日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

2019年9月15日(日) 13:30 〜 15:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE63] 部活動における役割と部活動意欲との関連の検討

河村明和 (早稲田大学大学院)

キーワード:部活動、役割、部活動意欲

問題と目的
 現在,学習指導要領(2018)において,部活動と学校教育の関連が求められている。先行研究では,部活動への参加の有無だけではなく,部活動での積極的な取り組みは,学習意欲をはじめ,学校意欲との関連があることが示唆されている。
 このような中で,部活動意欲を向上させることは,学校生活意欲の向上へもつながることが考えられ,教育的に意義のある取り組みである。
そこで本研究では,学校生活意欲との関連が示唆されている,部活動意欲において,先行研究であまり検討が行われていない,生徒の部活動における役割との関連について検討することを目的とする。
方  法
調査時期:201X年9月中旬から11月にかけて質問紙による調査を実施した。調査時期に関しては,行事などでの生徒の意欲の高まりを考慮して,調査時期を決定した。
調査対象:A県B市C中学校の生徒231名(男子120名,女子111名)を調査の対象とし,すべての項目に対し欠損値がない有効回答者208名(男子111名,女子97名,有効回答率90.0%)を分析の対象とした。
測定用具:中学校を対象とした質問紙による調査を行った。測定するにあたり,部活動意欲尺度を使用した。これは,河村(2002)が作成した尺度であり,部活動の意欲を測るもので,一因子で構成されており,4項目で測定される。項目における評定は5件法(「1;全くあてはまらない」から「5;とてもあてはまる」)であり,それぞれ単純加算により得点を算出するものである。そして,生徒の部活動における役割についても,「部活動での自分の役割は何かありますか」に対しても,1.役割なし,2.当番制など短期の係(用具準備)などの係がある,3.固定された年間の係がある,4.順番性の副キャプテン,パートリーダーなど短期の役割がある,5.固定されたキャプテン,副キャプテン,パートリーダーなど短期の役割がある,で回答を求めた。
調査手続き:学校長,学級担任に承諾を得た上で,学級ごとに質問紙による調査を実施した。調査を実施するにあたり,担任教員には同封されている実施の手順,注意事項のプリントに沿ってアンケートを実施することを依頼した。また,この調査は学校の成績に関係がないこと,回答は強制ではなく回答しなくても不利益を被らないこと,回答は担任教師を含め教職員に見られることなく,データ処理されること,個人のプライバシーは守られることをフェイスシートに明記し,調査参加者にも伝えるよう依頼した。そして,アンケートを回収する際は,回収用の封筒に生徒が回答したアンケートを入れ,その場で密封し,生徒に余計な不安を与えることがないように配慮した。なお,本調査にあたっては,調査校を管轄する教育委員会と著者が大学院生として所属している大学との間で研究に関する協定が締結されており,調査研究の内容については,大学の倫理委員会の審査を受け,承認を得た。以上の手続きを行った上で,学年,組,性別,出席番号の記入を求め,これらの情報を基にデータの照合を行い,IBM SPSS Statistics(Version24)を用いて統計処理を行った。
結  果
 対象となった生徒たちを,部活動においての役割ごとに分類し,5つの役割と部活動意欲の得点とで一要因分散分析を行った(Table 1)。
 結果として,全体として有意差が確認されたが,多重比較を行ったところ,それぞれの役割ごとに有意な差は見られなかった。
考  察
 本調査の結果より,部活動における役割の有無や,役割の違いによって,部活動意欲には大きな差がないことが確認された。学習指導要領(2018)では,学級における係活動は,係に分かれて自主的に活動で行い,児童の力で学級生活を豊かにすることがねらいとされているため,集団の中での役割を通した教育的効果が想定されているものと考えられる。部活動における役割も同様の効果が想定されたが,その為には環境の構成や,段階に応じた適切な指導などが必要であると考えられた。
本研究では,以上の点において検討が行われていないため,今後の課題としたい。