[PF19] 児童の自尊感情を高めるためのエクササイズを実践する上での留意点について
キーワード:自尊感情、エクササイズ、実践上の留意点
背景と目的
文部科学省(2006)は,我が国においては,自分に自信がある子どもが国際的に見て少ないなど,自尊感情が乏しく,学習や職業に対して無気力な子どもが増えている状況である,と指摘している。児童の自尊感情が低いという現状を踏まえ,先行研究においては,アサーショントレーニングなどの心理・臨床トレーニングの実施が,自尊感情の高まりに効果があることが指摘されているが,心理・臨床トレーニングは,活動に時間を有し,毎日行うことが難しい。そこで,児童の自尊感情を高めるための活動を,学級生活全般を通しての取り組みに位置付けつつ,朝の会や帰りの会のモジュール時間を利用するなどして,継続的に実施するべきであること,さらにはその効果を実証的な研究成果として示すことが,それぞれ重要である。
そこで,本研究の目的は,自尊感情測定尺度(東京版)に基づく児童の自尊感情の3観点の特徴と,自尊感情を高めるエクササイズの特徴および,教師の指導・支援の在り方調査に基づく教師による児童の自尊感情を高める指導の実態から,児童の自尊感情を高めるためのエクササイズを実施する際の留意点について,定量データに基づく基礎的提言を行うことである。
方 法
調査対象 都内公立小学校の1~6年生の児童及び各学級の担任教諭のうち,回答結果に欠損の無い児童574名,教師20名であった。なお,本研究では,児童及び教師を低・中・高学年の学年ブロックに分けて分析を行う。
手続き 2017年7月と12月に,児童を対象に自尊感情測定尺度(東京都版)を用いた質問紙調査,教師を対象に「教師の指導・支援の在り方調査」(「自尊感情や自己肯定感を高めるための指導上の留意点」(東京都教職員研修センター,2011)をもとに作成)を実施した。さらに,調査協力校では,「自尊感情を高めるためのエクササイズ」を年間指導計画に位置付け実施していた。
調査内容 (1)自尊感情測定尺度:児童を対象に,A自己評価・自己受容,B関係の中での自己,C自己主張・自己決定の3観点からなる22項目について,4件法で回答を求めた。
(2)教師の指導・支援の在り方調査:「自尊感情や自己肯定感を高めるための指導上の留意点」をもとに作成した質問紙である。教師を対象に,自尊感情測定尺度と同様の3観点からなる12項目について4件法で回答を求めた。
結果と考察
児童の自尊感情測定尺度の結果について共分散構造分析を行った結果,観点Bと観点C,観点Cと観点A,観点Aと観点Bの間に関連がみられたことから,良好な友達関係(観点B)が育まれることで,ありのままの自分を認めること(観点C)ができるようになり,ありのままの自分を認めること(観点C)ができるようになることで,自分を肯定的に捉え大切に思うこと(観点A)ができ,さらに自分を肯定的に捉え大切に思うこと(観点A)で,良好な友達関係(観点B)が育まれるという円循環モデルが確認された。
一方,教師の指導・支援の在り方調査の結果について共分散構造分析を行った結果,観点Bと観点C,観点Bと観点Aの間に関連がみられたことから,良好な友達関係(観点B)を築くことができるような指導を行う中で,ありのままの自分を認めること(観点C)ができるような指導も行うこと,また,自分の良さを大切にすること(観点A)ができるような指導も行うといった,良好な友達関係(観点B)を築くことができるような指導を起点とした,単線モデルが確認された。
なお,対象校が作成したエクササイズ実践例資料集(府中市立若松小学校,2018)に記載された,観点Cと観点Aをねらいに位置付けたエクササイズの内容が示された文章を確認したところ,観点Cに関するねらいの内容記述は確認されたものの,観点Aに関する記述が確認されにくい様子が伺えた。例えば,「連想ゲーム」のエクササイズでは,「初めの人が言った言葉に関連のある言葉を次の人が言っていく」といった内容が示されており,観点C(自分が考えた言葉を相手に伝える=自己主張・自己決定)の内容は確認されたが,観点A(自己評価・自己受容)の内容は確認されなかった。
このことから,児童の自尊感情を育むエクササイズを実践する際には,良好な友達関係を基盤とし,友達関係を築いていく中で自己主張や自己受容できるような場面を設定することに留意して,観点Cと観点Aを関連づけることが大切であると推察される。
