[PF54] 学校・学級・児童へのポジティブ介入・支援システムの導入による学校適応の向上
児童の社会性発達と教師の指導力向上を基盤とした実践研究
Keywords:SW-PBIS、社会性、協働性
児童を取り巻く環境や教師の指導体制等に課題のある学校において,児童の学級適応の促進のため,ポジティブ支援を基盤としたSW-PBIS(米国教育省,2015)を,学校経営システムの改善として導入した。児童の学校適応は,社会性発達を通して促進されるとの報告は多数あることから,学校適応に関わる社会性発達を志向した児童への3層支援を行い,社会性に関わる尺度により効果検証する。また,SW-PBISの効果を高めるために,教師にも3層支援を実施し,成果を検証する。
方 法
調査対象 岐阜県内小学校において,平成29年9月の先行調査と平成30年4月の事前調査,9月の事後調査の回答がすべてそろった4年生以上の児童358名(4年115名,5年119名,6年124名),当該小学校の通常学級担任教師24名を分析対象とした。
測定内容 児童の社会性は,(1)社会的スキル尺度(藤枝他,2001;向社会性7項目・引込思案4項目5件法),(2)多次元共感性尺度(長谷川他,2009;役割取得9項目・共感的関心7項目5件法),(3)小学生用規範行動自己評定尺度(山田他,2013;対人間の好ましい行動・対人間で遵守すべき行動・個人として遵守すべき行動各5項目4件法),(4)社会的自己制御尺度(原田他,2008;自己主張8項目5件法)を測定した。教師の効力感は,(1)教師効力感尺度(町支他,2014;島谷,2010;協働的自己効力感8項目・教育相談・生徒指導効力感7項目・授業に関する効力感4項目・学級経営に関する効力感4項目4件法),(2)フレンドシップ活動の効力感尺度(田崎他,2013;(子どもの)活動経営8項目・子ども理解・(子どもとの)関係形成3項目5件法)を測定した。
実践内容 アセスメント(奥村・吉澤,2018)の結果に基づいてSW-PBISの共通の価値観となる行動規準表を全教職員で作成,各層の介入・支援内容を決定した。児童第1層への介入・支援としては,賞賛カード発行による児童のよさの価値付け,児童の自治的な活動を通した,規範意識の向上と児童間の関係づくりを推進した。第2層へは,予防的な取組として,構成的グループエンカウンターやソーシャルスキルトレーニングを実施した。第3層へは,個別にチーム支援を進めた。教師の第1層介入・支援として,担任間の指導観を統一し,学級経営の学年差・学級差を生み出さないための,職員の協働性向上の推進,第2層へは,若手・転入職員への補助研修を実施した。第3層へは,当該教師への個別指導を行った。
結果と考察
児童の社会性指標下位8尺度を,2次因子分析により4因子に整理した。3時点での平均値を用いた反復測定分散分析により,「向社会・規範行動」「引込み思案」(Figure 1)「自己主張」において有意な,「共感性」において有意傾向のある向上・改善がみられた。教師の効力感では,同様の分散分析の結果,有意な改善がみられなかったが,事前から事後調査にかけての,児童の社会性の変化量と,教師の効力感の変化量をもちいた順位相関分析では,教師の「関係形成」と児童の「共感性」(r=.473,p=.064),「自己主張」(r=.461,p=.072)とに比較的強い相関関係がみられた。教師指標を説明変数,生徒指標を従属変数とした重回帰分析の結果,教師の「教育相談・生徒指導効力感」から児童の「共感性」(β=.173,p=.007),「自己主張」へ正の影響(β=.121,p=.060),教師の「学級経営効力感」から児童の「共感性」へ正の影響(β=.164,p=.073)が示された。
第1層支援で統一された価値観へ児童が順応したことや,第2層への予防的取り組みの効果により,児童の学校適応が促進したと考える。教師の効力感の向上は認識されなかったが,ポジティブ支援に必要な指導力は,協働性向上を通して教師集団として高まったと考える。
方 法
調査対象 岐阜県内小学校において,平成29年9月の先行調査と平成30年4月の事前調査,9月の事後調査の回答がすべてそろった4年生以上の児童358名(4年115名,5年119名,6年124名),当該小学校の通常学級担任教師24名を分析対象とした。
測定内容 児童の社会性は,(1)社会的スキル尺度(藤枝他,2001;向社会性7項目・引込思案4項目5件法),(2)多次元共感性尺度(長谷川他,2009;役割取得9項目・共感的関心7項目5件法),(3)小学生用規範行動自己評定尺度(山田他,2013;対人間の好ましい行動・対人間で遵守すべき行動・個人として遵守すべき行動各5項目4件法),(4)社会的自己制御尺度(原田他,2008;自己主張8項目5件法)を測定した。教師の効力感は,(1)教師効力感尺度(町支他,2014;島谷,2010;協働的自己効力感8項目・教育相談・生徒指導効力感7項目・授業に関する効力感4項目・学級経営に関する効力感4項目4件法),(2)フレンドシップ活動の効力感尺度(田崎他,2013;(子どもの)活動経営8項目・子ども理解・(子どもとの)関係形成3項目5件法)を測定した。
実践内容 アセスメント(奥村・吉澤,2018)の結果に基づいてSW-PBISの共通の価値観となる行動規準表を全教職員で作成,各層の介入・支援内容を決定した。児童第1層への介入・支援としては,賞賛カード発行による児童のよさの価値付け,児童の自治的な活動を通した,規範意識の向上と児童間の関係づくりを推進した。第2層へは,予防的な取組として,構成的グループエンカウンターやソーシャルスキルトレーニングを実施した。第3層へは,個別にチーム支援を進めた。教師の第1層介入・支援として,担任間の指導観を統一し,学級経営の学年差・学級差を生み出さないための,職員の協働性向上の推進,第2層へは,若手・転入職員への補助研修を実施した。第3層へは,当該教師への個別指導を行った。
結果と考察
児童の社会性指標下位8尺度を,2次因子分析により4因子に整理した。3時点での平均値を用いた反復測定分散分析により,「向社会・規範行動」「引込み思案」(Figure 1)「自己主張」において有意な,「共感性」において有意傾向のある向上・改善がみられた。教師の効力感では,同様の分散分析の結果,有意な改善がみられなかったが,事前から事後調査にかけての,児童の社会性の変化量と,教師の効力感の変化量をもちいた順位相関分析では,教師の「関係形成」と児童の「共感性」(r=.473,p=.064),「自己主張」(r=.461,p=.072)とに比較的強い相関関係がみられた。教師指標を説明変数,生徒指標を従属変数とした重回帰分析の結果,教師の「教育相談・生徒指導効力感」から児童の「共感性」(β=.173,p=.007),「自己主張」へ正の影響(β=.121,p=.060),教師の「学級経営効力感」から児童の「共感性」へ正の影響(β=.164,p=.073)が示された。
第1層支援で統一された価値観へ児童が順応したことや,第2層への予防的取り組みの効果により,児童の学校適応が促進したと考える。教師の効力感の向上は認識されなかったが,ポジティブ支援に必要な指導力は,協働性向上を通して教師集団として高まったと考える。