[PF55] 同性愛に対すると態度と情報に対する思考態度との関連
Keywords:LGB、曖昧さへの態度、批判的思考態度
研究の背景と目的
近年,LGB(Lesbian,Gay and Bisexual)への社会的関心は高まっている。同性愛に対する態度は,拒否はしないが受容もしない方向に変化しており(和田,2009),LGBの知識や接触経験が多いほどLGBに対して受容的であることも明らかになっている(和田,2008;中島,2012)。しかしながら,偏見や差別は未だなくなっておらず(葛西,2011),LGBに対する理解が不足している現状がある(上野,2008)。その背景には,LGB情報に対する思考態度(曖昧さへの態度/批判的思考態度)が関連していると考えられる。曖昧さとは「十分な手がかりがないために、適切な構造化や分類化ができない状態」と定義され(Budner,1962),偏った態度を形成しやすいことが明らかにされている(西村,2007)。批判的思考とは「自分の推論過程を意識的に吟味する反省的な思考であり,何を信じ,主張し,行動するかの決定に焦点を当てる思考」とされ(Ennis,1987),この心的態度によって差別的なステレオタイプ的思考や行動が固着することが考えられる。
そこで本研究では,LGBに対する態度とLGB情報に対する思考態度との関連性について予備的に検討することを目的とした。
方 法
1. 調査対象者と手続き
東海地方に在学する大学生207名を対象に質問紙調査を実施した。未回答および記入漏れを除いた190名の回答を分析対象とした。本研究は,名古屋学芸大学における研究倫理委員会の審査・承認を受けて実施された(倫理番号:251)。
2. 調査材料
a)同性愛に対する態度尺度(和田,1996):「嫌悪・拒否」「ネガティブイメージ」「容認・寛容」の3因子で構成されている(48項目5件法)。
b)曖昧さへの態度尺度(ATAS;西村,2007):曖昧さの「享受」「不安」「受容」「統制」「排除」の5因子で構成されている(26項目6件法)。
c)批判的思考態度尺度(平山・楠見,2004):「論理的思考への自覚」「探究心」「客観性」「証拠の重視」の4因子で構成されている(本研究では簡易版を使用;18項目5件法)。
d)同性愛に関する知識(中島,2014):同性愛に関する知識量の測定に用いた(23項目3件法)。
e)同性愛に関する接触経験:中島(2014)を参考に,12項目を作成し,同性愛に関する接触経験量の測定に用いた(2件法)。
結 果
各尺度間及びその下位因子との相関係数を算出した結果,同性愛に関する接触経験量は同性愛に対する態度の下位因子である「容認・寛容」との間に有意な正の相関が示された(r=.323,p<.001)。曖昧さへの態度の下位因子である「享受」と批判的思考態度の下位因子である「探究心」は「容認・寛容」との間に有意な正の相関を示した(享受:r=.407,p<.001/探究心:r=.357,p<.001)。
考 察
本研究の結果を概観すると,LGBに対する態度の「容認・寛容」は,曖昧さに魅力を感じて関与することに楽しみを見出す「享受」や,さまざまな情報や知識を求めようとする「探究心」と関連することが確認された。また,LGBとの接触経験の多さと「容認・寛容」との間に正の相関が示さたことは,先行研究と一致する結果となった。以上のことから,曖昧さを魅力的に感じ,多様な人物や情報に接しようとする探求心の育成や,同性愛者との接触機会を設けるような教育の実施が,LGBに対するポジティブな態度の向上に繋がると考えられる。今後は本研究で得られた知見を踏まえ,実際の教育現場で実施可能な,教育的効果の高い多様性教育の方法を検討していく必要がある。
近年,LGB(Lesbian,Gay and Bisexual)への社会的関心は高まっている。同性愛に対する態度は,拒否はしないが受容もしない方向に変化しており(和田,2009),LGBの知識や接触経験が多いほどLGBに対して受容的であることも明らかになっている(和田,2008;中島,2012)。しかしながら,偏見や差別は未だなくなっておらず(葛西,2011),LGBに対する理解が不足している現状がある(上野,2008)。その背景には,LGB情報に対する思考態度(曖昧さへの態度/批判的思考態度)が関連していると考えられる。曖昧さとは「十分な手がかりがないために、適切な構造化や分類化ができない状態」と定義され(Budner,1962),偏った態度を形成しやすいことが明らかにされている(西村,2007)。批判的思考とは「自分の推論過程を意識的に吟味する反省的な思考であり,何を信じ,主張し,行動するかの決定に焦点を当てる思考」とされ(Ennis,1987),この心的態度によって差別的なステレオタイプ的思考や行動が固着することが考えられる。
そこで本研究では,LGBに対する態度とLGB情報に対する思考態度との関連性について予備的に検討することを目的とした。
方 法
1. 調査対象者と手続き
東海地方に在学する大学生207名を対象に質問紙調査を実施した。未回答および記入漏れを除いた190名の回答を分析対象とした。本研究は,名古屋学芸大学における研究倫理委員会の審査・承認を受けて実施された(倫理番号:251)。
2. 調査材料
a)同性愛に対する態度尺度(和田,1996):「嫌悪・拒否」「ネガティブイメージ」「容認・寛容」の3因子で構成されている(48項目5件法)。
b)曖昧さへの態度尺度(ATAS;西村,2007):曖昧さの「享受」「不安」「受容」「統制」「排除」の5因子で構成されている(26項目6件法)。
c)批判的思考態度尺度(平山・楠見,2004):「論理的思考への自覚」「探究心」「客観性」「証拠の重視」の4因子で構成されている(本研究では簡易版を使用;18項目5件法)。
d)同性愛に関する知識(中島,2014):同性愛に関する知識量の測定に用いた(23項目3件法)。
e)同性愛に関する接触経験:中島(2014)を参考に,12項目を作成し,同性愛に関する接触経験量の測定に用いた(2件法)。
結 果
各尺度間及びその下位因子との相関係数を算出した結果,同性愛に関する接触経験量は同性愛に対する態度の下位因子である「容認・寛容」との間に有意な正の相関が示された(r=.323,p<.001)。曖昧さへの態度の下位因子である「享受」と批判的思考態度の下位因子である「探究心」は「容認・寛容」との間に有意な正の相関を示した(享受:r=.407,p<.001/探究心:r=.357,p<.001)。
考 察
本研究の結果を概観すると,LGBに対する態度の「容認・寛容」は,曖昧さに魅力を感じて関与することに楽しみを見出す「享受」や,さまざまな情報や知識を求めようとする「探究心」と関連することが確認された。また,LGBとの接触経験の多さと「容認・寛容」との間に正の相関が示さたことは,先行研究と一致する結果となった。以上のことから,曖昧さを魅力的に感じ,多様な人物や情報に接しようとする探求心の育成や,同性愛者との接触機会を設けるような教育の実施が,LGBに対するポジティブな態度の向上に繋がると考えられる。今後は本研究で得られた知見を踏まえ,実際の教育現場で実施可能な,教育的効果の高い多様性教育の方法を検討していく必要がある。