[PG32] デートDVの認知的なプロセスに関する検討
キーワード:デートDV、デートDV予防教育
目 的
デートDVは, どのような認知的なプロセスを経るのであろうか。支配・被支配関係から生じるパートナーコントロール,デートDVに関連するデートDV加害信念の歪み,その行為により自分がどの程度傷つくかを指標とした被害ダメージ,その行為によりパートナーをどの程度傷つけるかを指標とした加害ダメージに着目しながら検討した。
方 法
調査対象者:関東・関西・北陸の4大学の大学生1,050名(男性559名 女性491名 平均年齢18.98 SD=1.50)を対象に実施した。このうち, 付き合い経験がある者は764名(男性420名,女性344名), 付き合い経験のない者は, 286名(男性 139名,女性 147名)だった。指標の評価:デートDV加害経験頻度の評価,パートナーコントロールの評価,デートDV加害信念の歪みの評価,被害ダメージ(自分がその行為を受けた時にどの程度傷つくか)の評価,加害ダメージ(その行為により,パートナーがどの程度傷つくか)の評価を,質問紙により5段階で評定することを求めた。
結果と考察
「パートナーコントロール」は,パートナーコントロールに関する6項目に影響を与える潜在変数として,「デートDV加害信念の歪み」は,デートDV加害信念の歪みに関する5因子に影響を与える潜在変数として,「被害ダメージ」は,被害ダメージに関する16項目に影響を与える潜在変数として,「加害ダメージ」は,加害ダメージに関する16項目に影響を与える潜在変数として,「デートDV」は,デートDVの5因子に基づく加害経験頻度に影響を与える潜在変数として,構造方程式モデリング(SEM)によるパス解析を実施した。性差を含めた付き合いあり群と付き合いなし群のモデルの相違を検討するため,多母集団同時分析を行なった。その結果,適合度指標の値はCFI=.68,RMSEA=.091であり,CFI値は低いものの,モデルの一定の適合度が得られた。
付き合いあり男性群のパス図をFigure 1に示した。また,付き合いあり女性群のパス図をFigure 2に示した。
付き合いあり男性群及び付き合いあり女性群ともに,パートナーコントロールの強さが,デートDV加害信念の歪みの強さを予測し,さらには,デートDV加害信念の歪みの強さが,デートDVを予測していた。
付き合いあり男性群は,デートDVに至る経路として,「パートナーコントロールが強い→デートDV加害信念の歪みが強くなる→デートDV」の経路(経路1)と,「パートナーコントロールが強い→デートDV」の経路(経路2)の2つの経路が示唆された。付き合いあり女性群においても2経路が示唆されたが,男性のそれとは異なっていた。付き合いあり女性群でも男性同様に,経路1はみられたが,経路2のように,パートナーコントロールが直接デートDVを予測する経路はなく,経路3として「パートナーコントロールが強い→デートDV加害信念の歪みが強くなる→被害ダメージが低くなる→デートDV」が示唆され,付き合いあり女性群では,被害ダメージを経由してデートDVに至ることが特徴的であった。女性では男性とは異なり,パートナーとの支配・被支配関係の強さよりも,被害ダメージが低くなることでデートDVにつながる可能性が示唆された。
今後,デートDV加害者教育プログラムを検討する際は,男性女性ともにデートDV加害信念の歪みを取り上げることは共通するが,男性では支配・被支配関係について取り上げること,女性では被害ダメージとデートDVの関係を取り上げることが有効となる可能性が示唆された。
デートDVは, どのような認知的なプロセスを経るのであろうか。支配・被支配関係から生じるパートナーコントロール,デートDVに関連するデートDV加害信念の歪み,その行為により自分がどの程度傷つくかを指標とした被害ダメージ,その行為によりパートナーをどの程度傷つけるかを指標とした加害ダメージに着目しながら検討した。
方 法
調査対象者:関東・関西・北陸の4大学の大学生1,050名(男性559名 女性491名 平均年齢18.98 SD=1.50)を対象に実施した。このうち, 付き合い経験がある者は764名(男性420名,女性344名), 付き合い経験のない者は, 286名(男性 139名,女性 147名)だった。指標の評価:デートDV加害経験頻度の評価,パートナーコントロールの評価,デートDV加害信念の歪みの評価,被害ダメージ(自分がその行為を受けた時にどの程度傷つくか)の評価,加害ダメージ(その行為により,パートナーがどの程度傷つくか)の評価を,質問紙により5段階で評定することを求めた。
結果と考察
「パートナーコントロール」は,パートナーコントロールに関する6項目に影響を与える潜在変数として,「デートDV加害信念の歪み」は,デートDV加害信念の歪みに関する5因子に影響を与える潜在変数として,「被害ダメージ」は,被害ダメージに関する16項目に影響を与える潜在変数として,「加害ダメージ」は,加害ダメージに関する16項目に影響を与える潜在変数として,「デートDV」は,デートDVの5因子に基づく加害経験頻度に影響を与える潜在変数として,構造方程式モデリング(SEM)によるパス解析を実施した。性差を含めた付き合いあり群と付き合いなし群のモデルの相違を検討するため,多母集団同時分析を行なった。その結果,適合度指標の値はCFI=.68,RMSEA=.091であり,CFI値は低いものの,モデルの一定の適合度が得られた。
付き合いあり男性群のパス図をFigure 1に示した。また,付き合いあり女性群のパス図をFigure 2に示した。
付き合いあり男性群及び付き合いあり女性群ともに,パートナーコントロールの強さが,デートDV加害信念の歪みの強さを予測し,さらには,デートDV加害信念の歪みの強さが,デートDVを予測していた。
付き合いあり男性群は,デートDVに至る経路として,「パートナーコントロールが強い→デートDV加害信念の歪みが強くなる→デートDV」の経路(経路1)と,「パートナーコントロールが強い→デートDV」の経路(経路2)の2つの経路が示唆された。付き合いあり女性群においても2経路が示唆されたが,男性のそれとは異なっていた。付き合いあり女性群でも男性同様に,経路1はみられたが,経路2のように,パートナーコントロールが直接デートDVを予測する経路はなく,経路3として「パートナーコントロールが強い→デートDV加害信念の歪みが強くなる→被害ダメージが低くなる→デートDV」が示唆され,付き合いあり女性群では,被害ダメージを経由してデートDVに至ることが特徴的であった。女性では男性とは異なり,パートナーとの支配・被支配関係の強さよりも,被害ダメージが低くなることでデートDVにつながる可能性が示唆された。
今後,デートDV加害者教育プログラムを検討する際は,男性女性ともにデートDV加害信念の歪みを取り上げることは共通するが,男性では支配・被支配関係について取り上げること,女性では被害ダメージとデートDVの関係を取り上げることが有効となる可能性が示唆された。