日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

Sat. Sep 14, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB27] 概念変化における知識の正確性ならびに知識再構築に対する自己効力感の変化

ル・バー対決型/懐柔型ストラテジーの情報教示過程における変化

中西良文1, 梅本貴豊2, 大道一弘3 (1.三重大学, 2.京都外国語大学, 3.常磐大学)

Keywords:概念変化、自己効力感

 Pintrich, Marx, & Boyle(1993)は,動機づけの側面も考慮した概念変化である「暖かい概念変化モデル」において,自己効力感が重要な影響を及ぼしうると述べ,その影響については2つの側面があるとしている。1つめは,特定の課題を行うことに対する思考への確信という側面で,これは概念変化に即して考えた場合,自らの考えや概念に対する自信と読み替えることができる。そして,このような確信が高ければ,新しい概念に対して反発し,概念変化が阻害されると論じている。もう1つの側面は,自らの考えを変化させ,異なる知識を統合するのにうまく認知的な操作ができるという自信に対応する側面であり,このような自信が高ければ,概念変化が促進されると論じている。そこで,中西・大道・梅本(2018)は,前者を知識正確性に対する自己効力感,後者を知識再構築に対する自己効力感と捉え,これらの側面の自己効力感を測定する尺度を作成している。そして,概念教授ストラテジーに関する2つの方法(既有知識に大きく反する情報を最初から提示する方法:ル・バー対決型ストラテジー(以下,対決型)と,学習者の持つ既有知識に近い情報をまず提示し,徐々に大きく反する情報を提示していく方法: ル・バー懐柔型ストラテジー(以下,懐柔型); 伏見・麻柄, 1993)の前後において,2つの側面の自己効力感がどのように変化するかを検討している。本研究ではこれをさらに精緻化し,2つの概念教授ストラテジーにおける情報教示過程の途中の段階も含めて,自己効力感の2つの側面にどのような変化の違いが見られるか検討を行う。
方  法
研究協力者:心理学関連授業を受講している大学生ならびに短期大学生計153名(男性37名・女性115名・その他1名,平均年齢19.93歳, SD 5.69)
質問紙:本研究では,植松・相澤・阿部(2005)にならい,「家畜概念」に関する教材について書かれた冊子を読ませる中で概念変化を促す教授を行い,その前後における概念変化ならびに自己効力感の変化について検討することとした。具体的にはFigure 1のように①事前質問紙,②教授セッション,③事後質問紙というデザインで行うこととしたが,情報教示過程の変化を検討するため,冊子によって②教授セッションの1つめもしくは2つめの情報教示後に自己効力感に関する尺度への回答を求めた。教授ストラテジーについても2種類の異なるものが準備された。その結果,対決型ストラテジーの冊子は74名(2回目調査実施が第1情報教示後39名,第2情報教示後35名),懐柔型ストラテジーの冊子は79名(2回目調査実施が第1情報教示後40名,第2情報教示後39名)に配布された。フェースシートでは調査協力への同意を求めるとともに,一連の手続きが終わった後には,研究の主旨とともにここで扱った課題についての解説を行った。質問紙には中西他(2018)で作成された知識正確性に対する自己効力感と知識再構築に対する自己効力感を測定する尺度(14項目 7件法)が含まれた。冊子にはこの他にも質問が含まれたが,ここでは用いない。
結果と考察
 まず2つの自己効力感尺度において,連続回答が見られたデータについては,分析から除外することとした。調査時期(3)×教授ストラテジー(2)×2回目調査実施時期(2)の3要因分散分析を行ったところ,時期の主効果が見られた(Table 1参照)。多重比較の結果,どちらの自己効力感も1回目から2回目にかけて有意に高まっている様子が見られたため,これらの自己効力感は最初に概念変化を促す情報提示に出会ったときから大きく変化を見せるものなのかもしれない。