[PD35] 視点取得への介入教示が他者の言動に対する認知に与える影響(2)
キーワード:コミュニケーション、アドバイス、視点取得
問題と目的
互いの意図や感情を適切に伝え合い,理解し合うためには,コミュニケーションの過程において,相手の視点に立って物事をとらえようとする視点取得(perspective-taking)を行うことが必要である。筆者らは,大学生を対象としたコミュニケーション教育の設計を行うにあたり,視点取得を促す教示が他者の言動に対する認知や発話産出に与える影響について検討してきた。真下・三宮(2018)では大学生同士のグループワークの場面を取り上げ,他者の視点に立ってその心情を推測させる「相手視点群」と自分自身の視点で他者の言動を評価させる「自己視点群」を設定し,他者の言動認知について自由記述による回答を求めた。その結果,両群において多様な言動認知がなされていること,特に自己視点群ではポジティブな認知よりネガティブな認知に該当する記述の割合が多かったことが報告されているが,両群で共通の質問項目による比較は行なわれていない。本研究では前述の2群に加えて統制群を設け,群間で他者の言動に対する認知が異なるかを検討した。
方 法
実験参加者:京阪地区の女子大学生114名(平均年齢19.28歳,SD=0.45)が参加者となった。
手続き:集団配布の質問紙実験の形式をとった。所要時間はおよそ20分であった。
場面設定・提示方法:大学生同士のグループワークで,友人Aが勝手に物事を進めてしまう場面を設定し会話形式のシナリオによる提示を行なった。
教示と質問内容:
実験参加者を3群に分け,相手視点群と自己視点群に対しては以下の教示を行ない,統制群に対しては平仮名の文章を漢字・仮名混じり文に変えるという無関連な課題を課した。
相手視点群:Aさんには,Aさんの考えや気持ちがあるはずです。Aさんの考えや気持ちを想像して,以下に書いてください。
自己視点群:あなたは,Aさんの言動をどう評価しますか?あなたの考えを書いて下さい。
その後,全参加者に対してAの言動認知に関する次の4項目:①メンバーの長所を生かしたいと思っている,②グループ活動を効率よく進めたいと思っている,③自分の思い通りにしたいと思っている,④他の人の意見を大切にしていない,について「非常によく当てはまる (5)」から「全くあてはまらない (1)」までの5件法による回答を求めた。①②がポジティブな認知,③④がネガティブな認知に関する項目である。
また,個人特性として,日本語版対人反応性指標(日道他,2017)の下位尺度のうち,視点取得に関する7項目について「非常によく当てはまる (5)」から「全くあてはまらない (1)」までの5件法による回答を求めた。
結果と考察
個人特性(視点取得)
7項目の得点を平均して視点取得得点とした(Table1)。相手視点群,自己視点群および統制群において,視点取得得点の平均値に差があるかを検討するため,対応のない一要因の分散分析を行った結果,差は認められなかった(F(2.98) =1.46, n.s.)。
他者の言動に対する認知の違い
①②のポジティブな認知に関する2項目の平均値をポジティブ認知得点とし,③④のネガティブな認知に関する2項目の平均値をネガティブ認知得点とした。各得点の平均値とSDをTable 2に示す。相手視点群,自己視点群,統制群で他者の言動認知に違いがあるかを検討するため,対応のない1要因の分散分析を行った。その結果,ポジティブ認知得点,ネガティブ認知得点ともに群間の差は認められなかった(順に,F(2.111) =1.02, n.s., F(2.111) =.76, n.s.)。結果より,視点取得への介入教示は他者の言動認知に影響するとは言えない。
互いの意図や感情を適切に伝え合い,理解し合うためには,コミュニケーションの過程において,相手の視点に立って物事をとらえようとする視点取得(perspective-taking)を行うことが必要である。筆者らは,大学生を対象としたコミュニケーション教育の設計を行うにあたり,視点取得を促す教示が他者の言動に対する認知や発話産出に与える影響について検討してきた。真下・三宮(2018)では大学生同士のグループワークの場面を取り上げ,他者の視点に立ってその心情を推測させる「相手視点群」と自分自身の視点で他者の言動を評価させる「自己視点群」を設定し,他者の言動認知について自由記述による回答を求めた。その結果,両群において多様な言動認知がなされていること,特に自己視点群ではポジティブな認知よりネガティブな認知に該当する記述の割合が多かったことが報告されているが,両群で共通の質問項目による比較は行なわれていない。本研究では前述の2群に加えて統制群を設け,群間で他者の言動に対する認知が異なるかを検討した。
方 法
実験参加者:京阪地区の女子大学生114名(平均年齢19.28歳,SD=0.45)が参加者となった。
手続き:集団配布の質問紙実験の形式をとった。所要時間はおよそ20分であった。
場面設定・提示方法:大学生同士のグループワークで,友人Aが勝手に物事を進めてしまう場面を設定し会話形式のシナリオによる提示を行なった。
教示と質問内容:
実験参加者を3群に分け,相手視点群と自己視点群に対しては以下の教示を行ない,統制群に対しては平仮名の文章を漢字・仮名混じり文に変えるという無関連な課題を課した。
相手視点群:Aさんには,Aさんの考えや気持ちがあるはずです。Aさんの考えや気持ちを想像して,以下に書いてください。
自己視点群:あなたは,Aさんの言動をどう評価しますか?あなたの考えを書いて下さい。
その後,全参加者に対してAの言動認知に関する次の4項目:①メンバーの長所を生かしたいと思っている,②グループ活動を効率よく進めたいと思っている,③自分の思い通りにしたいと思っている,④他の人の意見を大切にしていない,について「非常によく当てはまる (5)」から「全くあてはまらない (1)」までの5件法による回答を求めた。①②がポジティブな認知,③④がネガティブな認知に関する項目である。
また,個人特性として,日本語版対人反応性指標(日道他,2017)の下位尺度のうち,視点取得に関する7項目について「非常によく当てはまる (5)」から「全くあてはまらない (1)」までの5件法による回答を求めた。
結果と考察
個人特性(視点取得)
7項目の得点を平均して視点取得得点とした(Table1)。相手視点群,自己視点群および統制群において,視点取得得点の平均値に差があるかを検討するため,対応のない一要因の分散分析を行った結果,差は認められなかった(F(2.98) =1.46, n.s.)。
他者の言動に対する認知の違い
①②のポジティブな認知に関する2項目の平均値をポジティブ認知得点とし,③④のネガティブな認知に関する2項目の平均値をネガティブ認知得点とした。各得点の平均値とSDをTable 2に示す。相手視点群,自己視点群,統制群で他者の言動認知に違いがあるかを検討するため,対応のない1要因の分散分析を行った。その結果,ポジティブ認知得点,ネガティブ認知得点ともに群間の差は認められなかった(順に,F(2.111) =1.02, n.s., F(2.111) =.76, n.s.)。結果より,視点取得への介入教示は他者の言動認知に影響するとは言えない。