[PC60] 学級の異質拒否傾向
学級状態の違いによる検討
キーワード:小学校通常学級、インクルーシブ、異質拒否傾向
問題と目的
インクルーシブ教育が提唱され,通常学級にも一定の割合で発達障害やその疑いのある児童が含まれていることを前提とした学級経営が求められている(例えば,太田・石田,2009;小牧・田中・渡邉,2006;村田・松崎,2009)。インクルーシブ教育が目指すのは共生社会の実現である。そのためには受容的な学級雰囲気があり,対象児が周囲の児童に受け入れられ,所属学級に適応できているかどうかが重要である(深沢・河村,2012)。
本研究は,学級の受容度を異質拒否傾向によって測定し,それを学級状態別(学級タイプ別)に検討することにより,どのような学級状態がインクルーシブ教育の理念に適うものであるかを実証的に明らかにすることが目的である。
方 法
質問紙調査時期:調査は,2018年1月下旬~2月中旬に実施された。
調査対象:A県,B県の小学校4~6年生2478名(115学級)。
調査手続:調査は,第一著者が各校の校長に依頼し,協力の承諾が得られた学校を直接訪問して学校側担当者に説明し,以下の2つ尺度を実施した。①「学級異質拒否傾向尺度」異質拒否傾向・被異質視不安項目(高坂,2010)のうち,異質拒否傾向10項目のみを取り上げた。異質拒否傾向・被異質視不安項目(高坂,2010)は,中学生,高校生,大学生を対象として作成された5件法による青年期向けの尺度であったため,項目内容を参考に,小学生向けに内容や言葉遣いを修正した。また,所属学級内における異質拒否傾向を想定するため「このクラスであなたは」を各項目文の文頭に,「という気になりますか」を文末に加え,異質拒否傾向10項目からなる原尺度を作成した。小学4~6年生を対象に4件法(4:とてもそう思う,3:すこしそう思う,2:あまりそう思わない,1:まったくそう思わない)により実施した。②「楽しい学校生活を送るためのアンケートQ-U」(河村,1999)の中から「学級満足度尺度」を実施した。
結 果
1.「学級異質拒否傾向尺度」の作成
探索的因子分析の結果,高坂(2010)と同様に1因子構造であったが,採用項目は4項目となった。さらに,確認的因子分析を行ったところ,適合度指標は,GFI=.997,AGFI=.987,CFI=.998,RMSEA=.047という結果が得られ,十分満足できるものであった。小学校通常学級内の異質拒否傾向を測定するために作成した本尺度を「学級異質拒否傾向尺度」とした(Table 1)。
2.学級状態の違いによる異質拒否傾向
児童を所属学級の学級状態別に振り分け,学級タイプを独立変数に異質拒否傾向を従属変数とした一要因の分散分析を行った。(Table 2)。
考 察
小学生を対象として学級の異質拒否傾向を測定する「学級異質拒否傾向尺度」が作成された。項目数が少ないため簡便に実施できる利点がある。
学級タイプごとの異質拒否傾向の差を検討したところ,満足型学級は,他の学級タイプに比べ有意に異質拒否傾向が低くなることが認められ,満足型学級においては,特性をもつ児童が拒否されにくいということが明らかとなった。満足型以外の学級タイプには有意な差は認められなかった。すなわち,通常学級においてインクルーシブ教育が成立するためには,満足型学級の構築が必要条件である可能性が示唆された。
引用文献
高坂康雅,2010 青年期の友人関係における被異質視不安と異質拒否傾向-青年期における変化と友人関係満足度との関連- 教育心理学研究,58,338− 347
インクルーシブ教育が提唱され,通常学級にも一定の割合で発達障害やその疑いのある児童が含まれていることを前提とした学級経営が求められている(例えば,太田・石田,2009;小牧・田中・渡邉,2006;村田・松崎,2009)。インクルーシブ教育が目指すのは共生社会の実現である。そのためには受容的な学級雰囲気があり,対象児が周囲の児童に受け入れられ,所属学級に適応できているかどうかが重要である(深沢・河村,2012)。
本研究は,学級の受容度を異質拒否傾向によって測定し,それを学級状態別(学級タイプ別)に検討することにより,どのような学級状態がインクルーシブ教育の理念に適うものであるかを実証的に明らかにすることが目的である。
方 法
質問紙調査時期:調査は,2018年1月下旬~2月中旬に実施された。
調査対象:A県,B県の小学校4~6年生2478名(115学級)。
調査手続:調査は,第一著者が各校の校長に依頼し,協力の承諾が得られた学校を直接訪問して学校側担当者に説明し,以下の2つ尺度を実施した。①「学級異質拒否傾向尺度」異質拒否傾向・被異質視不安項目(高坂,2010)のうち,異質拒否傾向10項目のみを取り上げた。異質拒否傾向・被異質視不安項目(高坂,2010)は,中学生,高校生,大学生を対象として作成された5件法による青年期向けの尺度であったため,項目内容を参考に,小学生向けに内容や言葉遣いを修正した。また,所属学級内における異質拒否傾向を想定するため「このクラスであなたは」を各項目文の文頭に,「という気になりますか」を文末に加え,異質拒否傾向10項目からなる原尺度を作成した。小学4~6年生を対象に4件法(4:とてもそう思う,3:すこしそう思う,2:あまりそう思わない,1:まったくそう思わない)により実施した。②「楽しい学校生活を送るためのアンケートQ-U」(河村,1999)の中から「学級満足度尺度」を実施した。
結 果
1.「学級異質拒否傾向尺度」の作成
探索的因子分析の結果,高坂(2010)と同様に1因子構造であったが,採用項目は4項目となった。さらに,確認的因子分析を行ったところ,適合度指標は,GFI=.997,AGFI=.987,CFI=.998,RMSEA=.047という結果が得られ,十分満足できるものであった。小学校通常学級内の異質拒否傾向を測定するために作成した本尺度を「学級異質拒否傾向尺度」とした(Table 1)。
2.学級状態の違いによる異質拒否傾向
児童を所属学級の学級状態別に振り分け,学級タイプを独立変数に異質拒否傾向を従属変数とした一要因の分散分析を行った。(Table 2)。
考 察
小学生を対象として学級の異質拒否傾向を測定する「学級異質拒否傾向尺度」が作成された。項目数が少ないため簡便に実施できる利点がある。
学級タイプごとの異質拒否傾向の差を検討したところ,満足型学級は,他の学級タイプに比べ有意に異質拒否傾向が低くなることが認められ,満足型学級においては,特性をもつ児童が拒否されにくいということが明らかとなった。満足型以外の学級タイプには有意な差は認められなかった。すなわち,通常学級においてインクルーシブ教育が成立するためには,満足型学級の構築が必要条件である可能性が示唆された。
引用文献
高坂康雅,2010 青年期の友人関係における被異質視不安と異質拒否傾向-青年期における変化と友人関係満足度との関連- 教育心理学研究,58,338− 347