日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PB] ポスター発表 PB(01-67)

2019年9月14日(土) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PB48] 保護者との情動交流が小学生の無気力感に与える影響

学年・性別要因からの検討

牧郁子 (大阪教育大学)

キーワード:小学生、無気力感、情動交流

目  的
 牧(印刷中)は,児童期の認知情動発達を鑑み,中学生における無気力感の構成要因と示唆されている随伴経験,非随伴経験,コーピング・エフィカシー,思考の偏りに,保護者との情動交流を加え,小学生における無気力感のメカニズムを構造方程式モデルによって検証した。その結果,随伴経験からコーピング・エフィカシー,思考の偏りを経て無気力感につながる中学生の無気力感モデルとは違い,保護者との感情交流がコーピング・エフィカシーおよび思考の偏りにつながり,その影響が随伴経験・非随伴経験を媒介して無気力感につながる流れが示唆された(牧,印刷中)。
 さらに学年別の無気力感および無気力感関連要因の違いを検討した結果,6年生が最も保護者との情動交流,コーピング・エフィカシー,随伴経験が有意に低く,思考の偏り・非随伴経験・無気力感が有意に高い結果となった(牧,2017a)。一方,性別における無気力感および無気力感関連要因の違いを検討した結果,男子の方が女子よりも,保護者との情動交流,コーピング・エフィカシー,随伴経験が有意に低く,思考の偏り・非随伴経験・無気力感が有意に高い結果となった(牧,2017b)。
 以上を踏まえ本研究では,発達段階の違い・性差の双方を踏まえた小学生における無気力感のメカニズムを検討するため,学年と性別をかけあわせたデータに基づく構造式モデルを通じて,その違いを検証することとする。
方  法
調査協力者
 大阪府・滋賀県の小学生4年生~6年生1556名を対象に,調査を行い,分析可能な1534名(男子=802名,女子=732名;4年生= 502名,5年生=533名,6年生=499名;平均年齢10.84歳,SD= 0.89)を対象に検討を行った。
倫理的配慮
 調査依頼の際,各協力校における管理職へ「研究概要」「調査概要」「調査項目」に関わる事前説明の文書を送付し,研究意図・実施に関わる児童への物理的・精神的影響・調査項目内容に関わるチェックを受けた。さらに実施に際しては,児童のプライバシーへの懸念に配慮して無記名式で調査を行い,クラスごとに調査用紙回収袋を用意し,回答後速やかに回収できるよう配慮した。
調査用紙
 児童用・情動交流尺度(牧,印刷中),児童用・主観的随伴経験尺度(牧,印刷中),児童用・コーピング・エフィカシー尺度(牧,印刷中),児童用・思考の偏り尺度(牧,印刷中),小学生用無気力感尺度(笠井ら,1995)を実施した。
結果と考察
 牧(印刷中)における構造式モデルに基づき,各学年とも男女別に,有意でないパスを削除しながら探索的にパス解析を行った。その結果,学年や性別の違いにより,保護者との感情交流が他要因に与える影響が異なる可能性が示された。
 4年生の男子・女子(Figure,1,2)では,ポジティブ情動を保護者に送信しかつ受信されていると,コーピング・エフィカシーや随伴経験が高まり,非随伴経験が低減する可能性が共に認められた。その一方,男子はネガティブ情動の送信・受信が思考の偏りや非随伴経験に影響していたのに対して,女子はその有意な影響が認められなかった。以上から,児童期の発達段階の違いや性差に配慮した無気力感の予防・対処の必要性が示唆された。
付  記
 本研究はJSPS科研費・基盤研究(C)(課題番号25380927)の助成を受けたものです。