[PB28] 事前・事後学習と学習方略・授業への興味・理解度の関連について
キーワード:学習方略、講義型授業、事前・事後学習
問題と目的
学業の成否は大学満足感と関連することが示唆されており(松島・尾崎,2010),学生が主体的に学業に取り組むための方策を検討し,その効果を検証することは大学教育における喫緊の課題である。篠ヶ谷(2012)は,自立した学習者となるためには,本学習のみならず,事前,事後にも適切な方略を用いて学習を行うことの必要性を示唆している。事前の学習として,松島・尾崎(2017)では授業前に問いを提示したり,予習活動を課すことにより学習方略が促進され,授業に対する興味や理解度が高まる傾向が示された。とりわけ,知的好奇心低群において,問い提示と予習活動双方を取り入れることにより学習方略や授業への興味が促進する傾向が明らかになった。
しかし,事前・事後学習の両面から大学生の学習を検討した先行研究はまだ少ないことから,本研究では,事前学習のみならず事後学習(復習)を取り入れることの効果について,学習者の個人差変数も加えて検討を行うことを目的とする。
方 法
調査対象:2018年度前期に社会調査系の講義を受講した51名の大学生のうち,ベースライン期に行った質問紙に参加し,ベースライン期に1/2回,介入期に2/3回以上出席していた44名を対象とした。
授業の流れ:前述の通り,既に予習や授業前の問いの提示が有効であることが示されていることから,ベースライン期ではこの両者を授業内で行った。介入期では,前述のベースライン期の内容に加えて,事後学習として復習課題を提示した。予習と復習いずれも学内の授業システムから回答することとし,次の授業では予習・復習ともに全体に対してフィードバックを行った。
ベースライン期の質問紙(学習者の個人特性)
達成目標 田中・藤田(2003)による達成目標尺度より,マスタリー目標(学習や理解を通じて能力を高めることを目指す目標)およびパフォーマンス接近目標(自分の有能さを誇示し他人から良い評価を得ようとする目標)に関する各5項目を使用した。
ベースライン期の振り返り
(1)授業時の学習方略に関する尺度:佐藤(2006)の認知的能動性尺度のうち,7項目を使用した。
(2)授業への興味・理解度:各授業において,授業への興味・理解度,授業態度(各1項目)について尋ねた。(1)(2)ともに4件法で尋ねた。
介入期の振り返り 授業時の学習方略,授業への興味・理解度はベースライン期と同様。
結果と考察
達成目標の2尺度について,中央値で高低群に分類し,2つの達成目標の高低群および時期(ベースライン期/介入期)を独立変数,学習方略および授業興味・理解度を従属変数とした2要因分散分析(混合計画)を実施した。
(1)マスタリー目標×時期 マスタリー目標高低(F(1,22)=13.00, ηp2=.37, p<.01)および時期(F(1,22)=10.74, ηp2=.33, p<.01)の主効果が意であり(Figure 1),マスタリー目標高群,介入期の学習方略得点が高かった。授業興味・理解度についても,マスタリー目標高低(F(1,24)=11.81, ηp2=.33, p<.01)および時期(F(1,24)=9.17, ηp2=.28, p<.01)の主効果が有意であり(Figure 1),マスタリー目標高群,介入期の授業興味・理解度得点が高かった。
(2)パフォーマンス接近目標×時期 パフォーマンス接近目標高低(F(1,22)=8.30, ηp2=.27, p<.01)および時期(F(1,22)=12.27, ηp2=.36, p<.01)の主効果が有意であり,パフォーマンス接近目標高群,介入期の学習方略得点が高かった。授業興味・理解度についても,パフォーマンス接近目標高低(F(1,23)=7.93, ηp2=.26, p<.01)および時期(F(1,22)=8.99, ηp2=.28, p<.01)の主効果が有意であり,パフォーマンス接近目標高群,介入期の授業興味・理解度得点が高かった。
いずれも交互作用には有意差が見られず,また達成目標の2つの尺度による差異も見られなかったが,授業前の問い提示や予習の事前学習に加えて,授業後に復習課題を行うこと,またこれらのフィードバックを行うことにより,授業内での学習方略が促進されたり,授業への興味・関心が高まる可能性が示唆された。
