日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

2019年9月16日(月) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG18] 先延ばし時にとっている行動の探索的検討

課題成績との関連

桑原るり1, 長柄明2, 森田愛子3 (1.広島大学大学院, 2.広島大学大学院, 3.広島大学大学院)

キーワード:先延ばし、行動選択、課題成績

 人は先延ばしをしている時に何をしているのだろうか。本研究では大学生が先延ばし時に選択した行動と課題成績に着目し,行動の特徴を課題成績群ごとに探索的に検討する。第1に,先延ばし時に選択されやすい行動の種類と行動の持続時間を検討する。第2に,個人が設定した締め切りと実際にレポートにとりかかった時間を検討する。
方  法
参加者 大学のレポートを課す授業の受講生25名。4回の質問紙調査を実施し,調査とレポート得点の研究利用に同意を得たデータを集計した。
質問紙 質問紙は,次の3つのセクションから構成されていた。第1に,直前に提出したレポートを作成した際に先延ばしをしたかについて回答を求めた。第2に,行動選択肢の中から先延ばし時にどの行動をどれくらいの時間行っていたのか尋ねた。行動選択肢は,黒田・望月 (2013) を参考に作成した。第3に,直前に提出したレポートにとりかかった日時と,次回提出のレポートにとりかかるつもりの日時の回答を求めた。
手続き 次回提出が6日後のレポートを課す授業内で一斉に調査を実施した。
結果と考察
 レポートの成績によって参加者を成績高群と成績低群に分けた。40点満点のレポートの得点が25 名の中で中間であった3名を除き,成績高群11名 (平均得点36.3点),成績低群11名 (平均得点31.1点) とした。セクション2,3の回答の記述統計値をTable 1,Table 2に示す。
 まず,1回のレポートの締め切りまでに行われた行動の種類の数 (行動バリエーション数) を群ごとに算出した。高群で5.0種類,低群で4.7種類であり,成績の高低で行動バリエーション数に差は見られなかった。選択回数が最も多かったのは,高群・低群共に家事であった。1つの行動の平均持続時間は,高群は2.4時間,低群は1.8時間であり,高群は低群に比べて有意に長く1つの先延ばし行動をしていた。次に,個人的に設定した締め切りとレポートの締め切りとの差を群ごとに算出した。高群は128.4時間,低群は111.1時間であり,高群は低群に比べて有意に早い個人的締め切りを設定していた。さらに,実際にとりかかった時間とレポートの締め切りとの差を群ごとに算出した。高群は98.2時間,低群は77.4時間であり,高群は低群に比べて有意に早くレポートにとりかかっていた。以上より,高群は低群に比べて個人的に設定する締め切りが早いため,課題に取り組んでいない時間を先延ばしと認識しやすく,その結果として行動1つあたりの平均持続時間が長いという結果が得られた可能性が考えられる。