日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

Sun. Sep 15, 2019 4:00 PM - 6:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF37] 大学生のチームワークに関するスキルを向上させるトレーニングの有効性(5)

チームワーク能力の変化と受講動機の関連

太幡直也 (愛知学院大学)

Keywords:トレーニング、チームワーク能力、受講動機

 太幡(2016)は,大学生のチームワーク能力(チームワークを発揮する個人の能力)を向上させるため,半期の授業回数にあたる,15回のプログラムで構成されるトレーニングを開発した。太幡(2016)のトレーニングの有効性は,チームワークを構成する能力(相川・高本・杉森・古屋, 2012),社会的スキル(菊池, 1988)の,トレーニングの事前,事後の得点を比較することで確認されている。これまでに,実施直後(太幡, 2016, 2017a),時間経過後(太幡, 2017b, 2019)に,トレーニングが有効であることを示す結果が得られている。
 しかし,トレーニングを実施する授業に対する受講動機(以下,受講動機)とチームワーク能力の変化に関連がみられるか否かは検討されていない。大学の講義形式の授業では,受講動機と成績には関連がみられることが報告されている(e.g., 西田, 2009)ことに鑑みると,上記の未検討点を検討することは,太幡(2016)のトレーニングの有効性を評価する上で重要であると考えられる。
 そこで,本研究では,チームワーク能力の変化と受講動機の関連を検討することを目的とする。
方  法
調査対象者 2017年に,中部地方の私立大学A大学の授業内で実施された太幡(2016)のトレーニングに参加した,31名(男性26名,女性5名,事前の調査時の平均年齢19.39歳(SD =0.95))を分析対象とした。なお,当該授業は,大学2年生対象の選択必修科目のゼミナールであった。
質問紙の構成 調査は,事前,事後に実施した。(a)2回の調査とも,菊池(1988)の社会的スキルを測定する尺度(KiSS-18)に5件法で,相川他(2012)のチームワークを構成する五つの能力を測定する尺度に6件法で回答するように求めた(α=.63―.87)。いずれも,下位尺度ごとに,あてはまると回答するほど得点が高くなるように値を算出した。(b)事前のみ,受講動機を測定した。北神・藤田(2007)や西田(2009)を参照し,興味,知識深化,就職活動対策,能力向上,教員好感,単位容易,他者からの影響の七つの受講動機について,2項目ずつ作成した。そして,「1.あてはまらない」から「5.あてはまる」の5件法で回答するように求めた(rs=.36―.76, p<.05)。
結果と考察
 社会的スキル,チームワーク能力の構成要素については,事後の得点から事前の得点を減じ,チームワーク能力の変化の指標とした。これらの指標は,七つの受講動機とほとんど関連がみられなかった(Table 1)。太幡(2016)のトレーニング実施後の調査で,トレーニングの必要性を高く評価する者ほどチームワーク能力の多くの指標が向上していた(太幡・小川・松本, 2017)ことに鑑みると,トレーニングによるチームワーク能力の変化は,受講動機よりも,トレーニングの必要性を認識したか否かと関連が強いと推察される。
付  記
 本研究はJSPS科研費16K17319の助成を受けた。