[PD44] 高校生は「アクティブラーニング」をどう思っているのか?
キーワード:能動的学修、アクティブラーニング、高校生
目 的
近年,大学教育の改革が強く要望されている。教授方法の改革を望む意見も見られ,学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング:以下ALと略す)への転換が求められている(中央教育審議会, 2012)。ALの有効性を主張する研究も多くあるが,一方で大学入学生の中にはALに拒否感や苦手意識を持つ者もおり,否定的態度を持つものはAL型授業の履修を避ける傾向も見られる(粟津・松下,2016)。
ALは大学だけでなく,初等教育,中等教育でも取り組まれており,大学入学前に経験したことのある学習者も多くいるだろう。大学でのALの教育効果を考える上で,大学入学以前にどのようなALを経験し,どのような態度を持っているのかを検討することは重要であろう。
そこで,高校生がALという教育法を知っているのか,どのように受け止めているのかを調べる。
方 法
2017年8月および2018年12月に,大学進学を希望している高校2年生,3年生,予備校生を対象にネット調査を実施した。回答者数は,2017年が728名,2018年が709名であり,回答者が重複しないように調査を実施した。本発表では,このうち高校2.3年生(2017年672名,2018名691名)の結果のみ分析する。
質問項目は,Q1「学年」,Q2「ALという言葉を聞いたことがありますか。」,Q3「ALの形式の授業を一つでも受けていますか」,Q4「ALの授業は,今までの形式の授業よりも知識をより深く身につけることが出来ると思いますか」,Q5「英語の授業のALを受けていますか」,Q6「今までの形式の授業とAL形式の授業では何が一番違うと思いますか(自由記述)」,Q7「ALの授業は,今までの形式の授業よりもどの技能において一番スキルを身につけられると思いますか」などである。
結 果
Table 1に抜粋した結果を示す。Q1に「聞いたがある」と答えた回答者の比率,Q2に「受けている」と答えた回答者の比率,Q4に「深い知識が身につくと思う」と回答した比率を,調査年および回答者の学年別に示す。
「アクティブラーニング」「能動的学修」という言葉を聞いたことのある高校生は半数程度である。2017から2018年にかけて高2生で13ポイント,高3生で20ポイント増加している。受講経験のある生徒は50%以下であり,学年が上がると増加するものの,2017年と2018年で明確な増減は見られない。受講経験のある者のうち,深い知識が得られるという肯定的態度を示したものが70%程度以上おり,2017年と2018年で明確な増減は見られない。
考 察
「アクティブラーニング」あるいは「能動的学修」という言葉は,2012年の中教審答申で公式文書に現れた。しかし,現在でも半数程度の高校生にしか認知されていない。また,受講している生徒は40%程度であり,広く普及しているとも言い難い。しかし,ALは学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称であり,様々な手法がある (中央教育審議会, 2012)。この言葉を知らなくとも経験している可能性はある。
受講経験のある生徒のうち,「深い知識が身に付く」という肯定的態度を示す生徒が多い。一方でALに対して否定的な態度を持つ生徒も,30%程度いた。このような生徒は,大学でのAL形式の授業に否定的な態度を持つことも十分に考えられる。このような生徒への対応を考えるには,さらに詳細な調査や分析が必要であろう。
今後もALがますます広まっていく可能性がある。有効なALを行うには,学習者がどのようなALを経験し,態度・印象を持っているのか,またその態度・印象が高等教育でのALの学習効果にどのように影響するのかなどを,確認する必要があるだろう。
近年,大学教育の改革が強く要望されている。教授方法の改革を望む意見も見られ,学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング:以下ALと略す)への転換が求められている(中央教育審議会, 2012)。ALの有効性を主張する研究も多くあるが,一方で大学入学生の中にはALに拒否感や苦手意識を持つ者もおり,否定的態度を持つものはAL型授業の履修を避ける傾向も見られる(粟津・松下,2016)。
ALは大学だけでなく,初等教育,中等教育でも取り組まれており,大学入学前に経験したことのある学習者も多くいるだろう。大学でのALの教育効果を考える上で,大学入学以前にどのようなALを経験し,どのような態度を持っているのかを検討することは重要であろう。
そこで,高校生がALという教育法を知っているのか,どのように受け止めているのかを調べる。
方 法
2017年8月および2018年12月に,大学進学を希望している高校2年生,3年生,予備校生を対象にネット調査を実施した。回答者数は,2017年が728名,2018年が709名であり,回答者が重複しないように調査を実施した。本発表では,このうち高校2.3年生(2017年672名,2018名691名)の結果のみ分析する。
質問項目は,Q1「学年」,Q2「ALという言葉を聞いたことがありますか。」,Q3「ALの形式の授業を一つでも受けていますか」,Q4「ALの授業は,今までの形式の授業よりも知識をより深く身につけることが出来ると思いますか」,Q5「英語の授業のALを受けていますか」,Q6「今までの形式の授業とAL形式の授業では何が一番違うと思いますか(自由記述)」,Q7「ALの授業は,今までの形式の授業よりもどの技能において一番スキルを身につけられると思いますか」などである。
結 果
Table 1に抜粋した結果を示す。Q1に「聞いたがある」と答えた回答者の比率,Q2に「受けている」と答えた回答者の比率,Q4に「深い知識が身につくと思う」と回答した比率を,調査年および回答者の学年別に示す。
「アクティブラーニング」「能動的学修」という言葉を聞いたことのある高校生は半数程度である。2017から2018年にかけて高2生で13ポイント,高3生で20ポイント増加している。受講経験のある生徒は50%以下であり,学年が上がると増加するものの,2017年と2018年で明確な増減は見られない。受講経験のある者のうち,深い知識が得られるという肯定的態度を示したものが70%程度以上おり,2017年と2018年で明確な増減は見られない。
考 察
「アクティブラーニング」あるいは「能動的学修」という言葉は,2012年の中教審答申で公式文書に現れた。しかし,現在でも半数程度の高校生にしか認知されていない。また,受講している生徒は40%程度であり,広く普及しているとも言い難い。しかし,ALは学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称であり,様々な手法がある (中央教育審議会, 2012)。この言葉を知らなくとも経験している可能性はある。
受講経験のある生徒のうち,「深い知識が身に付く」という肯定的態度を示す生徒が多い。一方でALに対して否定的な態度を持つ生徒も,30%程度いた。このような生徒は,大学でのAL形式の授業に否定的な態度を持つことも十分に考えられる。このような生徒への対応を考えるには,さらに詳細な調査や分析が必要であろう。
今後もALがますます広まっていく可能性がある。有効なALを行うには,学習者がどのようなALを経験し,態度・印象を持っているのか,またその態度・印象が高等教育でのALの学習効果にどのように影響するのかなどを,確認する必要があるだろう。