[PE62] 卒業期待度尺度の作成
Keywords:高校、中退、学校適応
問題と目的
高校現場では中途退学(以下中退)問題を抱え,中退理由については,対人関係や学習活動がうまくいかなかったというような学校不適応が最も多い(文部科学省,2015)。
しかし,杉江・村上・石田・清水(2011)が,中退者の友人関係が非中退者と差異がないことを示していることや,友人との関係が良好な生徒が,むしろ仲間との存在が問題行動を促進させてしまい,中退に至ってしまう(杉山,2007)こともあり,学校によって中退要因が異なることが考えられる。中退リスクを測る尺度として,高校中退リスク評価尺度(小栗,2019)があるが,この尺度も友人との関係や教師との関係等,どの学校も一様に中退要因が同じであることを前提にして作られた尺度であるので,学校毎に中退要因を検討する尺度としては適さないことが考えられる。
そこで本研究では,どの学校でも中退要因を検討できるように,学校によって異なる学校不適応の状態を測るのではなく,生徒自身が現在学校に対してどう感じているかを測り,卒業を予測する尺度として卒業期待度尺度の作成を目的とした。
方 法
尺度の作成
高校での勤務経験のある教師10名に対し,「今までに中退した生徒を思い浮かべ,中退するリスクが高い生徒や中退するリスクが低い生徒が具体的に学校に対してどのように感じていたかを書いてください。」という教示を行い,自由記述を収集した。
収集された自由記述をもとに,意味が同様である回答をまとめ,多く出現した上位19項目を抽出して,卒業期待度尺度19項目を作成した。
回答形式は,「全くあてはまらない」(1点)~ 「非常によくあてはまる」(5点)までの5件法である。
妥当性検討のための尺度
学校生活の充実度を評価する「スクール・モラール」尺度(河村,1999)の「学習意欲」因子と「進路意識」因子,学校離脱傾向を評価する「高校生活」尺度(尾川,2015)の「学校離脱」因子,自立性尺度(菱田・加藤・金子,2009)の「対人協調」因子である。
調査協力者と調査時期
A高校からF高校の6校1123名(男子628名,女子446名,答えたくない49名)である。調査は2018年9月から2018年10月に実施した.
結果と考察
卒業期待度尺度19項目に対して因子分析(最尤法,Promax回転)を行った。その結果,因子負荷量の絶対値0.40以上を基準に,2因子12項目を採用した(Table 1)。第1因子は,「学校は楽しい。」など,生徒が学校生活をポジティブに感じている様子を表しているので,「ポジティブな学校生活」因子と解釈した。第2因子は,「高校の卒業資格さえもらえればよい。」など,生徒が学校生活をネガティブに感じている様子を表しているので,「ネガティブな学校生活の無さ」因子と解釈した。
尺度の信頼性を求めたところ,Cronbachのα係数は,第1因子が0.81,第2因子が0.73であり,第2因子が高い値ではないが,一応の信頼性があると考えられる。
また,「スクール・モラール」尺度(河村,1999)の「学習意欲」因子と「進路意識」因子,自立性尺度(菱田・加藤・金子,2009)の「対人協調」因子との間に有意な正の相関,「高校生活」尺度(尾川,2015)の「学校離脱」因子と有意な負の相関が認められ,妥当性はあると考えられる。
以上の結果から,卒業期待度尺度として信頼性と妥当性は確認できたと考えられる。
高校現場では中途退学(以下中退)問題を抱え,中退理由については,対人関係や学習活動がうまくいかなかったというような学校不適応が最も多い(文部科学省,2015)。
しかし,杉江・村上・石田・清水(2011)が,中退者の友人関係が非中退者と差異がないことを示していることや,友人との関係が良好な生徒が,むしろ仲間との存在が問題行動を促進させてしまい,中退に至ってしまう(杉山,2007)こともあり,学校によって中退要因が異なることが考えられる。中退リスクを測る尺度として,高校中退リスク評価尺度(小栗,2019)があるが,この尺度も友人との関係や教師との関係等,どの学校も一様に中退要因が同じであることを前提にして作られた尺度であるので,学校毎に中退要因を検討する尺度としては適さないことが考えられる。
そこで本研究では,どの学校でも中退要因を検討できるように,学校によって異なる学校不適応の状態を測るのではなく,生徒自身が現在学校に対してどう感じているかを測り,卒業を予測する尺度として卒業期待度尺度の作成を目的とした。
方 法
尺度の作成
高校での勤務経験のある教師10名に対し,「今までに中退した生徒を思い浮かべ,中退するリスクが高い生徒や中退するリスクが低い生徒が具体的に学校に対してどのように感じていたかを書いてください。」という教示を行い,自由記述を収集した。
収集された自由記述をもとに,意味が同様である回答をまとめ,多く出現した上位19項目を抽出して,卒業期待度尺度19項目を作成した。
回答形式は,「全くあてはまらない」(1点)~ 「非常によくあてはまる」(5点)までの5件法である。
妥当性検討のための尺度
学校生活の充実度を評価する「スクール・モラール」尺度(河村,1999)の「学習意欲」因子と「進路意識」因子,学校離脱傾向を評価する「高校生活」尺度(尾川,2015)の「学校離脱」因子,自立性尺度(菱田・加藤・金子,2009)の「対人協調」因子である。
調査協力者と調査時期
A高校からF高校の6校1123名(男子628名,女子446名,答えたくない49名)である。調査は2018年9月から2018年10月に実施した.
結果と考察
卒業期待度尺度19項目に対して因子分析(最尤法,Promax回転)を行った。その結果,因子負荷量の絶対値0.40以上を基準に,2因子12項目を採用した(Table 1)。第1因子は,「学校は楽しい。」など,生徒が学校生活をポジティブに感じている様子を表しているので,「ポジティブな学校生活」因子と解釈した。第2因子は,「高校の卒業資格さえもらえればよい。」など,生徒が学校生活をネガティブに感じている様子を表しているので,「ネガティブな学校生活の無さ」因子と解釈した。
尺度の信頼性を求めたところ,Cronbachのα係数は,第1因子が0.81,第2因子が0.73であり,第2因子が高い値ではないが,一応の信頼性があると考えられる。
また,「スクール・モラール」尺度(河村,1999)の「学習意欲」因子と「進路意識」因子,自立性尺度(菱田・加藤・金子,2009)の「対人協調」因子との間に有意な正の相関,「高校生活」尺度(尾川,2015)の「学校離脱」因子と有意な負の相関が認められ,妥当性はあると考えられる。
以上の結果から,卒業期待度尺度として信頼性と妥当性は確認できたと考えられる。