文部科学省(2006)は,我が国においては,自分に自信がある子どもが国際的に見て少ないなど,自尊感情が乏しく,学習や職業に対して無気力な子どもが増えている状況である,と指摘している。児童の自尊感情が低いという現状を踏まえ,先行研究においては,アサーショントレーニングなどの心理・臨床トレーニングの実施が,自尊感情の高まりに効果があることが指摘されているが,心理・臨床トレーニングは,活動に時間を有し,毎日行うことが難しい。そこで,児童の自尊感情を高めるための活動を,学級生活全般を通しての取り組みに位置付けつつ,朝の会や帰りの会のモジュール時間を利用するなどして,継続的に実施するべきであること,さらにはその効果を実証的な研究成果として示すことが,それぞれ重要である。
そこで,本研究の目的は,自尊感情測定尺度(東京版)に基づく児童の自尊感情の3観点の特徴と,自尊感情を高めるエクササイズの特徴および,教師の指導・支援の在り方調査に基づく教師による児童の自尊感情を高める指導の実態から,児童の自尊感情を高めるためのエクササイズを実施する際の留意点について,定量データに基づく基礎的提言を行うことである。
方 法
調査対象 都内公立小学校の1~6年生の児童及び各学級の担任教諭のうち,回答結果に欠損の無い児童574名,教師20名であった。なお,本研究では,児童及び教師を低・中・高学年の学年ブロックに分けて分析を行う。
手続き 2017年7月と12月に,児童を対象に自尊感情測定尺度(東京都版)を用いた質問紙調査,教師を対象に「教師の指導・支援の在り方調査」(「自尊感情や自己肯定感を高めるための指導上の留意点」(東京都教職員研修センター,2011)をもとに作成)を実施した。さらに,調査協力校では,「自尊感情を高めるためのエクササイズ」を年間指導計画に位置付け実施していた。
調査内容 (1)自尊感情測定尺度:児童を対象に,A自己評価・自己受容,B関係の中での自己,C自己主張・自己決定の3観点からなる22項目について,4件法で回答を求めた。
(2)教師の指導・支援の在り方調査:「自尊感情や自己肯定感を高めるための指導上の留意点」をもとに作成した質問紙である。教師を対象に,自尊感情測定尺度と同様の3観点からなる12項目について4件法で回答を求めた。
結果と考察
児童の自尊感情測定尺度の結果について共分散構造分析を行った結果,観点Bと観点C,観点Cと観点A,観点Aと観点Bの間に関連がみられたことから,良好な友達関係(観点B)が育まれることで,ありのままの自分を認めること(観点C)ができるようになり,ありのままの自分を認めること(観点C)ができるようになることで,自分を肯定的に捉え大切に思うこと(観点A)ができ,さらに自分を肯定的に捉え大切に思うこと(観点A)で,良好な友達関係(観点B)が育まれるという円循環モデルが確認された。
一方,教師の指導・支援の在り方調査の結果について共分散構造分析を行った結果,観点Bと観点C,観点Bと観点Aの間に関連がみられたことから,良好な友達関係(観点B)を築くことができるような指導を行う中で,ありのままの自分を認めること(観点C)ができるような指導も行うこと,また,自分の良さを大切にすること(観点A)ができるような指導も行うといった,良好な友達関係(観点B)を築くことができるような指導を起点とした,単線モデルが確認された。
なお,対象校が作成したエクササイズ実践例資料集(府中市立若松小学校,2018)に記載された,観点Cと観点Aをねらいに位置付けたエクササイズの内容が示された文章を確認したところ,観点Cに関するねらいの内容記述は確認されたものの,観点Aに関する記述が確認されにくい様子が伺えた。例えば,「連想ゲーム」のエクササイズでは,「初めの人が言った言葉に関連のある言葉を次の人が言っていく」といった内容が示されており,観点C(自分が考えた言葉を相手に伝える=自己主張・自己決定)の内容は確認されたが,観点A(自己評価・自己受容)の内容は確認されなかった。
このことから,児童の自尊感情を育むエクササイズを実践する際には,良好な友達関係を基盤とし,友達関係を築いていく中で自己主張や自己受容できるような場面を設定することに留意して,観点Cと観点Aを関連づけることが大切であると推察される。