[PC38] テキストメッセンジャーのグループチャットにおいて返信を待つことでネガティブ感情が生じるまでの時間と個人特性
キーワード:LINEグループトーク、感情、パーソナリティ
はじめに
子ども達にもスマートフォンが普及し,彼らのコミュニケーション形態も豊富になった。現在,日本国内ではLINEのテキストメッセンジャーが広く利用されている。しかし便利な一方で,LINE上のトラブルもたびたび報告されている。そうした中,教員には,子ども達の教室内の活動だけでなく,学外等,プライベートなコミュニケーションの現状も理解し,情報メディアに対する適切な指導をできることが,情報教育として求められる。
LINEで(長所でもあるが)トラブルの原因にもなる機能として,既読通知とグループ作成がある。そこで著者らは,この二つの機能に注目した調査を実施した。具体的には,LINEのグループトークにおいて,返信を待たせる場合あるいは待たされる場合に,ネガティブ感情が生じるまでの時間を,既読/未読状態の別や,構成メンバーの異なる複数のグループを設定した上で,質問紙で調査した。この結果の一部は,既にいくつか発表済みであるから,本稿では,未発表の分析結果を報告する。
本発表では,LINEのグループトークで,グループメンバーに返信を求めるメッセージを送信したが,返信がなかなか届かない時,どのぐらい待たされるとネガティブ感情が生じるか,つまりネガティブ感情が生じるまでの時間と,待たされる人自身(調査対象者)のパーソナリティ及びLINE依存度との関係について報告する。なお,待たせる立場での個人特性とネガティブ感情の生じるまでの時間との関係は,宇宿他(2019)で発表した。
方 法
上述したように,この調査(n=183,女性のみ,平均20.27歳,SD1.17)の結果の一部は既に発表しているため,調査方法の全容は割愛し,ここでは本発表に関連する部分のみを述べる。この質問紙では,まず調査対象者に,彼女らが5種類の異なったメンバー構成のグループに参加していると想定してもらった。そして休日の正午に,各グループにおいて全メンバーに返信を求めるメッセージを送信した時,半数のメンバーからの返信がなく未読または既読状態が続いていることで,彼女らに不安,悲しみ,怒り,罪悪が生じる時間を回答してもらった。時間の選択肢は,当日の13時から1時間刻みの25段階(翌日の13時まで)に加えて「(26)翌日の13時よりも後」と「(27)生じない」の全27個であった。5種類のグループは,例えば調査対象者が恋愛感情を抱く人が含まれるグループ,友達だけのグループ,ゼミや学科等の同学年等のグループ等であった。更にIgarashi他(2008)の携帯メール依存尺度をLINE版に変更したLINE依存尺度及びTen Item Per-sonality Inventory(TIPI-J)(小塩他, 2012)への回答を求めた。
結果と考察
TIPI-Jの5つの下位尺度得点及びLINE依存尺度の3つの下位尺度得点と,各条件でネガティブ感情が生じるまでの時間との相関係数を計算した。
まずTIPI-Jに関して,宇宿他(2019)の待たせる側では,協調性と神経症傾向の得点が高い人ほどネガティブ感情を短い時間で生じることを示したが,待つ側では,協調性の他に,外向性と勤勉性で時間との間に負の相関が見られた。一方,神経症傾向では関係は認められなかった。概観すると協調性の得点が高いと不安,悲しみ,怒りが,外向性では主に怒りが,勤勉性では悲しみがより短い時間で生じる傾向が見られた。なおグループの種類による傾向もあるが,本稿では割愛する。
LINE依存に関して,ネガティブ感情が生じるまでの時間は,宇宿他と同様に,情動的な反応と脱対人コミュニケーションの得点との間に負の相関が示された。なお,感情の種類は,不安,悲しみ,怒りであり,罪悪では関係が認められなかった。
結果から,返信を待つ側と待たせる側では,ネガティブ感情の生じるまでの時間にパーソナリティが及ぼす影響には異なる部分があり,LINE依存では,両者で同様の影響が見られると考えられる。
参考文献
Igarashi他 (2008). No mobile, no life: Self- perception and text-message dependency among Japanese high school students. Computers in Human Behavior, 24(5), 2311-2324.
小塩真司他 (2012).日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)作成の試み. パーソナリティ研究, 21(1),40-52.
宇宿公紀他 (2019). LINEグループにおいて返信ができないことで生じるネガティブ感情:ネガティブ感情が生じるまでの時間と性格特性及びLINEメール依存度との関係. 日本認知心理学会第17回大会発表論文集, P3-08.
