[PB37] ポジティブ教育と成育環境要因(2)
24の強みと学校・家庭の目標構造
Keywords:ポジティブ心理学、品性の強み、成育環境
問 題
島井他(2018),宇惠他(2018),竹橋他(2018),島井他(2019)によるポジティブ教育に関する一連の研究では,大学生と高校生を対象とした調査研究によって,24項目から成る品性の強み質問紙(CST24)を作成し,その妥当性の検証,および成長マインドセットとの関連を検討した。
本研究では,24の品性の強みが形成される成育環境について検討した。特に,中学時代の学校の関わりと親の関わりに注目し,それぞれの関わりと24の強みとの関連を調べ,強みを形成させる成育環境についての基礎的な知見を得ることを目的とした。
方 法
調査対象者 インターネット調査会社による調査を実施した。男性800名,女性800名,合計1600名,平均年齢40.19±10.69歳(最大値59歳,最小値20歳)であった。
調査内容 (1)現在のグリット(竹橋,2018)。(2)品性の強み質問紙CST24。CST24は,大竹他(2005)による日本版生き方の原則調査票VIA-ISを参考にして作成された24の品性の強みを尋ねる24項目から成る調査票であった。(3)中学時代の学校の関わり14項目。学校の目標構造(習得重視6項目,遂行重視5項目)と学校享受感3項目の3要因を尋ねた。(4)中学時代の親の関わり17項目。親の目標構造(習得重視6項目,遂行重視5項目)と社会性重視6項目の3要因を尋ねた。
倫理的配慮 本研究は,関西福祉科学大学の研究倫理委員会の承認を受けている(承認番号18-46)。
結 果
品性の強み24項目と,学校の関わり3要因,および親の関わり3要因との相関係数を求め,.300以上の相関が含まれる結果をTable 1に示した。
学校の関わり,親の関わりと関連が見られた6つの品性の強みは,島井他(2018,2019)での「人間力」因子(審美性,感謝心,希望,精神性)と「対人力」因子(親密性,親切心)に含まれる項目であり,「知力」や「統制力」の因子に含まれる項目とは関連が見られなかった。また,「社会性重視_親」は6つの強みすべてにおいて,他の相関係数と比較し高い値を示し,学校と親ともに,習得重視の相関が遂行重視の相関よりも高い値を示していた。
一方,これら6つの強みは現在のグリットとの関連が特に深いというわけではなく(.232~.352),グリットとの関連が深い(.400以上)強みは,上位から,勤勉性(.574),勇気(.441),熱意(.422),判断力(.411)など,「知力」因子に含まれる項目であった。
考 察
目標や志,夢をもって前に進み,人の幸せを願い,感謝の心をもって,社会に役立つ人となるように育てられると,それらに応じた品性の強みが形成されることがデータとして示された。また,遂行重視よりも習得重視の関わりが品性の強みの形成に関連している可能性が示された。
さらに,品性の強みは,学校や親との関わりに関連する側面と,グリットに関連する側面が異なることを示唆する結果が得られた。
付 記
本研究は,平成30年度関西福祉科学大学共同研究費の助成を受けた。
島井他(2018),宇惠他(2018),竹橋他(2018),島井他(2019)によるポジティブ教育に関する一連の研究では,大学生と高校生を対象とした調査研究によって,24項目から成る品性の強み質問紙(CST24)を作成し,その妥当性の検証,および成長マインドセットとの関連を検討した。
本研究では,24の品性の強みが形成される成育環境について検討した。特に,中学時代の学校の関わりと親の関わりに注目し,それぞれの関わりと24の強みとの関連を調べ,強みを形成させる成育環境についての基礎的な知見を得ることを目的とした。
方 法
調査対象者 インターネット調査会社による調査を実施した。男性800名,女性800名,合計1600名,平均年齢40.19±10.69歳(最大値59歳,最小値20歳)であった。
調査内容 (1)現在のグリット(竹橋,2018)。(2)品性の強み質問紙CST24。CST24は,大竹他(2005)による日本版生き方の原則調査票VIA-ISを参考にして作成された24の品性の強みを尋ねる24項目から成る調査票であった。(3)中学時代の学校の関わり14項目。学校の目標構造(習得重視6項目,遂行重視5項目)と学校享受感3項目の3要因を尋ねた。(4)中学時代の親の関わり17項目。親の目標構造(習得重視6項目,遂行重視5項目)と社会性重視6項目の3要因を尋ねた。
倫理的配慮 本研究は,関西福祉科学大学の研究倫理委員会の承認を受けている(承認番号18-46)。
結 果
品性の強み24項目と,学校の関わり3要因,および親の関わり3要因との相関係数を求め,.300以上の相関が含まれる結果をTable 1に示した。
学校の関わり,親の関わりと関連が見られた6つの品性の強みは,島井他(2018,2019)での「人間力」因子(審美性,感謝心,希望,精神性)と「対人力」因子(親密性,親切心)に含まれる項目であり,「知力」や「統制力」の因子に含まれる項目とは関連が見られなかった。また,「社会性重視_親」は6つの強みすべてにおいて,他の相関係数と比較し高い値を示し,学校と親ともに,習得重視の相関が遂行重視の相関よりも高い値を示していた。
一方,これら6つの強みは現在のグリットとの関連が特に深いというわけではなく(.232~.352),グリットとの関連が深い(.400以上)強みは,上位から,勤勉性(.574),勇気(.441),熱意(.422),判断力(.411)など,「知力」因子に含まれる項目であった。
考 察
目標や志,夢をもって前に進み,人の幸せを願い,感謝の心をもって,社会に役立つ人となるように育てられると,それらに応じた品性の強みが形成されることがデータとして示された。また,遂行重視よりも習得重視の関わりが品性の強みの形成に関連している可能性が示された。
さらに,品性の強みは,学校や親との関わりに関連する側面と,グリットに関連する側面が異なることを示唆する結果が得られた。
付 記
本研究は,平成30年度関西福祉科学大学共同研究費の助成を受けた。