[PC24] 児童の積極的授業参加に関する研究(32)
内発的意欲・達成意欲との関連
キーワード:積極的授業参加行動、内発的意欲、達成意欲
問題と目的
児童の積極的授業参加行動に関するこれまでの研究から,積極的授業参加行動は教科に対する動機づけと関連すること,特に,「注視・傾聴」行動と強く関連することが明らかになっている(布施・小平・安藤,2006他)。
では,教科や学習内容に対する動機づけと学習行動全般に対する動機づけでは,積極的授業参加行動との関連に違いが見られるのだろうか。本研究では,学習全般に対する動機づけとして,新しいことに取り組む内発的意欲と困難なこと最後までやり遂げる達成意欲(杉村・北村・鈴木・多喜, 1990)を取り上げ,積極的授業参加行動とどのような関連が見られるのかについて検討することを目的とする。
方 法
調査対象者:関東地方の公立小学校1校の4年生~6年生191名(4年生63名,5年生62名,6年生66名,男児103名,女児88名)。
調査内容:(1) 積極的授業参加行動(14項目, 4件法) 安藤・小平・布施(2018)で作成された積極的授業参加行動尺度の短縮版を用いた。国語の授業における積極的授業参加行動を尋ねた。「注視・傾聴」「挙手・発言」「準備・宿題」の3下位尺度から構成された。
(2) 内発的意欲(9項目,4件法) 杉村ら(1990)で用いられた内発的意欲を測定する10項目のうち, 9項目を用いた。
(3) 達成意欲(7項目,4件法) 内発的意欲と同じく杉村ら(1990)で用いられた10項目のうち,7項目を用いた。内発的意欲,達成意欲の項目については,小学校低学年にも理解しやすいように一部表現を変えた。
併せて,杉村ら(1990)の学習回避動機尺度も実施したが,本研究では分析の対象としない。
手続き:担任教師に依頼し,クラス毎に実施した。
調査時期:2018年11月。
結果と考察
尺度構成と下位尺度間の関連 積極的授業参加行動尺度,内発的意欲,達成意欲は先行研究に従って下位尺度を構成し,項目得点平均点を下位尺度得点とした。それぞれの下位尺度間の関連を検討するため,相関係数を算出した(Table 1)。内発的意欲は,積極的授業参加行動のうち,「注視・傾聴」と「挙手・発言」に比べ,「準備・宿題」との関連は弱いことが示された。一方達成意欲はいずれの積極的授業参加行動とも関連が見られた。
内発的意欲,達成意欲が積極的授業参加行動に及ぼす影響 内発的意欲および達成意欲が積極的授業参加行動に及ぼす影響を検討するため,内発的意欲,達成意欲から3つの積極的授業参加行動へのパスを仮定し,積極的授業参加行動の誤差間の共分散を仮定したモデルによるパス解析を実施した。有意でなかったパスを削除してモデルを修正したところモデルの適合度は,CFI=.99であり,データに適合していると判断された。結果として,内発的意欲から「挙手・発言」への正のパスが有意であること,また,達成意欲から「注視・傾聴」および「準備・宿題」への正のパスが有意であった。
布施ら(2006),安藤・布施・小平(2008)では,教科に対する動機づけや自律的な動機づけと積極的授業参加行動の中でも「注視・傾聴」行動が強く関連することが示された。しかし,本研究の結果からは,新しいことに取り組む内発的意欲は,「挙手・発言」を促し,最後までやり遂げる達成意欲は「注視・傾聴」と「準備・宿題」を促進することが示された。これらの結果の相違は,学習内容や教科への動機づけと学習全般への動機づけが,それぞれ異なる積極的授業参加行動へ影響を及ぼすことを示唆すると考えられる。
付 記
本研究は,2018年度明星大学教育学部卒業 渡部拳太氏の卒業研究の一部を再分析,再構成したものである。
児童の積極的授業参加行動に関するこれまでの研究から,積極的授業参加行動は教科に対する動機づけと関連すること,特に,「注視・傾聴」行動と強く関連することが明らかになっている(布施・小平・安藤,2006他)。
では,教科や学習内容に対する動機づけと学習行動全般に対する動機づけでは,積極的授業参加行動との関連に違いが見られるのだろうか。本研究では,学習全般に対する動機づけとして,新しいことに取り組む内発的意欲と困難なこと最後までやり遂げる達成意欲(杉村・北村・鈴木・多喜, 1990)を取り上げ,積極的授業参加行動とどのような関連が見られるのかについて検討することを目的とする。
方 法
調査対象者:関東地方の公立小学校1校の4年生~6年生191名(4年生63名,5年生62名,6年生66名,男児103名,女児88名)。
調査内容:(1) 積極的授業参加行動(14項目, 4件法) 安藤・小平・布施(2018)で作成された積極的授業参加行動尺度の短縮版を用いた。国語の授業における積極的授業参加行動を尋ねた。「注視・傾聴」「挙手・発言」「準備・宿題」の3下位尺度から構成された。
(2) 内発的意欲(9項目,4件法) 杉村ら(1990)で用いられた内発的意欲を測定する10項目のうち, 9項目を用いた。
(3) 達成意欲(7項目,4件法) 内発的意欲と同じく杉村ら(1990)で用いられた10項目のうち,7項目を用いた。内発的意欲,達成意欲の項目については,小学校低学年にも理解しやすいように一部表現を変えた。
併せて,杉村ら(1990)の学習回避動機尺度も実施したが,本研究では分析の対象としない。
手続き:担任教師に依頼し,クラス毎に実施した。
調査時期:2018年11月。
結果と考察
尺度構成と下位尺度間の関連 積極的授業参加行動尺度,内発的意欲,達成意欲は先行研究に従って下位尺度を構成し,項目得点平均点を下位尺度得点とした。それぞれの下位尺度間の関連を検討するため,相関係数を算出した(Table 1)。内発的意欲は,積極的授業参加行動のうち,「注視・傾聴」と「挙手・発言」に比べ,「準備・宿題」との関連は弱いことが示された。一方達成意欲はいずれの積極的授業参加行動とも関連が見られた。
内発的意欲,達成意欲が積極的授業参加行動に及ぼす影響 内発的意欲および達成意欲が積極的授業参加行動に及ぼす影響を検討するため,内発的意欲,達成意欲から3つの積極的授業参加行動へのパスを仮定し,積極的授業参加行動の誤差間の共分散を仮定したモデルによるパス解析を実施した。有意でなかったパスを削除してモデルを修正したところモデルの適合度は,CFI=.99であり,データに適合していると判断された。結果として,内発的意欲から「挙手・発言」への正のパスが有意であること,また,達成意欲から「注視・傾聴」および「準備・宿題」への正のパスが有意であった。
布施ら(2006),安藤・布施・小平(2008)では,教科に対する動機づけや自律的な動機づけと積極的授業参加行動の中でも「注視・傾聴」行動が強く関連することが示された。しかし,本研究の結果からは,新しいことに取り組む内発的意欲は,「挙手・発言」を促し,最後までやり遂げる達成意欲は「注視・傾聴」と「準備・宿題」を促進することが示された。これらの結果の相違は,学習内容や教科への動機づけと学習全般への動機づけが,それぞれ異なる積極的授業参加行動へ影響を及ぼすことを示唆すると考えられる。
付 記
本研究は,2018年度明星大学教育学部卒業 渡部拳太氏の卒業研究の一部を再分析,再構成したものである。