付 記
本研究は科研費18K02871,18K02912の助成を受けて実施されました。感謝いたします。
子ども達にもスマートフォンが普及し,彼らのコミュニケーション形態も豊富になった。現在,日本国内ではLINEのテキストメッセンジャーが広く利用されている。しかし便利な一方で,LINE上のトラブルもたびたび報告されている。そうした中,教員には,子ども達の教室内の活動だけでなく,学外等,プライベートなコミュニケーションの現状も理解し,情報メディアに対する適切な指導をできることが,情報教育として求められる。
LINEで(長所でもあるが)トラブルの原因にもなる機能として,既読通知とグループ作成がある。そこで著者らは,この二つの機能に注目した調査を実施した。具体的には,LINEのグループトークにおいて,返信を待たせる場合あるいは待たされる場合に,ネガティブ感情が生じるまでの時間を,既読/未読状態の別や,構成メンバーの異なる複数のグループを設定した上で,質問紙で調査した。この結果の一部は,既にいくつか発表済みであるから,本稿では,未発表の分析結果を報告する。
本発表では,LINEのグループトークで,グループメンバーに返信を求めるメッセージを送信したが,返信がなかなか届かない時,どのぐらい待たされるとネガティブ感情が生じるか,つまりネガティブ感情が生じるまでの時間と,待たされる人自身(調査対象者)のパーソナリティ及びLINE依存度との関係について報告する。なお,待たせる立場での個人特性とネガティブ感情の生じるまでの時間との関係は,宇宿他(2019)で発表した。
方 法
上述したように,この調査(n=183,女性のみ,平均20.27歳,SD1.17)の結果の一部は既に発表しているため,調査方法の全容は割愛し,ここでは本発表に関連する部分のみを述べる。この質問紙では,まず調査対象者に,彼女らが5種類の異なったメンバー構成のグループに参加していると想定してもらった。そして休日の正午に,各グループにおいて全メンバーに返信を求めるメッセージを送信した時,半数のメンバーからの返信がなく未読または既読状態が続いていることで,彼女らに不安,悲しみ,怒り,罪悪が生じる時間を回答してもらった。時間の選択肢は,当日の13時から1時間刻みの25段階(翌日の13時まで)に加えて「(26)翌日の13時よりも後」と「(27)生じない」の全27個であった。5種類のグループは,例えば調査対象者が恋愛感情を抱く人が含まれるグループ,友達だけのグループ,ゼミや学科等の同学年等のグループ等であった。更にIgarashi他(2008)の携帯メール依存尺度をLINE版に変更したLINE依存尺度及びTen Item Per-sonality Inventory(TIPI-J)(小塩他, 2012)への回答を求めた。
結果と考察
TIPI-Jの5つの下位尺度得点及びLINE依存尺度の3つの下位尺度得点と,各条件でネガティブ感情が生じるまでの時間との相関係数を計算した。
まずTIPI-Jに関して,宇宿他(2019)の待たせる側では,協調性と神経症傾向の得点が高い人ほどネガティブ感情を短い時間で生じることを示したが,待つ側では,協調性の他に,外向性と勤勉性で時間との間に負の相関が見られた。一方,神経症傾向では関係は認められなかった。概観すると協調性の得点が高いと不安,悲しみ,怒りが,外向性では主に怒りが,勤勉性では悲しみがより短い時間で生じる傾向が見られた。なおグループの種類による傾向もあるが,本稿では割愛する。
LINE依存に関して,ネガティブ感情が生じるまでの時間は,宇宿他と同様に,情動的な反応と脱対人コミュニケーションの得点との間に負の相関が示された。なお,感情の種類は,不安,悲しみ,怒りであり,罪悪では関係が認められなかった。
結果から,返信を待つ側と待たせる側では,ネガティブ感情の生じるまでの時間にパーソナリティが及ぼす影響には異なる部分があり,LINE依存では,両者で同様の影響が見られると考えられる。
参考文献
Igarashi他 (2008). No mobile, no life: Self- perception and text-message dependency among Japanese high school students. Computers in Human Behavior, 24(5), 2311-2324.
小塩真司他 (2012).日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)作成の試み. パーソナリティ研究, 21(1),40-52.
宇宿公紀他 (2019). LINEグループにおいて返信ができないことで生じるネガティブ感情:ネガティブ感情が生じるまでの時間と性格特性及びLINEメール依存度との関係. 日本認知心理学会第17回大会発表論文集, P3-08.
付 記
本研究は科研費18K02871,18K02912の助成を受けて実施されました。感謝いたします。