日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

2019年9月16日(月) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG22] 児童における100マス計算の脳血流変化

右脳と左脳の比較

倉持こころ1, 鈴木由美2 (1.成田国際福祉専門学校, 2.聖徳大学)

キーワード:100マス計算、脳血流、児童

問題と目的
 100マス計算は,幅広い年代で行われている計算課題である。主に小学校では,算数科の授業時に採用される他,宿題として課せられる。文部科学省(2015)によると,調査対象の小学校19985校のうち,短時間学習を実施している計算課題は,84%であった。そのうち,授業内で行われている計算課題は,15.5%と報告されている。100マス計算が,右脳及び左脳のどの様な影響を及ぼすのか検証する。本研究は,児童13名小学校1年(1名)・2年(3名)・3年(6名)・4年(2名)・6年(1名)を被験者として実験を実施した。
 本研究の目的は,2つある。1つ目は,平常時に右脳と左脳の脳血流を比較する。2つ目は,100マス計算時(加法)の右脳と左脳の脳血流変化を比較する。以上2つを目的として,本実験を実施する。
方  法
 本実験は,20××年7月~8月に実施した。本研究は,日立ハイテクノロジー社製の携帯型脳血流装置であるHOT-1000を用いて実験被験者を個別に実験を行う。本実験は,通電状態で実験を行い被験者に負担がないようにした。
 実験は,平常時に何もしない状態で脳血流を1分間測定・休み時間を1分30秒・100マス計算時の脳血流を1分間測定した。実験は,A大学の大学院生教室を使用した。本研究の分析は,IBM SPSS Statistics 25を使用する
倫理的配慮
 倫理的配慮においては,参加児童及びその保護者に対して説明を行い,承諾を得て実験を実施した。A大学の倫理委員会で,承諾済みである。
結果と考察
 本研究は,児童における「平常時の右脳と左脳の脳血流」と「100マス計算時の右脳と左脳の脳血流」の比較検討をシングルケースとして行い,検証した。
 目的の第1は,平常時の右脳と左脳の脳血流の比較であった。平常時の脳血流測定について,被験者は,13名中4名が右脳,9名が左脳が賦活する結果となった。中田・木下・中嶋・篠原 (2017)によると右前頭葉は,空間作業記憶,非言語性意味記憶,視空間認知を司っていると述べていた。本研究で,右脳が賦活した要因は,実験を開眼状態で行ったため,視空間認知に影響されたのではないかと考えられた。
 第2の目的は,100マス計算時の右脳と左脳の脳血流の変化を比較することであった。100マス計算時の脳血流測について,被験者は,13名中8名が右脳,5名が左脳が賦活する結果となった。左脳が賦活した5名の被験者は,低学年にみられた。左脳は,言語や計算等で脳血流が賦活すると佐久田博司・廣實崇・伊東由佳・二宮理憙 (2004)で述べられている結果と同様であった。右脳が賦活した8名の被験者は,3年生から6年生であった。右脳が賦活した要因として,100マス計算を空間作業として認識したのではないかと推察することができる。高学年は,100マス計算を空間作業記憶として行ったため低学年の様に左脳が賦活しなかったのではないかと考えられた。
 100マス計算は,学年によって左脳及び右脳に影響が変化する事が確認された。
引用文献
文部科学省 (2015). 公立小・中学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について.平成27年.
中田公俊・木下雅史・中嶋理帆・篠原治道 (2017).右脳前頭葉の機能局在と覚醒下手術 脳神経外科ジャーナル, 26, 657-667.
佐久田博司・廣實崇・伊東由佳・二宮理憙 (2004).動的/静的図形の脳波に及ぼす効果 図学研究38,29-32.