日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

2019年9月15日(日) 16:00 〜 18:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF59] 快・不快感情と学級生活満足感,学級集団効力感との関連

井口武俊1, 河村茂雄2 (1.早稲田大学大学院, 2.早稲田大学)

キーワード:感情、学級満足度、学級集団効力感

問題と目的
 近年では,教育場面における児童・生徒の感情に中心的な意味づけを持たせ,認知と感情に関連させた研究も進められつつある(上淵, 2008)。つまり,教育場面において,認知と感情を関連させた研究が求められているといえる。
 認知と感情に関連させた研究には,気分一致効果があげられる。気分が認知に及ぼす影響において,特定の気分時にその気分と一致する特定の感情価を持つ刺激の認知が促進されることが示された(Bower,Gillingan, & Monteiro,1981)。情報が認知システムと感情システムの相互作用によって処理され,その結果が適応反応となる。同時にそれが環境等に影響を与えたり,自身にフィードバックされることによって行動を変化させたりする(伊藤,1999)。つまり,感情と認知は相互関係にあり,環境へ適応するために感情が影響を与えていると考えられる。
 環境への適応を測定する概念として,学級集団効力感があげられる。溝上・今井・西山・鎌田(2006)は,自学級の潜在性に対して学級児童たちが共有する信念である集団効力感に注目し,学級生活における適応感との関連を示している。
 本研究では,感情が環境への認知に与える影響を検討することとし,学級満足感や学級集団効力感への影響を及ぼす仮説モデルの検証を行うことを目的とする。
方  法
調査協力者 
 公立小学校6校の小学3年生から6年生までの児童1053名(男子495名,女子503名,不明55名;3年生250名,4年生279名,5年生272名,6年生252名)を対象に調査を行った。
調査内容
(a)学級での感情経験 小川・門地・菊谷・鈴木(2000)において開発された一般感情尺度を,福田・手塚・鈴木(2012)が小学生を対象に平易な言葉に変更した子ども用一般感情尺度を用いた。
(b)学級満足度 学級集団のアセスメントツールの一つである学級生活満足度尺度(河村,1998)を用いた。
(c)学級集団効力感
 溝上ら(2006)が作成した尺度を用いた。
手続きおよび論理的配慮
 調査の趣旨および調査票の内容を説明した後,調査協力の許可を得られた学級のみ調査を実施した。調査がテストではないこと,学校の成績とは関係がないこと,個人の調査結果の秘密が守られること,調査結果を研究目的以外で公表しないこと,が表紙に明記された無記名式の調査票を調査協力校のクラス担任に学級活動の時間を活用して実施し回収してもらった。
結果と考察
 仮説モデルの妥当性を検討するために共分散構造分析を行った結果,適合度は,GFI=.999,AGFI=.994,CFI=1.000,RMSEA=,000であり,十分基準をみたす値が得られた。モデル内のパス値についてFigure1に示す通り,快感情から承認感へ有意な正の影響(β=.62,p<.01)を示し,さらに承認感から学級集団効力感へ正の影響(β=.90,p<.01)を示した。また,不快感情から学級集団効力感へ有意な正の影響(β=.23,p<.01)がみられた。
 以上の結果から,快感情を高く認知すると学級集団効力感を高く認知し,さらに承認感を媒介として,より学級集団効力感を高く認知することが示された。
 また,不快感情においても学級集団効力感への正の影響があり,Gullyら(2003)によれば,集団効力感と,集団の業績とはポジティブな関係があることを明らかにしたことから,不快感情を経験するような負荷がかかることも学級集団効力感を高めることにつながると考える。