[PE40] 行動の選好と先延ばし行動との関連
Keywords:先延ばし、選好
目 的
本研究の目的は,能動的先延ばし行動をとりやすい人の特徴を,行動の選好から明らかにすることである。先延ばし行動とは,取り組むべき課題を後回しにしたり先送りにしたりする行動(Lay, 1986)を指す。自己制御の失敗の一つとも捉えられ(Tice & Baumeister,1997),不適応とも関連する(Lay & Burns,1991; Lay & Schouwenburg, 1993)。
一方で,先延ばし行動の適応的な側面も指摘され(小浜,2012),能動的な先延ばし行動尺度も開発されている(吉田,2017)。本研究では,社会人を対象に能動的先延ばし行動の下位因子を明らかにし,行動の選好との関連を明らかにする。さらに選好と先延ばし行動が働き方にどのような影響を及ぼすのかを検討する。
方 法
調査時期:2019年1月
調査対象者:株式会社ジャストシステムFastaskのオンラインモニタのうち20歳以上の社会人1085名(男性546名,女性539名;平均年齢44.94歳)の回答を得た。
調査内容:General Procrastination Scale日本語版13項目(林,2007),能動的先延ばし行動尺度27項目(吉田,2017)で先延ばし行動を測定した。次に行動の選好として,簡単なor難しい仕事から始めるか,重要なor 重要でない仕事から始めるかを2択で選択してもらった。さらに週労働時間,仕事満足度,出来の満足度,精神的健康,仕事の速さ,取り掛かりの速さへの回答を求めた。
結 果
能動的先延ばし行動尺度の因子分析を行った結果,6つの下位因子が抽出され,能動的先延ばしを指す3つの行動が確認された。猶予型先延ばし行動(α=.71;時間の有効活用のためやモチベーションのためにあえて先延ばす行動),見積もり型先延ばし行動(α=.74;計画をたて優先順位を決め必要に応じ先延ばす行動),切り替え型先延ばし行動(α=.71;気分転換し取り掛かる行動)である。
これらに対し行動の選好(2:容易さ×2:重要さ)のANOVAを実施した結果,重要な仕事から始める人ほど見積もり型先延ばし行動をとっていた(F(1,1081)=6.55,p<.05)。一方で重要でない仕事から始める人ほど先延ばし行動と猶予型先延ばし行動をとっていた(F(1,1081)=24.95,p<.01; F (1,1081) = 6.85, p<. 01)。
さらにこの関連は,難しいことから取り掛かる人に顕著であった。難しいことこそ重要な方から取り掛かる人は見積もり型先延ばし行動をとりやすい。反対に難しいときに重要でない方から取り組む人は猶予型先延ばし行動をとりやすい。
働き方との関連について相関係数を求めた(Table参照)。その結果,猶予型先延ばし行動は仕事の遅さ,労働時間,精神的不健康と関連し,見積もり型や切り替え型先のばし行動は仕事の速さ,満足度,精神的健康と関連していた。
考 察
重要な仕事から取り掛かる行動の選好が見積もり型先延ばし行動の特徴としてみられ,それが満足度や精神的健康とかかわることが示された。一方で,重要でない仕事から取り掛かる行動の選好は猶予型先延ばしに現れ,それが労働時間の増加,精神的不健康につながることが示唆された。
これまで能動的先延ばし行動は楽観性や熟慮性の欠如と関連することが示されてきた(小浜,2012)。こうした特徴は,困難な仕事を目の前にしたときに重要な仕事を後回しにする猶予型先延ばし行動の特徴とも考えられ,結果として仕事の生産性を低める。反対に困難ではあればこそ,重要なことから進め,見積もりがあるときに先延ばす行動が,生産性の向上に乗じて満足度を高める。
仕事を速く進めるための時間管理や習慣づけなどの知見が経営学の分野で提唱されている。本研究は仕事の重要さに加え容易さを視野に入れる必要性を示唆する。
本研究の目的は,能動的先延ばし行動をとりやすい人の特徴を,行動の選好から明らかにすることである。先延ばし行動とは,取り組むべき課題を後回しにしたり先送りにしたりする行動(Lay, 1986)を指す。自己制御の失敗の一つとも捉えられ(Tice & Baumeister,1997),不適応とも関連する(Lay & Burns,1991; Lay & Schouwenburg, 1993)。
一方で,先延ばし行動の適応的な側面も指摘され(小浜,2012),能動的な先延ばし行動尺度も開発されている(吉田,2017)。本研究では,社会人を対象に能動的先延ばし行動の下位因子を明らかにし,行動の選好との関連を明らかにする。さらに選好と先延ばし行動が働き方にどのような影響を及ぼすのかを検討する。
方 法
調査時期:2019年1月
調査対象者:株式会社ジャストシステムFastaskのオンラインモニタのうち20歳以上の社会人1085名(男性546名,女性539名;平均年齢44.94歳)の回答を得た。
調査内容:General Procrastination Scale日本語版13項目(林,2007),能動的先延ばし行動尺度27項目(吉田,2017)で先延ばし行動を測定した。次に行動の選好として,簡単なor難しい仕事から始めるか,重要なor 重要でない仕事から始めるかを2択で選択してもらった。さらに週労働時間,仕事満足度,出来の満足度,精神的健康,仕事の速さ,取り掛かりの速さへの回答を求めた。
結 果
能動的先延ばし行動尺度の因子分析を行った結果,6つの下位因子が抽出され,能動的先延ばしを指す3つの行動が確認された。猶予型先延ばし行動(α=.71;時間の有効活用のためやモチベーションのためにあえて先延ばす行動),見積もり型先延ばし行動(α=.74;計画をたて優先順位を決め必要に応じ先延ばす行動),切り替え型先延ばし行動(α=.71;気分転換し取り掛かる行動)である。
これらに対し行動の選好(2:容易さ×2:重要さ)のANOVAを実施した結果,重要な仕事から始める人ほど見積もり型先延ばし行動をとっていた(F(1,1081)=6.55,p<.05)。一方で重要でない仕事から始める人ほど先延ばし行動と猶予型先延ばし行動をとっていた(F(1,1081)=24.95,p<.01; F (1,1081) = 6.85, p<. 01)。
さらにこの関連は,難しいことから取り掛かる人に顕著であった。難しいことこそ重要な方から取り掛かる人は見積もり型先延ばし行動をとりやすい。反対に難しいときに重要でない方から取り組む人は猶予型先延ばし行動をとりやすい。
働き方との関連について相関係数を求めた(Table参照)。その結果,猶予型先延ばし行動は仕事の遅さ,労働時間,精神的不健康と関連し,見積もり型や切り替え型先のばし行動は仕事の速さ,満足度,精神的健康と関連していた。
考 察
重要な仕事から取り掛かる行動の選好が見積もり型先延ばし行動の特徴としてみられ,それが満足度や精神的健康とかかわることが示された。一方で,重要でない仕事から取り掛かる行動の選好は猶予型先延ばしに現れ,それが労働時間の増加,精神的不健康につながることが示唆された。
これまで能動的先延ばし行動は楽観性や熟慮性の欠如と関連することが示されてきた(小浜,2012)。こうした特徴は,困難な仕事を目の前にしたときに重要な仕事を後回しにする猶予型先延ばし行動の特徴とも考えられ,結果として仕事の生産性を低める。反対に困難ではあればこそ,重要なことから進め,見積もりがあるときに先延ばす行動が,生産性の向上に乗じて満足度を高める。
仕事を速く進めるための時間管理や習慣づけなどの知見が経営学の分野で提唱されている。本研究は仕事の重要さに加え容易さを視野に入れる必要性を示唆する。