あてはまる~あてはまらないの4件法で回答を得た。学習動機と学習方略に関しては,市川(2001)による尺度を用いた。学期全体での授業満足度として,主観的確率として満足率の回答(授業満足率),受講した科目数と満足できた授業の科目数を回答してもらい,その割合も調べた(満足授業率)。また,学業生活における親和性についての15項目に対して,全くそう思う~全くそうは思わないの7件法で回答を得た。調査に関しては,全体傾向をフィードバックすることで,学業生活を振り返る等の目的も持つことを説明し,合わせて強制ではない旨も述べて,協力を要請した。調査時期 2018年前期終了時。調査対象者:短大1年30名,大学1年44名および3年51名の計125名(男性39名,女性86名)。平均年令は19.2才(SD=1.31)であった。
結 果
「自己変革」への関与を表した25項目に対して,探索的因子分析を実施した。固有値減衰率を基準とした最尤法によって4因子を抽出した後,斜交プロマックス解をもとめた。項目の共通点から,因子1は,自分を向上させようとする「向上的」関与,因子2は,比較することによって自己を見出そうとする「評価的(対照的」」関与,因子3は,整理などの作業をしてみて新たな気づきを得ようとする「作業的(操作的)」関与,因子4は,弱点を克服しようとする「更新的」関与と意味づけた。前回(鈴木,教心発表2018)の因子との一致度は必ずしも高くなかった。
浅海(1999)の主体性20項目に対して,尺度数の5つを抽出数として固定し,主因子法を実施し,回転バリマックス解をもとめた(累積寄与率43.6%)。前回(鈴木,教心発表2018),「知的好奇心」だけでなく「方向づけ」の項目が分散してしまい,「自己表現」「積極的な行動」「自己決定力」の尺度を構成する項目が,概ね保たれていた。尺度得点は浅海(1999)の構成にしたがって算出した
市川(2001)の学習動機36項目については「充実」「実用」「訓練」,「関係」「自尊」「報酬」志向の尺度が,因子分析によって確認された。また,学業生活における親和性は,鈴木(教心発表 2016, 2017)同様,学校が好きとなる「学校親和」,学力を伸ばしたい「学習親和」,学びを深めたい「学問親和」の3因子を抽出することができた。
主体性を基準変数とし,自己変革の4尺度,市川(2001)の学習動機の6尺度を説明変数として,ステップワイズ方式により重回帰分析を行ったところ,自己変革の「評価的(対照的)」「作業的(操作的)」と学習動機の「関係志向」の3変数のモデルが有意となった(F(3,104)=16.0,p<0.01)。自由度調整済み決定係数はR2=.29であり,最も高い標準化係数は.36,-.32,.33で,1%水準で有意あった。
短1年と大1年,大3年ごとに主体性(全体)と自己変革の4尺度との相関係数を算出すると,5%水準で有意な相関に相違を見出すことができた。
考 察
主体性全体には「評価的」「作業的」のような外面性の高い自己変革が比較的影響している可能性があり,相関関係の結果からは,大3年にその傾向が強く,短1年では他に「向上」,大1年では「更新」の内面的な変革の関連が示唆された。