[PB46] 高校生・大学生のいじめ場面での傍観行動を規定する要因(2)
LINEコミュニケーション場面の検討
キーワード:いじめ、傍観行動、SNS
問題と目的
いじめ対策の重要性が叫ばれ続ける中,いわゆるネットいじめは,最も報告数が多い高等学校でいじめ全体の2割弱を占め,全校種総数では1.2万件を超えている(文部科学省, 2018)。しかし,学校現場の声からは,上記の数値は氷山の一角に過ぎないであろうと推測され,基礎的・実践的な知見の蓄積が急務である。
児童生徒のネット利用の中心は,スマートフォンを用い,好きな相手といつでもどこでもつながれるSNSである。昨今の児童生徒のSNS利用は,目的や相手に応じて複数のSNSを使い分けることが主流である(若本, 2018)。本研究では,子どもたちの利用率が最も高く,現実の友人を主たる交流相手とするがゆえに,学校現場における問題と直結しやすいLINEを取り上げる。そこでのいじめの傍観行動について,研究(1)と同じ枠組みで検討し異同を明らかにすることで,LINEコミュニケーション場面におけるいじめ傍観行動の特徴について考察することを目的とする。
方 法
高校1年生(2016年6月実施)と大学生(2017年1月実施)を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は研究(1)と同じく,①いじめ場面での傍観行動(6項目3件法)②いじめ傍観への罪悪感(6項目4件法)③被異質視不安(11項目5件法)他フェイス項目等であった。本研究においては,協力者のうちLINEの利用者のみを抽出したため,分析対象者は632名(高校生513名,女子52.4%;大学生122名,女子48.4%,年齢M(SD):16.2(1.9))であった。
結 果
研究(1)と同じ変数(ただし傍観への罪悪感は,LINEコミュニケーション場面におけるもの)を用いて,LINEでのいじめ場面における傍観行動を基準変数とする4階層の階層的重回帰分析を行ったところ,すべての階層においてR2が有意であった。R2の差分は,心理変数2変数を投入したStep2で被害者との親密性にかかわらず有意であり,心理変数間の交互作用を想定したStep4では被害者との親密度が仲良しの場合のみ有意であった。一方,心理変数とデモグラフィック変数との交互作用を想定したStep3は有意ではなかった。
βに関しては,被害者との親密度によらず有意だったのは傍観への罪悪感であった。加えて,被害者が仲良しの友人である場合には傍観への罪悪感と被異質視不安の交互作用項,被害者との親密度が普通の場合には性別が有意であった。
考 察
LINEコミュニケーション場面におけるいじめ傍観行動の規定因を検討したところ,従来型いじめと同様に,傍観への罪悪感が傍観行動を抑制することが示された。それに加え,相手との親密度によって,LINEでの傍観行動に対して異なる要因が影響を与えることも示された。相手との親密度が普通,つまり特段仲が良い相手ではない場合,男子の方が傍観行動をとりやすかった。LINE場面において男子の方が攻撃的な対応をとりやすいことは先行研究でも見出されており(若本, 2016),それと符合する結果であった。
興味深かったのは,相手が仲の良い友人である場合,罪悪感が傍観行動を抑制する効果が被異質視不安の影響を受けること,さらにこの現象が従来型いじめ場面においても見出されたことである。罪悪感が,傍観している友人と自分自身に向けられる感情であるのに対し,被異質視不安は周囲の人々の自分に対する思惑を不安に思う感情であり,見る側・見られる側双方の自己が交錯する中での複雑な葛藤が窺われた。傍観行動というある意味
第三者的な行動であろうと,表面化する対人トラブルの面のみならず,自己感情における葛藤をももたらすことに留意を喚起する結果である。
付 記
本研究は2015年度安心ネットづくり促進協議会研究支援事業の助成を受けて実施された。
いじめ対策の重要性が叫ばれ続ける中,いわゆるネットいじめは,最も報告数が多い高等学校でいじめ全体の2割弱を占め,全校種総数では1.2万件を超えている(文部科学省, 2018)。しかし,学校現場の声からは,上記の数値は氷山の一角に過ぎないであろうと推測され,基礎的・実践的な知見の蓄積が急務である。
児童生徒のネット利用の中心は,スマートフォンを用い,好きな相手といつでもどこでもつながれるSNSである。昨今の児童生徒のSNS利用は,目的や相手に応じて複数のSNSを使い分けることが主流である(若本, 2018)。本研究では,子どもたちの利用率が最も高く,現実の友人を主たる交流相手とするがゆえに,学校現場における問題と直結しやすいLINEを取り上げる。そこでのいじめの傍観行動について,研究(1)と同じ枠組みで検討し異同を明らかにすることで,LINEコミュニケーション場面におけるいじめ傍観行動の特徴について考察することを目的とする。
方 法
高校1年生(2016年6月実施)と大学生(2017年1月実施)を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は研究(1)と同じく,①いじめ場面での傍観行動(6項目3件法)②いじめ傍観への罪悪感(6項目4件法)③被異質視不安(11項目5件法)他フェイス項目等であった。本研究においては,協力者のうちLINEの利用者のみを抽出したため,分析対象者は632名(高校生513名,女子52.4%;大学生122名,女子48.4%,年齢M(SD):16.2(1.9))であった。
結 果
研究(1)と同じ変数(ただし傍観への罪悪感は,LINEコミュニケーション場面におけるもの)を用いて,LINEでのいじめ場面における傍観行動を基準変数とする4階層の階層的重回帰分析を行ったところ,すべての階層においてR2が有意であった。R2の差分は,心理変数2変数を投入したStep2で被害者との親密性にかかわらず有意であり,心理変数間の交互作用を想定したStep4では被害者との親密度が仲良しの場合のみ有意であった。一方,心理変数とデモグラフィック変数との交互作用を想定したStep3は有意ではなかった。
βに関しては,被害者との親密度によらず有意だったのは傍観への罪悪感であった。加えて,被害者が仲良しの友人である場合には傍観への罪悪感と被異質視不安の交互作用項,被害者との親密度が普通の場合には性別が有意であった。
考 察
LINEコミュニケーション場面におけるいじめ傍観行動の規定因を検討したところ,従来型いじめと同様に,傍観への罪悪感が傍観行動を抑制することが示された。それに加え,相手との親密度によって,LINEでの傍観行動に対して異なる要因が影響を与えることも示された。相手との親密度が普通,つまり特段仲が良い相手ではない場合,男子の方が傍観行動をとりやすかった。LINE場面において男子の方が攻撃的な対応をとりやすいことは先行研究でも見出されており(若本, 2016),それと符合する結果であった。
興味深かったのは,相手が仲の良い友人である場合,罪悪感が傍観行動を抑制する効果が被異質視不安の影響を受けること,さらにこの現象が従来型いじめ場面においても見出されたことである。罪悪感が,傍観している友人と自分自身に向けられる感情であるのに対し,被異質視不安は周囲の人々の自分に対する思惑を不安に思う感情であり,見る側・見られる側双方の自己が交錯する中での複雑な葛藤が窺われた。傍観行動というある意味
第三者的な行動であろうと,表面化する対人トラブルの面のみならず,自己感情における葛藤をももたらすことに留意を喚起する結果である。
付 記
本研究は2015年度安心ネットづくり促進協議会研究支援事業の助成を受けて実施された。