学業の成否は大学満足感と関連することが示唆されており(松島・尾崎,2010),学生が主体的に学業に取り組むための方策を検討し,その効果を検証することは大学教育における喫緊の課題である。篠ヶ谷(2012)は,自立した学習者となるためには,本学習のみならず,事前,事後にも適切な方略を用いて学習を行うことの必要性を示唆している。事前の学習として,松島・尾崎(2017)では授業前に問いを提示したり,予習活動を課すことにより学習方略が促進され,授業に対する興味や理解度が高まる傾向が示された。とりわけ,知的好奇心低群において,問い提示と予習活動双方を取り入れることにより学習方略や授業への興味が促進する傾向が明らかになった。
しかし,事前・事後学習の両面から大学生の学習を検討した先行研究はまだ少ないことから,本研究では,事前学習のみならず事後学習(復習)を取り入れることの効果について,学習者の個人差変数も加えて検討を行うことを目的とする。
方 法
調査対象:2018年度前期に社会調査系の講義を受講した51名の大学生のうち,ベースライン期に行った質問紙に参加し,ベースライン期に1/2回,介入期に2/3回以上出席していた44名を対象とした。
授業の流れ:前述の通り,既に予習や授業前の問いの提示が有効であることが示されていることから,ベースライン期ではこの両者を授業内で行った。介入期では,前述のベースライン期の内容に加えて,事後学習として復習課題を提示した。予習と復習いずれも学内の授業システムから回答することとし,次の授業では予習・復習ともに全体に対してフィードバックを行った。
ベースライン期の質問紙(学習者の個人特性)
達成目標 田中・藤田(2003)による達成目標尺度より,マスタリー目標(学習や理解を通じて能力を高めることを目指す目標)およびパフォーマンス接近目標(自分の有能さを誇示し他人から良い評価を得ようとする目標)に関する各5項目を使用した。
ベースライン期の振り返り
(1)授業時の学習方略に関する尺度:佐藤(2006)の認知的能動性尺度のうち,7項目を使用した。
(2)授業への興味・理解度:各授業において,授業への興味・理解度,授業態度(各1項目)について尋ねた。(1)(2)ともに4件法で尋ねた。
介入期の振り返り 授業時の学習方略,授業への興味・理解度はベースライン期と同様。
結果と考察
達成目標の2尺度について,中央値で高低群に分類し,2つの達成目標の高低群および時期(ベースライン期/介入期)を独立変数,学習方略および授業興味・理解度を従属変数とした2要因分散分析(混合計画)を実施した。
(1)マスタリー目標×時期 マスタリー目標高低(F(1,22)=13.00, ηp2=.37, p<.01)および時期(F(1,22)=10.74, ηp2=.33, p<.01)の主効果が意であり(Figure 1),マスタリー目標高群,介入期の学習方略得点が高かった。授業興味・理解度についても,マスタリー目標高低(F(1,24)=11.81, ηp2=.33, p<.01)および時期(F(1,24)=9.17, ηp2=.28, p<.01)の主効果が有意であり(Figure 1),マスタリー目標高群,介入期の授業興味・理解度得点が高かった。
(2)パフォーマンス接近目標×時期 パフォーマンス接近目標高低(F(1,22)=8.30, ηp2=.27, p<.01)および時期(F(1,22)=12.27, ηp2=.36, p<.01)の主効果が有意であり,パフォーマンス接近目標高群,介入期の学習方略得点が高かった。授業興味・理解度についても,パフォーマンス接近目標高低(F(1,23)=7.93, ηp2=.26, p<.01)および時期(F(1,22)=8.99, ηp2=.28, p<.01)の主効果が有意であり,パフォーマンス接近目標高群,介入期の授業興味・理解度得点が高かった。
いずれも交互作用には有意差が見られず,また達成目標の2つの尺度による差異も見られなかったが,授業前の問い提示や予習の事前学習に加えて,授業後に復習課題を行うこと,またこれらのフィードバックを行うことにより,授業内での学習方略が促進されたり,授業への興味・関心が高まる可能性が示唆された。